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169話 「ぱい・ストーリー2」

前回までのお話

新しく出来た訓練施設で遊んだよ!

 ここは子供部屋。



「まんまー」ぎゅ

「フフッ、メンテちゃんは本当に甘えん坊ね」

「んぐぅ?」



 クリクリとした可愛いお目目でレディーを見つめるメンテ。穢れのない純粋な瞳で僕ママ大~好きなの! アピールをしていた。今日も元気であざといベイビーである。



「こっちに来てもいいわよ」

「きゃきゃ!」



 そう言われたメンテは、レディーの膝に座った。膝の上がメンテの定位置なのだ。体をレディーに預けたメンテは、とても安らかな表情になっていく。そして、落ち着いたのか完全に静かになった。



「……」

「相変わらずメンテちゃんはくっつくのが好きなのね。……えい、えい」

「きゃきゃー!」



 指でメンテの体をツンツンするレディー。この落ち着いている間、メンテは何をされても可愛い反応を示すのだ。天然なのか演技なのか定かではないが、とても甘えん坊な赤ちゃんである。



「はっはっは。メンテは兄弟の中で一番の甘えん坊じゃないか?」

「それは間違いないわね。聞いた話だと、常に誰かが近くにいないとうるさくなるらしいわよ? だっこだっこーってみんなに言うんですって」

「ほお、そうなのか。メンテはくっつくのが好きなのかい?」

「……」←ダンディを上目遣いで見つめるメンテ

「はっはっは……からのひょいっとな。こちょこちょこちょ」

「きゃきゃきゃあああああああ!」←オーバーリアクションで返事をするメンテ

「はっはっは、メンテはみんなにくっつくのが好きなんだな!」



 今日も両親に甘えまくるメンテ。絶好調である。



「ところでママ、ちょっと相談があるんだがいいかな?」

「今? メンテちゃんがいても大丈夫な話かしら?」

「はっはっは、もちろん大丈夫さ。そんな難しい話ではないよ。最近宣伝の効果のせいかいろいろな国から注文が殺到しててね。材料がだいたい500万だったから10億ぐらいで売ろう思うんだが……」

「10億って……。ちょ、ちょっと待って?! 今500万って言わなかった?」

「――ん!? い、いや。そんなこと言ってないよ。はっはっは! け、桁を間違えちゃったかなあ~。すまんすまん。確か50万だったような……」

「ちょっと待っててね、メンテちゃん。ママとパパは急な用事が出来ちゃったの」

「えぐう……。う、うえええん! まんまあああ!!」



 この話は子供の前でしない方がいいわねとレディーはメンテを膝から下ろした。くっつくのを止めた途端に号泣する、それがメンテの大好きだから行かないでアピールなのだ。本当は話を聞きたいから泣いているだけの赤ちゃんである。



「もう、メンテちゃん泣いちゃったじゃない。どうしてくれるの!」

「それなら話はあとでいいんじゃないかな?」

「逃げるつもり?! 500万ってどこから出てきたのか説明して!」

「はっはっは、困ったなあ……。おーい、タクシー! 助けてくれー!!」

「……はぁ、またバカが何かやったようね。カフェ、それとあなた達もついて行きなさい。逃げようとするだろうからね。その間私がメンテくんの面倒を見てるから」



 と会話に混じったのはキッサ。彼女はタクシーの妻であり、ナンス家の相談役なのだ。キッサはメイド達に行動を指示していった。今日はたまたま癒しを求めて子供部屋に来ていたのである。こんな問題が発生するなんて思いもしなかったという。



「ありがとうキッサさん。じゃあメンテちゃんを頼むわね!」

「いいのよ全然。もうこういう光景は見慣れちゃったし。……そのかわりお金の話はしっかり吐かせなさい。私もすごく気になってるから」

「フフッ、任せて!」



 とレディーとダンディおよびメイド達は子供部屋から出て行った。部屋に残ったのは、メンテとキッサ、それと本を読んでいたアニーキ―の3人だけである。珍しく猫は1匹もいないのであった。



「あら、残ったのはアニーキ―くんだけ? アーネちゃんがいないのは珍しいわねえ」

「アーネならメンテが泣きだしてからすぐ外に出てったよ。うるさいから自分の部屋で勉強するのーって何人かメイドさんを連れて行ったよ」

「こういうときのアーネちゃんはちゃっかりしてるのよね……」

「そうだよね」

「うええええん! まんまああああー!!」

「はいはい、キッサおばちゃんがいますよー。ほらほら、おばちゃん抱っこしちゃうからね」

「うわああん! ……ううううぅ」



 キッサに抱っこされ、少しだけ落ち着くメンテ。両親だけではなく、誰が抱っこをしてもこうなるのだ。そこが可愛いと使用人達には評判なところである。



「うぅ……」

「はあ~。少し落ち着いたかな? おばちゃんがいるから安心してね。はあ~、やっぱり小さな赤ちゃんには癒されるねえ~。メンテくんは軽いから抱っこしやすいわ。それにお肌がツルツルよ!」

「ねえキッサさん、赤ちゃんって抱っこされると落ち着くものなの?」

「どうしたの急に?」

「いや、メンテって抱っこされると静かになるからさ。赤ちゃんってみんなそうなのかなって」

「そうだねえ……。昔のアニーキ―くんの場合は、自分から抱っこを求めないときに抱っこされると嫌がってたわよ。アーネちゃんは人見知りしてたからそもそも抱っこするのに苦労したわね」

「へえ、そうなんだ。俺あんまり覚えてないや」

「そりゃアニーキ―くんは小さかったからしょうがないわよ。そうだね……。抱っこで落ち着くのは、赤ちゃんというかメンテくんの好みね。まあ抱っこしていたほうがうるさくないからみんな抱っこしちゃうわよねえ」

「へー。やっぱりメンテって甘えん坊なんだ」

「あなた達兄弟の中では1番なのは間違いないわよ。だって昔のアニーキ―くんったら……」



 と赤ちゃんトークで盛り上がる二人。このとき、なんだかんだでメンテは落ち着いたと思われていた。……が、あの時間がやってきてしまう。



「……ぱあい。おっぱい」

「「――?!」」



 悲しみのあまり始まる、急なメンテのおっぱいタイムが……。



 ◆



「おっぱい、ぱああああああい!」

「うわっ、また始まったよ」

「嫌なときに始まっちゃったわね……」

「まんまああああああああああああああああああああああ!」



 母親がいない、しかも戻るのに時間が掛かるという最悪のタイミングで悪魔メンテの登場である。この状態だとキッサでも手を焼くのだ。



「どうしようキッサさん?」

「二人で何とかするしかないわね。レディーちゃんが帰ってくるまで持ちこたえなきゃね」

「わかった! よし、じゃあ俺が抱っこ変わろうか? ね? どうメンテ? お兄ちゃんだよ? 嬉しいでしょ」

「ぱあああああああい!」

「ほら、お兄ちゃんが抱っこしてくれるみたいよ! 良かったわね~、メンテくん」

「うわあああああああああん!」

「おりゃ。ほらどうメンテ? お兄ちゃんだよ。それそれ!」←無理矢理抱っこするアニーキ―

「まんまああああああああああああああ!」

「……全然ダメね」

「じゃあ魔法見せて気を引くから抱っこ変わってキッサさん!」

「分かったわ」



 と二人で協力し合うキッサとアニーキ―。だがメンテの機嫌は悪くなる一方であった。



「うええええええええええええええええええええええええええん!」

「なんでこんなに泣いてるんだろう??」

「う~ん、これは私の予想なんだけど……」

「え?! 何か知ってるの!」

「ちょ、ちょっと待ちなさい。今教えるからね。その間メンテくんから目を離しちゃダメよ!」

「あ、うん。わかった」



 アニーキ―の知識欲が暴走しないように抑え込もうとするキッサ。知識暴走したアニーキーは非常にしつこいのだ。面倒な暴走兄弟である。



「うえええええええん!」

「ねえ、キッサさんまだー?」

「ちゃんと相手しないと教えないからね! ほら、抱っこして落ち着かせて!」

「分かった! ……で、まだ~?」



 このように知識欲を抑えるには、他の事に気を引かせるのが効果的なのである。しばらくしてからキッサは語り始めた。



「多分だけど、メンテくんはおっぱいで心を安定させているのね」

「どういうこと?」

「赤ちゃんって繊細だからね。精神が不安定な状況に耐えられずに泣き始めるものよ。メンテくんの場合は、何かしらがあったときに精神を安定させる方法を見つけてしまった。それがおっぱいだったという訳よ」

「え、そんなことあったっけ??」

「あくまで私の憶測よ。きっと何か辛いことがあったんだろうねえ……。だからおっぱいを吸うことがメンテくんには精神安定剤になるんだわ!」


 ※33話「ミルク事件」


「俺はただ単におっぱい好きなんじゃって思うけどね。アーネもそうだって言ってたし」

「あはっははは。そんなわけないでしょ~。メンテくんはただのおっぱい依存症なのよ! うちの使用人達はみんなそう思ってるわよ」

「うへえ。それじゃあ俺達何も出来ないじゃん……」

「まあそうだねえ……」



 使用人達からこう思われているメンテ。実際は子供達の意見が大正解なのであるが。



「ままああああああああああああああ!」

「全然泣き止まないや。キッサさんどうしよう??」

「結構時間が経ったはず。もうちょっとでレディーちゃんは帰って来るわよ。ほら、お得意の魔法見せて!」

「え、でも全然効果なかったよ?」

「諦めちゃダメよ! アニーキ―くんの魔法はすごいんだから」

「えへへ? そうかな~」



 必死でメンテをあやす二人である。



「うえええええん……………」

「え?」「あら?」

「……」

「静かになったよ。泣いてもママが来ないって分かったのかな?」

「どうかねえ」



 急に沈黙するメンテ。そして、これが新たな事件を起こす。



「……………………我、おっぱい、求む。おっぱい、絶望、夢、希望、おっぱい。ない……、世界、滅亡。混沌のおっぱい。全てぶっこわちゅ」

「「――――――――?!」」



 突然何かを語り始めるメンテ。アニーキ―とキッサはとても驚いた。



「うわあああああああああああああああ?! め、めめめ、メンテがしゃべった?! しかもめっちゃ物騒なんだけど???」

「こ、これは……?!」

「どどどど、どうしようキッサさん?! おっぱい吸えないなら世界を壊すって言い始めたよ?! ヤバい、おっぱい欲しすぎてメンテが壊れちゃったよ?!」

「まあまあ、少し落ち着きなさいアニーキ―くん。これはじゃべっているというより誰かの真似してるのね。だいたい赤ちゃんがこんな難しいこと知ってるわけないでしょうが」

「そ、そう言われればそうだね……」

「もうちょっと聞いてみましょう。いったいどこの誰がこんな言葉を教え込んだのかしら……」



「おっぱい……。まんまー。ぱーい、ない、ぶっころちゅ。破壊、壊滅、地獄、この世潰す、粉々、おっぱい、殺戮、神、滅する。おっぱーい、魔王もぶっころちゅ………………」



「うわあ。メンテめっちゃ怒ってるんだけど」

「全部赤ちゃんに教える言葉じゃないわね……」

「ばくはちゅ、おっぱい。ばくちゃちゅ……おっぱい。ぎうど、ぶっこわちゅ。いいこと。…………………………………………ほほっ」

「どうしよう、俺誰が犯人分っちゃったよ」

「……奇遇ねえ、私もよ」

「ぎうど。おもちゃ。貴族、おっぱい。お金おっぱい……………………はっはっは」

「うわあ……」

「……」←頭を抱えるキッサ



 真似をしているのか、本当にしゃべっているのか。それは謎であるが犯人の特徴をしっかり再現するメンテ。これで僕は怒られないと実は非常に冷静だったりする赤ちゃんなのだ。


 彼がここまで飛躍的に成長した原因はもちろん”暴走”のスキルである。暴走によりただの赤ちゃんと思えないような思考になり、急激な変化をもたらす。その結果、天才を超えた常識外れな行動をするんのだ。



「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!」

「うわあああああ、今度はすごく暴れ始めたよ?!」

「これはどうしようもないわね。もう泣き止むまで無理矢理にでも抱っこしましょう。いっそ疲れさせて眠らせるしか方法はないわ」

「きええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」バシバシバシ

「痛い痛い、メンテ痛いよ。キッサさん助けてー!」

「ほらほらおばちゃんが……がはっ!」

「うわああああああああああ!? キッサさーーーーーーーん」



 メンテが暴れてキッサのあごを足で蹴りぬいた。その結果、ありえないぐらい無駄にクリティカルヒットしてキッサが一発で気絶した。おっぱいが欲しすぎるあまり彼は無敵の状態になるのだ!



「きえええええええ、きええええええええええええええええええええええええ! おぱああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああい!」バシバシバシ

「わああああああああ?!」



 アニーキーを叩きまくるメンテ。あまりの激しさで手に負えないのだ。そして、メンテは叫んだ。



「にゃああああああああああああああああああああああああああー!」

「「「「「「「「「「にゃ?」」」」」」」」」



 すると廊下に変化が現れた。さっきまで猫の気配がなかったのに、急に凄まじい数の足音が聞こえて来たのだ。その音はこの子供部屋に向かって近づいていく。


 一番の疑問はなぜか開いたままになっている子供部屋のドア。犯人は逃げ出したアーネである。そのせいでメンテの叫び声が遠くまで響き渡ったのだろう。猫の群れが参戦することになった。とんでもない置き土産である。



 ドドドドドッ!



「うわっ?! 猫がいっぱいこっちに来た……って何で俺を殴るの痛い痛い?!」

「ぱいぱいぱいぱああああああああああああああああああああああああああああああい!」

「うわあああああああああああああああああ?! 誰か助けてー!!!!!」



 こうしてレディーが戻ってきておっぱいタイムが始まるまで大暴れするメンテと猫達であった。




「メンテちゃんがしゃべった? フフッ、ろくに言葉も覚えてないのにそんなことあるわけないじゃないの。もうアニーキ―ったら冗談が上手になったのね~」

「いや、本当だって。それにキッサさんもいたから。一緒に聞いてたよね?!」

「えっと……そうだったかしら? ちょっと記憶が曖昧で覚えてないわねえ……」

「ええ、嘘でしょ?! そんな都合よくそこだけ記憶が消えちゃうの?! こうなったらメンテ、何でもいいからしゃべったよ。簡単なのでいいからさ。……何かしゃべってよ! お願いだから。このままだと俺嘘付いてるみたいじゃん!」

「うぐぅ~?」

「あ、かわいい……じゃなくて言葉だってば! 本当はしゃべれるんでしょ? 1回だけでもいいからさ。お願いだよ!」

「んぐぅ?」



 なおメンテがしゃべったということは誰にも信用されなかったという。ぱいストーリー。それはメンテがおっぱいを求めて暴走するだけでなく、アニーキ―が災難に巻き込まれる可愛い物語。



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