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170話 「魔法で遊びたいの その1」

前回までのお話

……………………我、おっぱい、求む。

「今日は暑いわね。メンテちゃんは暑くないの? ママすごく暑いんだけど。……メンテちゃん? ママの話聞いてるかしら?」

「……」

「う~ん、この子全然聞いてないわね」



 今日もレディーにべったりなメンテ。そこへアーネが走ってきた。



「ママ―!」

「どうしたのアーネ?」

「えへへー、ママ遊ぼー!」

「ああもう引っ張らないで。今メンテちゃんのおっぱいなのよ。邪魔したらこの子怒るわよ。あと暑いから離れて」

「やだー。まだおっぱい終わらないの?」

「本当に早く終わってくれないかしらね。メンテちゃん聞いている? もしもーし?」

「……」

「メンテまだー?」

「……」

「もー! メンテ早くしてよー!」



 全然話を聞いていないメンテにアーネが実力行使をし始めた。が……。



「きゃあああ?! ママべっちゃべちゃー?!!」

「それメンテちゃんの汗よ。こんなに汗だくなのにおっぱいを止めようとしないのよ。ママも暑くて汗が止まらないわ。早くあっちに行ってくれないかしら? 嫌になるわ」

「うげえー、汚いなあ。……えい!」



 アーネは魔法で水の球を作り出し、その中に手を入れて洗い始めた。



「えへへ~。しょーどく!」

「あら涼しそうね。ほらメンテちゃんの大好きな魔法よ」

「……」

「ほら見てメンテちゃん」グィイイイイイ

「……」メキメキメキ

「ぐぐっ、その力はどこから出してるのかしら?!」



 メンテの顔をアーネに向けさせ、おっぱいを中断させたいレディー。だがメンテを動かそうとしても微動だにしない。その小さな体のどこにそんな力があるのか、本当に謎である。


 二人の攻防が続く中、アニーキ―もやってきた。



「ねえ、誰か俺の杖知らない?」

「知らないわよ。自分の部屋を掃除したら出て来るんじゃないかしら?」

「掃除しなくても場所ぐらい分かるよ。ところで3人で何してるの?」←3人に近づいてくる

「アニーキ―まで?! なんでみんなここに集まって来るの?! ママの周りだけすごい密じゃない! お部屋広いんだからわざわざ一か所に集まらなくてもいいのよ。密接しすぎて暑いだけでしょ。丁度良いからアニーキ―は窓を開けて来て。この部屋密閉されてるから換気が必要になったわ」

「分かっ……あ、アーネ魔法上手になったね」

「えへへ、でしょー? あ、そこメンテの汗あるから危ないよー」

「え? うわあ、ここめっちゃ濡れてるよ……。それに母さんもひどいや」

「そんなこといいからアニーキ―は早く窓開けて来なさい! もう、なんでママの側に密集するの?!」



 なぜか部屋の一部に集結する子供達。そういう気分なのだろうか。



「メンテちゃんはまだ終わらないの? どれだけママを待たせるつもり? 返事をしないならママあっちに行くわよ?」

「ちゅぱ、ちゅぱぱぱぱぱっ!」

「……やっぱり返事をしなくていいわよメンテちゃん。よだれが飛ぶから静かにね」

「……ちゅぱ」

「はあ、密ね。よく考えるとここには3つも密があるじゃない。密閉、密集、密接……。これじゃあ3密よ、さんみつ! みんなママから少し離れなさい。ディスタンスは大事よ」

「はーい」←アーネ

「分かりました」←アニーキ―

「ちゅばばばばばばばばばばばばばばばば!」

「だからメンテちゃん、飛沫が飛ぶからしゃべらないの。いい加減にしないとソーシャルディスタンスをとるわよ?」

「……ちゅぱ」



 今日もレディーの子育てという戦いは続く。



 ◆



 僕メンテ。1歳ちょいの猫に変身出来ちゃうごく普通の赤ちゃんです。今日も夜中にこっそり猫に変身して子供部屋に来ましたよ。



「いたいた。準備出来たシロ先生?」

「……にゃ?」←メンテが来るまで寝てた

「ゴー!」

「ちょ?! ちょと待って。さっきから何? さっぱり話が見えないんだけど……」

「準備と言えばもちろん外だよ。猫ドアー!」



 今日もシロ先生をしっぽでグルグル巻きにして外まで連れて行きます。猫ドアを閉じて家の中に入る道も遮断します。猫ドアは1回使えばすぐに消えちゃうのだ。これで退路を断ちました。これでよしっと!



「ふう~」

「……いったい何をする気なの??」

「――!」



 ……あ、特に何も考えてなかったです。


 目的? そんなもの何もないのですよ。ただ外に出たい気分だっただけ。完全に勢いだけで動いちゃいましたね。このままだと寝てるところを理由もなく無理に起こして拉致したヤバい子猫。コイツ頭おかしくね? ってなる案件だよね。もし僕が同じことされたら怒っちゃうよ、あはははは。




 よ~し、テキトーな事でも言って誤魔化そう!




「じゃあまずは……どうしようかな~?」

「え、もしかして何も考えずに私を連れて来たの……?」

「え? 違う違う。いっぱいあって何からしようか迷ってるんだよ。きょ、今日はこの前のあれをしようかなって! あれだよ、あれあれ」

「あれ? ……あー、あの欠陥魔法?」

「そそ、それそれ! さすがシロ先生! いや~、理解が早くて助かるよ。そう、あれのリベンジだよ!」

「リベンジねえ……」



 何も考えていなかった僕はシロ先生に話を合わせます。ちゃんと目的はあるんだよっていう風にね。


 シロ先生の言うあれって何かって? それは多分”猫エレベーター”のことだと思います。前回外に出たとき僕は”猫エレベーター”が上手に使えなかったので、シロ先生に欠陥魔法と呼ばれるようになりました。今の所猫魔法で欠陥とか言われるのはこれだけですし。


 おお、これ誤魔化すにはいい理由になるんじゃない? よし、今日は魔法を使って遊びたいという設定にしよう! それに失敗したままで終わらせるのは後味悪いし丁度良い機会じゃないですかね?


 というわけで僕とシロ先生の2匹をサイコロみたいな猫バリアで囲みます。その猫バリアの下から別のバリアを作って押し上げる”猫エレベーター”の魔法を使おうと思ったらシロ先生が話しかけてきました。



「別に無理にこの魔法を使わなくても良くないかしら? 町なんて歩いてすぐでしょ」

「え? いやいや、それはダメだよ。だって今日はシロ先生が主役だから」

「……はい?」



 シロ先生はコイツ何を言ってるの? みたいな顔をしていますね。では僕が今思いついたことを説明しましょう。



「この前みたいに高いところから落ちそうになったら大変でしょ? せっかく空中散歩出来るようになったんだから安全に楽しみたいよね」

「まあそうね」

「僕は魔法が使えるからトラブルは対処出来るけどさ、普通の猫は落ちたら命が危ないよね?」

「自分が普通の猫じゃないって自覚あったのね……」

「ご、ごほごほ。僕って人間でも猫でもあるから多少違うだけだよ。ちょっとだけね」



 急な不意打ち、いや痛恨の一撃を食らいましたが話を続けましょう。



「そ、それで普通の猫でも安全に空中散歩が出来る方法を探したいんだよね! そのためにはシロ先生に手伝って貰いたいんだ。僕が魔法でシロ先生をサポートするよ。だから今日はシロ先生がいないと始まらないんだよ。今後の猫達の新たな移動手段にもなると思うしさ。やって損はないでしょ?」

「う~ん、一理あるといえばそうかもしれないの」

「それに僕も新しい魔法を何個か試してみたいんだ」

「まだ新魔法があるの?! それって安全なのかしら……」



 しぶしぶと言った感じですが納得して貰えましたよ。他人というか他猫に魔法を使う実験という理由でね。一時はどうなるかと思いましたが上手に誤魔化せましたね。



 というわけで今日は新魔法の実験で遊びましょう!



「大丈夫。なんたって僕が使うのは猫魔法だからね! シロ先生も猫だから上手にいくはずさ」

「でもいいの? 町に行くのがメンテの目的じゃなかったかしら? ほら、ギルドがどうこう言ってたじゃないの」

「ギルド……? そ、そんなもん後回しだよ!!」

「えっ?」



 あー、そういえば僕そんなこと言ってたね。誤魔化そうとしていたせいかすっかり忘れてましたよ。


 もちろん今すぐ行きたい気持ちはあるのですが、今この流れを変えると考えなしのクソ猫と思われてしまいます。今後もずっと可愛がって貰うためにも遊びたいという嘘を貫き通しましょう! 僕可愛い子猫にゃの。今日はいっぱい遊んでにゃ~ん。



 よし、こういうときはあの名前を出すのが一番です。



「実はタクシーがね、何かしら得意な魔法があると良いよって言ってたんだ。で、僕って今の所猫魔法しか使えないでしょ? だから猫魔法をパワーアップさせることにしたんだよ! これで冒険者もボコボコに出来るようになるかもね」

「よく分からないけど、魔法を練習したいのね? …………で、本音は?」

「僕シロ先生と魔法で遊びたいの」

「……へ、へえ(さっきから難しい言葉を使う割に動機は年相応ね?!)」

「一緒に遊びたいの」

「あ、遊びたいの?(今日は遊びたい気分なのかしら?)」

「うん。ダメ?」←お目目キラキラの上目遣い

「いや、別にいいのよ(ぐっ、そんな目で見たら断りづらいじゃないの)」

「やったー!」



 ピュアなメンテは嘘を付かない。そこが赤ちゃんらしくて可愛いと思うシロ先生である。それとタクシーの影響か、なら仕方がないと諦めたという。メンテの思惑通りの結果となった。



 かくしてメンテは子猫の可愛さパワーで強引に誤魔化しきり、他の猫に使う新魔法の実験を始めた。



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