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175話 「猫の縄張り その4」

「ぱちょこんふっかちゅいあしんぴん。えぐえぐ(パソコン復活、いや新品に。ぼちぼち続けていきます)」

「ママー、メンテが何か言ってるよ」

「フフッ。何かを伝えたいんでしょうね」

「そろそろ商店街だね。見てシロ先生、あの建物が僕の家のお店だよ!」

「へえ……。なんだか他のと比べるとやたら大きくないかしら?」

「にゃ~?」

「あら可愛い」



 僕のお家のお店が見えてきました。お店の周りには色々な職人さんが住んでいるらしいです。ここは商店街というよりも職人街ってところでしょう。


 ちなみに僕のお店の話ですが、元々は何もない町の外れに作ったそうですよ。それから町が発展し、気づいたら僕のお店が町の中心になっていたと父に聞きました。つまりお店が大きいのではなく周りが小さいだけ。大きさは普通なのです。勘違いしないでね?



「昼は人通りが多いけど夜は静かだね」

「そうね、夜のこの道は歩きやすいと思うの。人目を気にする必要ないからね。でもここから少し歩くと明るくて騒がしい場所に出るわよ。行ってみる?」

「あっちの方には飲食店があるからね。猫探知……。う~ん、動いている人の気配を感じるなあ。さっきみたいに人が来たら面倒だし近づくのは止めとくよ」

「あら、珍しく妥当な判断ね」



 というわけであまり人通りがない道を選んで探索再開です!



「お、シロ先生とメンテじゃん」

「町にいるなんて珍しいにゃ」

「珍しいっていうか初めて見たよね」

「そうだにゃ~」



 しばらく町の中心街あたりをうろつくと、教会の猫達に出会いましたよ。みんな僕のお家に遊びに来たことがある知り合いの猫です。



「みんなで何してるの?」

「「「散歩~」」」

「僕もシロ先生と一緒に街を散歩してたんだ。一緒だね!」

「「「「「にゃわにゃわ」」」」」



 そして始まる猫トーク。人間も猫も雑談するのは変わりません。



「僕みんな教会の中だけで暮らしているのかと思ってたよ」

「いやいや、俺らだって普通に町の探索ぐらいしてるにゃ。むしろずっと教会にいる猫なんて珍しくにゃい?」

「まあ教会はただの寝床って思ってる猫も多いよね」

「そうだにゃ。でも人間が食い物くれるし教会っていい場所だと思うにゃあ」

「へえ。そうなんだ」



 猫って結構外出しているみたいですよ。みなさん知ってました? 僕は今知りました。



「散歩してたんでしょ? ならメンテ達は他の猫に合わなかったのにゃ? いっぱいいたでしょ?」

「他の猫?」

「ずっと町を見てきたけどあなたたちが最初よ。そういえば今日は誰にもあってないの」

「珍しいね」「今の時期はみんな町にいるんだけどにゃあ」「だよね」

「そう言われればちょっと不思議な話よね。うまく避けてきたのかしら?」

「え? ちょっと待って、ストーップ! みんな何の話をしてるの?」



 猫達およびシロ先生が急に僕の知らないことを語りだしましたよ。それもっと詳しく教えてと頼む僕です。



「あーそっか。メンテは知らにゃいよね。今は”縄張り”を決める時期なんだよ」

「……縄張り?」

「そうそう。ここは私の場所だ! お前はここに入ってくるにゃって争うんだ。喧嘩して自分の場所を決めるんだにゃ。相手を排除しようとみんな躍起立ってるにゃ」

「この場所を誰が使うかって主張しあうんだにゃ」

「最近新しい道とか人間の家が増えてきたでしょ? その場所は誰の縄張りにするかって喧嘩になるわけなの。それが私たち猫の縄張り争いよ。特に人間から食べ物を貰える場所を巡った争いは多いわね」

「何それ~? そんな話初めて聞いたよ」



 どうやら人の知らないところで猫の縄張り争いがあるようです。僕って基本的に人間だから縄張りとか気にしたことありませんでしたよ。よ~く考えるとこの原因を作ったのは父やタクシーのような気もしますがね。うん、忘れよう。



「俺ら教会に住んでいる猫はさ、比較的に穏便な性格の猫が多いんだにゃ。縄張りのことで争うことが嫌いというかあまり興味ないというかね。そういう猫達は自然と教会に集まってるね。でもコノマチに住んでいる猫達は縄張りに対して血気盛んというかね……」

「町に住んでいる猫はやたらと攻撃的で自己主張が激しいのにゃ!」

「そうそう。すごくうざいの。あいつら意識高すぎなのよ!」

「まあそれは一部の猫だけで町の猫全員というわけじゃないけどさ、毎回相手するの面倒だよね」

「やたらと絡んでくるから腹立つの!」

「メンテも気を付けた方がいいよ」

「あいつらクソ猫よ」

「「「「にゃわにゃわ」」」」



 猫達はみんなで愚痴を言い始めました。この町では新しい道や店ができるたびに猫達が住処を争っていたようです。話を聞く限り猫は3つのグループに分かれているそうですよ。


 1つ目は、教会の猫。あまり争いを好まないタイプの猫です。よく僕と遊んでいるのはこの猫達ですね。


 2つ目は、町の猫。野性味あふれる猫だそうです。人間が嫌いな猫も多く、ほかの猫達にも攻撃的だそうです。教会の猫とは仲が悪いみたいですな。


 3つ目は、人間と暮らす猫。つまり人間がペットと思っている猫です。彼らの縄張りは家の中なので、他の猫の争いに興味なんてないそうです。性格は様々らしいです。


 ふむふむ、どうやらこの3つの派閥がこの町にはあるみたい。僕は人間だからどれにも属さない猫という感じですかね。なるほど、案外猫も大変なんだね。猫の社会にも人間と似たような問題ってあるんだなあ。



「町でそんなことが起きてたんだ。みんな大変だね」

「私たちもなるべく町の猫の縄張りには近づかないようにしてるわよ。しつこい猫も多いからね」

「まあ自分から積極的に縄張りに入るなんて普通しないよね。僕だってそうするよ」

「「「「えっ?!」」」」

「ん? 僕何かしたっけ?」

「いや。メンテは家の中に突入してたでしょ。しかも勝手に入口を作って外に連れ出したりね」

「あ、もしかしてあれダメだったの?」

「いや、結果的には問題なかったけど最初ヒヤッとはしたにゃ」

「まず玄関とかドアを作れる時点で普通じゃないにゃ……」

「メンテはメンテだにゃ」

「「「「にゃわにゃわ」」」」



 僕に全く自覚がなかったけど、使用人の猫達に会いに行ったことは縄張り荒らしに近い行為だったみたいです。今度から気を付けましょう。



「なるほどねえ。じゃあ、あれがそうなの?」

「「「「え?」」」」



 僕がしっぽを伸ばして場所を教えると、2匹の見知らぬ猫達が争っていました。みんなでこっそりと近づきます。なんだか大きな声で喧嘩してますね。




「ちょっとあんた! ここは私の場所よ!! あっちに行きなさい!!!」

「はあ? 俺様が先に見つけたんだよ。てめえがあっちに行けよ!!!」

「「しゃあああああああ!!!!」

「うるさい」←メンテ



 ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!



「「にゃああああああああああ?!!!!」」




 喧嘩の声が非常にうるさかったので、僕はしっぽを伸ばして2匹を叩きつけて気絶させます。もちろん事前に猫結界で防音をしてあるので安全です。



「「「「……」」」」←うわあ……、どうするのこれ? って表情をする教会の猫達

「いやあ~、今日はうるさい虫が多いね」

「む、虫? ……はっ?! まさか今日ずっと言ってた虫ってそういうことだったの?? どおりで町で誰にも出会わなかったわけなのよ?!」

「あはは、うるさいとみんな虫になるんだよ」

「猫は虫じゃないわよ?!」



 メンテとシロ先生の会話を聞いてなんとなく事情を察する教会の猫達。メンテが知らず知らずのうちに縄張りを荒らしまくっており、町の猫達は一方的に蹴散らされたんだなあと。



「えっと~、縄張りのことなんだけど……。メンテにはあまり関係なさそうだね」

「争いにもならなそうだにゃ……」

「むしろ何も残らなくにゃい?」

「最近本当に魔王感が溢れてきたにゃ」

「このことは教会の仲間には伝えるけど、町の猫には放置でよくないかしら? メンテに喧嘩を売る方が悪いの。町の猫は勝手に懲りればいいのよ」

「「「異議にゃし!」」」



 緊急猫会議でメンテの行動は放置することに決まったという。



「というかメンテはよく争ってるのを見つけたね。僕ら近づくまで全然気付かなかったよ」

「まあ見えたっていうか聞こえたんだよね。猫って人間より耳良いからね! それぐらい普通だよ」

「え? 誰か聞こえた?」

「いや」

「聞こえなかった」

「何で聞こえたのかしらね……」



 このように猫の争いを止めた僕は、この町のおすすめとか何か僕の知らない情報はある? やらを聞いていきました。まあ結果として食べ物の話ばっかりでしたがね。シロ先生が人間からの貰い方にはコツがあるのよとレクチャーしてましたよ。あそこの店の人間が狙い目なんだとかさ。



 さて、だいたい町は見尽くしました。そろそろギルドに向かうとしますか。



 ◆



「「「ボスたすけてー!」」」

「ん? 今度はお前らか。今日はみんなしてなんの日だあ?」



 とある路地裏にて。1匹の大きな猫の周りにたくさんの猫達が集まっていた。



「ボス聞いてよ。白い猫と黒い子猫が私の縄張りに侵入してきたのよ! しかも知らないうちに落とし穴なんか掘って私を落として逃げたの! きぃいいいい。許せないわ!!!」

「あんたも白黒親子にやられたのか?! こっちも子猫を見てたらいきなりぶたれたんだにゃ」

「俺もその親子に文句言いに行こうとしたら、黒い子猫がピカって光って気がづいたら毛が焦げてたんだ。あれは目を離した隙を付いた親の白猫が攻撃してきたんだにゃ!!」

「「「「「にゃわにゃわ」」」」」


「ちょっとお前ら落ち着付け。同時に話されても分からねえって。それにさっきから子猫子猫ってよ……。お前らその子猫にやられたっていうのか? 子猫にそんな力があるわけねえだろうが。どうせ親猫に隙を付かれたんだろ? 親猫は気が立っているのが多いからなあ」


「だ・か・ら! あの白い親が子供を囮にして攻撃して来たたのよ!」

「俺も油断して怪我したよ。あの親なんて卑劣な猫なんだにゃ……」

「ボス、あの白い猫をどうにかしてよ! あいつらきっとよそ者なんだにゃ!!」

「コノマチのこと何も知らないからっていい気にしやがって」

「あの親子調子に乗ってるのよ!」

「もうやっちゃてよボス」

「あいつら許せねえよ」

「「「「「ボスー!」」」」」



「……なるほどなあ。コノマチに来たよその猫が調子に乗って縄張りを荒らしまくっている。今も暴れてるんだなあ? はぁ、しょうがねえ。よっこいにゃっと。この俺がコノマチのルールを直々に教えてやるとするか」




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