172話 「猫の縄張り その1」
前回までのお話
魔法使うの楽しいね!
僕メンテ。今日はママとお散歩です。
「きゃきゃー!」
「メンテちゃん、走ると危ないわよ~」
「はーい!」
僕の家では使用人がいっぱい働いています。使用人達に出会ったらママとお散歩するんだと自慢していきます。ママ大好きのアピールをしつつ、愛想を振りまくり皆の好感度アップも忘れませんよ。
しばらく歩いて玄関に到着。僕はママに靴を履かせてもらいます。我が家は土足厳禁なので家の中ではスリッパを履くのがルールですよ。
「お靴履けたわね。ママもお靴を履くから待っててね」
「はぁーい!」ダダダダダッ
「あ、こら。どこに行くの?!」
元気よく返事をした僕はすぐに走りだし、玄関の近くにいたお家の警備員に突撃していきます。
「はーい!」
「メンテ様どうかなさいましたか?」
「まんまとたんぽすーの(ママと散歩するの)」
「ママとお散歩ですか? 楽しんで来てください」
「はーい! ……こえは?」ガサゴソ
「これですか? ってちょっとダメですよ?! 危ないですから」
何それ? と興味津々に警備員の持っていた武器を奪おうとする僕です。
「これは剣です」
「けん~?」
「この屋敷に現れた不審者と戦うための武器ですね。怪我しちゃうので触ってはいけませんよ」
「これは~?」
「これですか? あーもっちゃダメです?! これは不審者が来たら危険を知らせる魔道具です」
「いま~?」
「残念ながら今は使いませんよ。これも触っちゃダメですよ」
「はーい」
「フフッ、なんだかごめんなさいね。初めて見た物に興味湧いちゃうのよ」
「いえ、気にしていませんので。あー?! それも触っちゃダメです?! ひっぱてもダメですよメンテ様ー?!!」
「こえは? これは?? これはー!!!!」
今日も皆に愛されるメンテであった。
◆
その夜。
「猫みねうち!!!!」
バタバタ。
「ふぅ、片付いた。じゃ行こっかシロ先生」
「なんて恐ろしい子なの……」
こんばんは。僕、猫のメンテ。こっそり近づいて僕のお家の玄関にいる警備員達を気絶させます。
「みんな不用心すぎるね。武器も道具も全部見せてくれたからチョロかったよ」
「私その様子見てたけど絶対みんな騙されるわよ?!」←たまたま今日の散歩の様子を見ていた
最近魔法の話が多かったと思いませんか? 実はただ遊んでいただけではありません。なんと警備員の武器や魔法をチェックしていたのですよ!
だいたい分かっていたことなのですが、お家の警備員はタクシーの部下達なのです。最近みんなの顔はほとんど覚えましたよ。甘えると特技を見せて遊んでくれますしね。みんな僕のじいじ並みに秘密をペラペラ教えてくれました。
さらに夜中は警備員の動きを入念に調べました。猫探知を使ってどう動いたり何曜日は誰なのかとかね。他には外に出る支障を減らすために猫結界の実験もしました。人払いでだいたいどうにかなると判明しましたよ。ついでにエレベーターを作れたりと魔法も向上したしね。
おかげで僕は外に遊びに行く準備万端なのです!
「下調べって大事だね。計画通りに正面突破出来そうだよ」
「とんでもない子猫ね……」
大人達は子供だとか赤ちゃんだからと油断しっぱなしなので楽勝でした。情報を制する者が世界を制すのでちゅよ、ばぶ~。
「でもこのままだとまずいかな? ずっと倒れられても困るから魔法を使って起こすよ。猫魔法・目覚めたら猫がここを通っても何も違和感がなくなる~。ひゅうひゅうひゅ~う!」
警備員はすぐ目を覚ましました。ですが僕達を見ても何もしてきません。成功ですな。
「こわっ?! なんだかあの人間の目がおかしいわよ?!!」
「ついでにこれも。猫魔法・僕達の情報の記憶が都合よくなくな~る」
ピラピラピラ~。
「どういう魔法よ?! 猫は? 猫の要素はどこにいったの?!」
「記憶力が悪いせいかすぐ忘れる猫の力を使ったんだよ。これで絶対バレないね」
「この子猫想像力豊かすぎる?!」
猫魔法で記憶も操作します。今の僕は猫なのでこれぐらいはね。シロ先生はよく分からないという顔をしていますが出来るものは出来ちゃうのです。猫だからさ。
「猫探知! ……周囲も問題なし。じゃあ町に行くよー!」
「……はいはい。行けばいいんでしょ」
そして、2匹で歩きながら町に向かいます。魔法を使って身を隠す必要もないので楽ですねえ。
「……あ?! シロ先生ちょっとだけ待って!」
「どうしたの?」
「ひとつ忘れてたよ。ギフト!」
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【 】
年齢 1歳
性別 男
称号 おっぱいの神様
所持スキル
・暴走
・猫魔法
・エッグ
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「うん、問題なし!」
「どう考えても問題しかないと思うわよ?」
「え?」
「どうしましょう、本気で言ってるわね……。それともツッコミ待ち?」
もし鑑定出来るスキルを持っている人がいたら僕の正体がバレちゃいます。念のため僕のギフトに何かおかしなところはないか確認しました。ご覧の通り全く問題ないですね!
別に問題点なんてないと思うけど、シロ先生には何か違和感があるようですねえ。もしかして何か変わったところがあるのかな? いやいや、新しいスキルは増えてないし前からこんなものでしたよね?
「問題ないからシロ先生早く行こーよ」
「だからその称号おかしいでしょうが!!! 何で気付かないのよ?!」
「え?」
「あなたいつから神様になったの?!」
「あ、称号か?! 言われてみれば確かに。神様なんて知られたら大変なことになるよね。ありがとう、全然気付かなかったよ」
おお、言われてみればそうだね。僕はただの人間であり猫です。この称号を使うのは今ではありませんね。シロ先生ありがとうー!
「よし、編集っと」
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【 】
年齢 1歳
性別 男
称号 おっぱいの魔神
所持スキル
・暴走
・猫魔法
・エッグ
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「出来た~!」
「いや、神様を変えればいいってわけじゃないからね?! それに最初の”お”からしていらないでしょ?!」
「そうかな? じゃあもう1回編集するよ」
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【 】
年齢 1歳
性別 男
称号 っぱい神
所持スキル
・暴走
・猫魔法
・エッグ
===========
「う~ん、だからそういう意味じゃないからね?! いつまでおっぱいを引っ張るのよ?!! 今のメンテはただの猫なんでしょ? 遊んでないでもっと普通の称号にした方がいいんじゃないの?」
「ごめんごめん。普通? 普通ねえ……。こうかな?」
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【 】
年齢 1歳
性別 男
称号 猫神
所持スキル
・暴走
・猫魔法
・エッグ
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「やったの~、ついにおっぱいが消えたわ!! でも神が邪魔ね……。もうこの子にどう言えばいいのかしら??」
「普通って言われてもなあ」
普通? う~ん、普通の称号って何でしょうか。今思うと他人、いや他の猫の称号なんて見たことないしなあ。
「……あ、そうだ! ちょっとじっとしててね。猫魔法・猫ギフト!」
「え? 何この光??」
ぶわーんとシロ先生は神々しい光に包まれます。すると何かが出て来ます。
===
猫
===
「ん? シロ先生には何もないんだね。これが普通なのかな?」
「私?」
「シロ先生にギフト使ってみたけど名前すらないよ。どういうこと?」
「ちょちょちょちょ、待って待って。ギフト? 私そんな力持ってないわよ??」
「僕は猫の神様だからね。今猫のギフトをあげたよ」
「…………は?」
シロ先生はコイツ何言ってるの? みたいな顔で僕を見て来ます。
「あれ? 見えないの?」
「何も見えてないわよ? 小さい子って想像も妄想力もすごいわね」
「あー、そっか。使い方分からないよね。実は僕も出来そうと思ってやってみただけなんだ。僕には見えてるんだけど何で見えないのかな? ちょっと待ってね」
どうやらシロ先生には自分のギフトが見えていないご様子。よ~く考えればなんで僕は他の猫のギフトが見えているんだろうね? やっぱり僕が与えた立場だから? まあよく分からないけど見てもらうのが1番早いと思います。
よし、剥がそう!
ベリッ、ベリリッリリリリリッリ!! バギバギィイイイ、グニャアアアーーーン!!!
「にゃあああ?!!!!!!! 空間が?! 空間が歪んでるの?!!!!!!」
「はい、これシロ先生の」
===
猫
===
マンガだったら絵の一部をビリっと破くギャグみたいな感じで剥がしました。テープを剥がすのが好きな猫もいるからね。だからギフトぐらい簡単に剥がせます。剥がしたギフトをシロ先生にあげます。
「ええっ? 何これ??」
「ね? 何もないでしょ?」
「ね? とか言われても困るの。というかメンテのやつと違いすぎない?」
「そうだね。ん~、詳しくは帰ってから調べようかなあ。じゃあこれ持ってて」
「いや持つって……にゃ?!」
シロ先生が自分のギフトを持つと体に吸い込まれていきました。
「だ、大丈夫なのよねこれ?」
「元の場所に戻った気がするから大丈夫だと思うよ」
「確かに空間の歪みが消えてるの……」
この猫ギフトおよびシロ先生のことは後々調べましょう。今は町に行きたいので。というわけで今見たシロ先生の情報を元に編集してみます。
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【 】
年齢 なし
性別 なし
称号 なし
所持スキル
なし
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「よし、これでいいよね?」
「へえ。称号以外も選べたのね。いいんじゃないかしら?」
「表示をオフにしただけで消えてはないけどね。これでシロ先生みたいなギフトに見えるはず。じゃあ行こっか」
「はいはい、行きましょ」




