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189話 「1歳9か月」

前回までのお話

あれ? 何この機能。要らないから消そう→神ちょっと困惑

 僕メンテ。今は1歳と何ヶ月だっけ……? まあ2歳ぐらいになったら大人たちが教えてくれるでしょう。それより今は忙しいのです。話の続きはあとでね!



「あlgはばばんbs。いgすgr、vぇヴぁ。あgくぁhgvlz、。mびおえうrぱ」

「……お兄ちゃん。さっきからメンテ何言ってると思うー?」

「さあ。俺も全然分からないよ」



 アーネとアニーキーに話しかけるメンテ。だが上手に発音出来ない赤ちゃんなので全然伝わっていないのであった。



「zんwq。ぁh9うあじゃgばjfんbsま。うぃ3qjj、rh4q8ばlヴぁslhbzjfれがgrな」

「何って返事したらいいと思うー?」

「適当にえぐえぐ言っておけばいいんじゃない? えぐえぐー」

「そだねー。えぐえぐ。メンテえぐえぐ~」

「きゃきゃー!」



 にっこりと笑顔になるメンテ。すると急にレディーのもとに走り出した。



「ままぁー」

「なあにメンテちゃん?」

「おっぱい!」

「ダメよ。何で今おっぱいが必要なのかしら?」

「あーえ、あにきい」

「「えっ?!」」



 いきなりメンテに指を差されるアーネとアニーキー。いきなり他人のせいにした赤ちゃんに驚く二人である。



「二人が許可したの?」

「はーい!」

「そんなのしてないよ。ねー、お兄ちゃん?」

「もちろん俺だってするわけないよ」

「でもメンテちゃんは二人だって指差してるわよ?」

「えっとね、私はえぐえぐって言っただけだよー」

「まあ何言ってるか分からなかったしね。えぐえぐって返事しただけだよ」



 メンテが何を言っているのか分からないとき、全て”えぐえぐ”と勝手に脳内変換されてしまうのだ。この家ではメンテが”えぐえぐ”言うことは有名である。



「それよそれ。メンテちゃんはえぐえぐ言っているようでちゃんと話掛けているのよ。二人ともまだしゃべれないからって馬鹿にしちゃダメでしょ!」

「そんなつもりはなかったけどお兄ちゃんが言えっていうから……」

「裏切るの早っ?! 確かに俺の提案だけどさ、全部俺のせいにしないでよ!」

「うえええええええん!」←メンテ

「ほら、泣いちゃったじゃないの。二人とも謝りなさい!」

「「メンテごめん」」

「ううう…………。きしし」ニヤリ



 こうして中途半端にしゃべることで何でもお願いを聞いてもらえると味を占めたメンテ。その後使用人たちにも同じようなことをして困らせるのである。メンテが何を言っているか分からないけどしっかりと話を聞くようにと家中に広まったのはこの頃からであった。



 ◆



「……それでアーネ様は魔法の練習を始めたと」

「はい。アニーキーくんもアニーキーくんですよ全くもう。でも上達してるから良いんじゃないですか?」

「喧嘩にならないようにだけ注意してくださいね。では最後にメンテ様のお話をしましょう」



 ここは使用人たちの休憩室。今日はたくさんのメイド達が集まってナンス家の子供達の近況報告をしていた。司会はメイド長ことカフェである。お菓子や飲み物が並んでいることは気にしてはならない。これはれっきとした報告会なのだから!



「まずは誰からいきましょうか」

「はい!」

「ではニーホさん」



 彼女はニーホ・ヤモリン。スキルによって見た目はリザードマンのようなメイドである。しっぽを上手に使って子供たちと遊ぶのが得意である。



「最近のメンテくんはとてもしゃべるようになったと思います。でも発音があれなので何を言っているのかさっぱり分かりません。適当にはいはいと答えると後でとんでもない目に遭った人がいるのではありませんか? ですが、私はメンテくんが何を言っているのか簡単に分かりますよ。メンテくんは何かしたいときは目で追いかけますからね。とてもチョロいです」

「最近よくしゃべるという報告が多いですね」

「あー、私ひどい目に遭いましたー。お腹空いてるのかなと思ってお菓子を一口だけあげたらすごい話しかけてきました。まだ欲しいのかなと思って二口目をあげようとしたら、猫が一列に並んで待機してたので猫にあげて! と言ってたみたいです。結局私の楽しみにしてたデザート全部持ってかれましたよ。とほほ……」

「え?! あなたもお菓子を?」

「あたいはお茶だったよ」

「そういえば皿に盛りつけたらこれ何? って聞いてくるわね」

「なるほど、食べ物全般ってことだね。私たちのとこに狙って来ているのかな?」

「気が付いたら猫がいっぱい集まっていて、全部の猫に同じことしろって言うわよ」

「そうそう、最初メンテくん一人だけなのに」

「あーしはそこのおもちゃを取って来てと言われましたよ。持ってくるのが違ったのか最後は不満な顔になっておっぱいとなりましたが」

「「「「「あるあるー!」」」」」

「はいはい、みなさんお静かに。一斉にしゃべると聞き取れませんので」

「「「「「ざわざわ」」」」」



 ざわつく休憩室。こうしてメンテのイタズラは包み隠さず報告されていくのだ。



「みなさん落ち着きましたか? では話を戻して次の方にいきましょう」

「じゃあいいですか?」

「ではコケシさんどうぞ」



 彼女はコケシ・ドール。見た目や雰囲気も名前の通り日本のこけしにそっくりで、メイド服も和を感じさせるような改造をしているメイドである。人形を使った魔法が得意だ。



「最近人形を見るとひとりふたりと数え始めますね。他にも人形ごとに髪色が違うのですが、それもちゃんと理解しているようで色も判別出来ています。確実に物覚えが良くなってますね。びっくりしました。まあ何を言っているのか分からないときは、人形で話し掛けて気を逸らせて誤魔化してますが。そういうところはとてもチョロいです」

「数だけでなく色も分かるようになったのですね。それは知りませんでした」

「成長してるなあ」

「体は小さいままなのにね」

「そこが可愛いところですよ」

「数といえばアニーキーくんがとても頑張ってましたね」

「そういえばこういうことが……」

「「「「「ざわざわ」」」」」



 と話がズレつつも盛り上がる休憩室。こうして屋敷に噂が広まっていくのである。プライバシー? 赤ちゃんにそんなものはあるはずがない。



「みなさんよくメンテ様を見ているのですね。ミスネさんはどうですか?」

「もちろん分かっておりますよ!」



 彼女はミスネ・ケアレス。おっちょこちょいなメイドである。



「最近のメンテくんは甘えん坊ですね。昔からそうだったといえばそうなんですが、言葉を理解し始めてから抱っこと頻繁にくっついてきますよ。全然人見知りしてないというより自分から積極的に近づいていくスタイルですねえ」

「やっぱりそう思いますよね!私も同じ意見です」



 彼女はモドコ・キスイダ。アニーキーと同い年のメイドである。



「教会でも人見知りしないから子供達の間で有名ですよ。誰でもホイホイついて行くんじゃないかって心配なレベルです」

「そこがいいんですよ! 本当にメンテくんってチョロいんですよね」

「言葉理解し始めたくらいの赤ちゃんですので騙されることがあるかもしれませんね。みなさん町に出掛けたときは注意を払いましょう。さて次は……」

「次は私いいかな~?」

「ではハイハさん」

「は~い」



 彼女はハイハ・ジョイウズ。メンテが成長して出番があまりないのでここで登場させてみたメイドである。



「最近のメンテくんは走る練習をしているわよ~」

「練習ですか?」

「ええ。メンテくんの合図で猫が走るの。びっくりしちゃった」

「「「「「え?」」」」」



 何を言ってるんだこいつと注目を集めるハイハ。



「もう少し詳しく話してもらえませんか?」

「そんなたいした話じゃないけど、毎回メンテくんが指を差すとその場にいる猫が急に走り出すの~。どう? すごいでしょって顔でこっちに話しかけてくるから毎回メンテくんを抱っこしてあげると喜ぶの。抱っこすれば機嫌が良くなるからチョロい子よね~」

「確かに抱っこすれば静かになるのでチョロいわね」

「抱っこしたらそのまま寝ちゃうときあるし本当チョロい赤ちゃんですよ」

「体小さいから持ちやすいのもいいよね。あと未だに歌うと眠くなるところがチョロいと奥様が仰っていました」

「本当にそういうところがチョロ可愛いです」

「……みなさん、メンテ様がいかにチョロいのかは分かりました。で・す・が、今はチョロいチョロい言えば勝ちという大喜利大会ではありませんよ? 確かにそういうところは私も感じますが、まだ1歳9か月の小さな子供なのです。チョロいは心の中で思いましょう」



 メンテのみんなに愛想よくアピールして可愛がって貰おうの効果は絶大であった。だがメイド達からとてもチョロい赤ちゃんと思われていることを本人は知らないのだ。この後いかにチョロいか大いに盛り上がったという。



「では最後に。奥様から私たちにあてに依頼が来ております」

「依頼? お仕事の話ですか」

「そうです。依頼内容はメンテ様はそろそろ2歳になります。そこで2歳になる前におっぱいを卒業させてほしいということです。男たちは役立たずなのでメイド達で何とかして協力して欲しいとのこと」

「「「「「……」」」」」



 急に静まり返る休憩室。誰もが下を向き重苦しい雰囲気に包まれる。



「みなさん聞こえていますか? もう一度言いますね。奥様の依頼は……」

「「「「「……」」」」」



 先程までのワイワイとした騒がしさが何処へやら。もはや言葉を発する者はいない。誰もがお菓子を食べる手を止め、ただただカフェの言葉を聞いていた。そんな中、一人のメイドが勇気を持って質問をした。



「みなさん、急にどうしたのですか?」

「……少しお時間よろしいでしょうか?」

「どうしましたかミミギさん?」



 ミミギ・ウーサ。白いうさぎの耳と丸いしっぽが特徴的で、最近出番があまりないのでここで登場させてみたメイドである。



「その依頼、私達には少し厳しいのではないでしょうか」

「では無理だと?」

「いえいえ、無理ではありませんが非常~に難しいです。これは昨日のことですが……」



 ◇



「きゃきゃー!」

「メンテくん、走ると危ないわよ」



 お外を散歩したいというメンテのために子供部屋から玄関へ向かうミミギ。その道中、ある人物に出会う。



「あー、くっくー!」

「お、おう。メンテの坊ちゃんか。……もう怒ってないよな?」

「はーい! ちぬがよい(死ぬがよい)」

「「えっ?!」」←クックとミミギ


 ドドドドドドッ!!


「うおおおお?! なんだあの数?!」

『にゃあああ!!』



 突然家中の猫がクックに集まり襲い掛かる。さらにメンテも猫の群れに突撃し、殴って蹴りまくり始めた。



「ひえええええええ。坊ちゃんごめんよおおおお。誰でもいいから助けてくれー!!!」

『にゃああああああああああ!!』

「きえええええええええええええええええ!!!」

「メンテくんストッープ! 死んじゃう。クックさん死んじゃうから!!」

「きいいいええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」



 ◇



「……ということがあり、クックさんがまた怪我をしました。猫達よりもメンテくんの方が激しく暴れ回っていましたね。あのときのメンテくん顔はとんでもなく怖かったわねえ。最終的にクックさんの『俺はおっぱい卒業しなくてもいいと応援するから』という言葉でメンテくんの怒りが収まったんですよ。あの男本当にふざけてると思うわ」

「あの男はまた余計なことをしでかしましたか」

「はい。だから今卒業させようとするとより悪化するのではないかと。その後の散歩中もクック以外の人にも襲い掛かっていましたし」

「そうですか。それは困りましたね……」



 メンテのおっぱいに対する執着はとんでもないものである。メイド達も分かっているので話題として触れたくないのだ。



「ちょっといいか? 今の話に関係することだと思うが」

「ロコロコさんも何か知っているのですか?」



 彼女の名前はロコロコ・リグンド。マッチョなドワーフで男っぽい性格のメイドである。



「さっき物覚えがよくなったという報告があったが、まさにその通りだと思うぜ。昨日はクックだけではなく、他の男たちも運ばれてきたんだ。メンテくんに何かしたのかと聞いたら何もしてないけど皆お風呂事件の関係者だったと判明したぞ」

「メンテ様の記憶力がすごいということでしょうか?」

「良くも悪くもすごい良いと思う」

「なるほど。本当に困りましたね……」



 成長したメンテに喜びたくても喜べないメイド達。おっぱい関連になると恐ろしいとは知っていたのだが、ここまでひどいと思っていなかったという。



「私もいいでしょうか?」

「フウセンさんも何か知っているのですか」

「ええと、多分ですが」



 彼女はフウセン・バルーン。いつも浮いているメイドである。



「昨日庭の水やりをしていたとき、メンテくんが誰かに襲い掛かる姿を偶然見つけて上から眺めていたのですが……」

「え? フウセンさんあのとき見ていたの??」←ミミギ

「ま、まあ」

「それなら手伝って欲しかったわ。本当に大変だったのよ」

「何が起きているのか分からなかったのと、どうせメンテくんが暴れるのはおっぱいのことかなと思って……」

「「「「「……(その気持ち分かる~)」」」」」



 関わりたくないのは皆一緒。メンテが暴れているときは傍観するのが得策である。



「それで何があったのですか?」

「猫の動きを観察してました。猫がバッーって広がって誰かを見つけたらメンテくんの元に戻っていくんです。その戻った猫が道案内をして、お風呂事件の関係者を見つけたら襲っていました。あの猫の動きは狩りそのものではないかと。ミミギさんの話を聞いていたら猫達におっぱいを馬鹿にした人たちを探し回らせていたんだろうなって」

「猫がですか。メンテ様のスキルの影響と考えればありえるかもしれませんね」

「はい。猫の扱いが上手すぎて怖いです。地上に降りられません」



 実際その通りである。更にメンテは視覚や嗅覚もフル活用し、魔法やスキルを使われたらタクシーを呼び出す荒業を使うのだ。おっぱいのためにそこまでやるのかと言いたい。



「マーさんは何か猫について分かりませんか?」

「なぜこっちに?!」



 急にカフェに話を振られた彼女の名前はマー・ミズノ。今まで名前こそ出ていないが魚っぽいメイドである。水中で力を発揮するメイドなのでマーメイドと呼ばれている。



「特に意味はありませんがあなたと目が合ったので」

「そ、そうですか(うわあ、みんなカフェさんと目を合わさないようにし始めた?!)」

「何か意見があるのでしょう? 何でもいいのでお願いします」

「そうですね……。最近アニーキーくんのところにいっぱい猫が泊まっているじゃないですか? それって今の話に関係してるのかなあって思いまして」

「何か思い当たることが?」

「私の勘違いかもしれませんが猫が集まっている理由っておっぱいなんじゃないかなと……」

「「「「「えっ?!」」」」」



 皆の視線がマーに集まった。こういうときだけ私に顔を向けるなよと言いたくなる気持ちを抑えつつも話を続ける。



「今この屋敷に猫が尋常じゃなく集まっているじゃないですか。その理由ってメンテくんがおっぱいを馬鹿にした人達をボコボコにするために呼んだんじゃないかなって。数日掛けて襲撃計画でも立てたとかって私の妄想なんですが。……あれ? みんなどうしたんですか?」

「「「「「……」」」」」



 ピースがガッチリとはまったかのような説得力。ここ最近のメンテの動きはそうだったのだろうと誰もが思える意見である。実際は猫ギフトを調べるために猫を集めていたのだが、本人のいないところで都合よく勘違いされたという。



「なるほど。マーさんの意見は合っている可能性が高そうですね。では猫が集まっていないときにおっぱいを卒業させるべきかもしれません。誰か説得出来るとよいのですが……」

「ひえっ!?」

「そ、それはダメです!」

「反対反対反対!!」

「カフェさん、それも危険なのでやめた方がいいかと」

「? みなさん急にどうしたのですか??」



 ざわめくメイド達。反対意見が続出する。



「この前ポロっと卒業しないかなと言ってしまったんです。そうしたらメンテくんがこっちを睨みつけていました。目の奥が真っ暗で怖かったので肩こりがって誤魔化したらいつものメンテくんに戻りました。絶対説得なんて無理です!!」

「私は掃除中におっぱい卒業するのはいつになるのかなあ? って口に出したら真後ろにメンテくんがいたんです。いつの間に?! ってびっくりしていたら私の足におもちゃを当てられました。そのおもちゃはアーネちゃんのお台所セットの包丁でしたよ?! 本物だったら殺されていましたよ?!」

「メンテくんが昼寝中、みんなで休憩していたときにおっぱい卒業の話題になったんです。気付いたら寝ていたはずのメンテくんが真後ろに立っていてみんな叫んじゃいましたよ。いつもドタバタと歩くあのメンテくんがですよ?! 音も気配もなく気付いたらこっちにいたんです。そのあとずっと無言で怖かったです」

「カフェさんも卒業の話をしているときのメンテくんの目をよーく見てくださいよ! そこらへんにいる猫と同じような目で睨んで来ますよ?! あんなリアル猫の目初めて見ましたよ?!」

「メンテくんって実はあまりわがままを言わないんですよ? わがままを言うのはおっぱいの事だけですし、少しぐらいそういうところがあってもいいじゃないですかね」

「「「「「ざわざわ」」」」」



 いかにメンテくんのおっぱい卒業が難しいかをカフェに力説していくメイド達。そんな中、あるメイドがこんなことを言い出した。



「ふふ~ん。みんなメンテくんのことを分かっていませんね。さっきまでチョロいチョロいって言ってたのにそんなことで怖がっちゃいけませんよ」

「ミ、ミスネ?! あなた何を言っているの?!」

「そうだよ、協力してよ!」

「この依頼は危険なのよ?!」

「みんな何を言ってるんですか。メンテくんにおっぱいを卒業しようって言えばいいだけですよ。最初は怒るかもしれませんがそれだけですってばあ」

「おお、ミスネが強気だ」

「とんでもない裏切り者だよ」

「……あれ? 全部ミスネに押し付ければ解決なような」

「おお! それだ!!」

「それいいね!」

「はいはい、みなさん落ち着いてください。ではミスネさんに奥様の依頼をたくしましょうか」

「「「「「賛成ー!」」」」」



 こうしてミスネがメンテのおっぱいを卒業させることになったという。こうして今回の報告会は終わるかに思えた……が。



「ふふ~ん。みんなが出来ないことが出来るメイドって偉いですよねえ。ガツーンと卒業しろって言ってやりますよ」

「さすがミスネ」

「ミスネ姉さんファイト!」

「頑張れよー」

「応援してるわ!」

「みなさんいいですか? こうやって言えばいいんですよ。メンテくんはもうすぐ2歳だからおっぱいを卒ぎょ…………………きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ?!!!!!!」

「「「「「――?!」」」」」



 ミスネの視線の先、それは休憩室のドアである。そのドアが少~しだけ開いており、そこから小さな子供がこちらをこっそりと覗いていたという。ミスネの叫びに皆がその正体に気付いてしまう。



「メンテくん、ここにいたのね。やっと見つけたわよ~。ここでいったい何をしているの?」

「……」

「ん? 部屋に誰かいるの? あら、いっぱい集まってるわね。もしかして休憩中だった? 今メンテくんとかくれんぼしていたのよ。邪魔しちゃったかしら?」



 ドアを開けて入って来たのはキッサ。カフェの母親でナンス家の相談役である。今日はメンテと一緒に遊んでおり、癒しの時間を楽しんでいた。その間にこの子供達の報告会が開かれていたのである。


 この時間をメンテに教えたことはなく、やっているということすら知らないはずである。それなのになぜか覗き見している1歳9か月の男の子がいたという。



「……」←メンテ

「「「「「……」」」」」←メイド達

「あら、これどういう状況なの? メンテくんも急に静かになったけど何かあったのかしら? おーいメンテくん? メンテくーん?? 返事がないわね。誰でもいいから説明してくれない? …………な、何で誰も返事をしてくれないの? 本当に何があったっていうの?!」←キッサ



 そのあとしばらくメンテおよびメイド達の無言の時間が続いたという。一切感情を出さないメンテにどこから話を聞いていたのかとメイド達は恐れ、ミスネは皆に泣きつきメイド全員で協力しようという話になったとか。



 メンテ1歳9か月。無駄な事にとんでもない力を発揮する男の子である。



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