166話 「たかいたか~い その2」
「ほほっ。みなさん、今日はメンテ様と楽しくお遊びしましょう!」
「「「「「「「イエッサー」」」」」」」」
「では目隠しをしなさい」
「「「「「「「えっ?!」」」」」」」」
「目隠しをしたくない方は魔法で目を潰しますぞ。再生するかは分かりませんが……おや、もう終わりましたか」
「「「「「「「イ、イエッサー!」」」」」」」」
すごい勢いで目を隠す部下達。なぜ目を隠す必要があるのかは分らないが、何かが始まるのだけは分かったという。
「あぐじー、えぐえっぐ?」
「ほほっ。メンテ様はこれが何をしているのか気になりますかな?」
「はーい!」
「これは、たかいたか~いジャンプの準備です」
「たかい?!」
「そうです。私がメンテ様を抱っこしながらたかいたか~いジャンプをします。私がたかいたかいをしたら妻に怒られてしまいましたからな。今日は安全のためにこの抱っこ紐を使います。私と一緒にジャンプするついでに部下を踏み潰しますぞ!」
「きゃきゃあああああ!」
「「「「「「「(……えっ?)」」」」」」」」
タクシーがメンテを10メートルぐらいたかいたか~いしたところ、落ちたら危ないでしょこのバカが! とキッサに怒られたのだ。それなら私も一緒にジャンプすれば安心ですぞ! とたかいたか~いジャンプが生まれたのである。
「これはただの遊びだけではなく、部下達の訓練も兼ねています。何も見えない状態で敵の攻撃を避ける訓練というわけですぞ。相手はいかなる手段で来るか分かりませんからな。対応力がポイントになるわけです」
「くんえん?」
「そうです。部下達はスキルや魔法を使って私達に踏み潰されないように避けるのですな。私とメンテ様はその様子を見て楽しみましょう!」
「きゃきゃああああああ!」
「「「「「「「(踏み潰す必要はなくない?!)」」」」」」」」
まあタクシーが変な事を言うのは良くあること。これも新しい訓練だと思うことで落ち着く部下達であった。
「ほほっ、ルールは分かりましたか?」
「あの……、装備は使っても良いのでしょうか?」
「ほほっ、そうですなあ……。自分を守ることだけに使うのなら許可しましょう。ただし、こちらにはメンテ様がいるので反撃は禁止です。魔法も同じように身を守るものだけなら許可します。これでしっかり避けられるはずですぞ」
「イエッサー!」
「ほほっ、今日は一段と気合が入っていますな。では始めますか。まずはバラバラに散らばってください。もちろん目隠しはしたままです。ではメンテ様はこちらへ。抱っこ紐を装着し終えたらスタートしますぞ」
「「「「「「「イエッサー!」」」」」」」」
絶対クビにならないぞー! と部下達は燃えていたという。
◆
『てすてす……。こちらツーシン。聞こえてる?』
『おう』『おっけーよ』『良好』
『みんな魔道具は大丈夫みたいね。全員の配置場所は覚えたかしら?』
『『『『『『『ざわざわ』』』』』』』
『そう、大丈夫ね。最後にダンディ様の言葉は即報告すること。みんなで協力して今回の危機を乗り越えましょう』
『『『『『『『おー!』』』』』』』
通信用の魔道具で連絡を取り合う部下達。これで目隠ししていてもある程度場所や状況は分かるのだ。今回の訓練はみんなガチモードである。しらばくして、メンテとタクシーの準備が完了した。抱っこ紐をしただけだが。
「メンテ様、高い高いジャンプの準備が出来ましたぞ!」
「はあい!」
抱っこ紐を装着し終えた二人。今回はメンテの背中とタクシーのお腹が当たるような使い方をしている。そのためメンテは部下の逃げ惑う様子が自由に見れるのであった。人々が逃げ惑う様子で喜ぶおかしな赤ちゃんは、きっとメンテぐらいであろう。
「あくじー、あえ!」指プイ
「おお、あそこにジャンプしたいのですな!」
「はあい!」←目キラキラ
「では始めますぞ。高い高い~」
「きゃきゃきゃ」
ぴょ~ん。ひゅ~~~~~~う、ドカーーーーーーーーン!!!!
『ふぁっ?!!!!!!』
『いやいや、爆発してねえか!?』
『そんな話聞いてねえぞ?!』
『絶対におかしいよね?!』
『報告、一番メンテ様から近いコインが爆は……』
ドカーーーーーーーーン!!!!
『ど、どうやら近い人から順番に狙っているようです』
『早く体勢を整えろー!』
『こちらツーシン、メンテ様とタクシーさんの会話の内容が判明。”あくじーばんばーん、ほほっ。私の爆発魔法を見たいのですな? では何らかの装備を使っている部下を見つけたら爆発魔法を使って踏み潰しますぞ、きゃきゃきゃあああー!”……です』
『どういうことだよ?!』
『メンテ様が喜ぶから魔法を使ってんじゃねえか?』
『これで喜ぶってどんな赤ちゃんなんだ……』
『いや、タクシーさんが魔法を見せつけたいだけだって』
『それよりいきなり武器防具を封じてきやがった』
『もう不測の事態すぎるっしょ』
『よし、みんな早く防具は捨てろー! 魔法かスキルで対処しなきゃ死ぬぞ!!』
『『『『『『『了解』』』』』』』』
「ん? 何か始まったみたいだな」
「ダンディ様、遅れて申し訳ございません。冷たいお飲み物持って参りました」
「ご苦労。おお、しっかり氷も入っているじゃないか。今とても冷たい水が欲しい気分だったんだよ」
『ダ、ダンディ様が水や氷を使った魔法をご所望だああああー!』
『私の出番ね!』『よし任せろー!!』
「ウォータークッション!」
「氷壁!」
このように部下達は協力し、ダンディが何かをしゃべるたびに新たな身を守る魔法が飛び出すのであった!
「ふう生き返る~。……ところであれは何をしているんだ?」
「は、はい。あれはこの訓練所を使ってメンテ様と楽しく遊んでいるそうです」←ダンディにめっちゃ緊張してる部下
「そうか。だがなぜみんなは目隠しをしているんだい?」
「えっと、これはタッチされたら負けのゲームだそうです。目隠ししながらの鬼ごっこに似ていますね。タクシーさんとメンテ様が鬼役で、たかいたかいをしながら追いかけるそうです。普通にやったらメンテ様は喜ばないだろうと逃げる側は目隠しをすることになりました。そのかわり魔法や防具で回避しても良いそうです」
「ふむ、なるほど。目隠しをすることで遊びだけでなく訓練にもなるということか。はっはっは、タクシーらしい考えだ。それにこれなら魔法をたくさん見れるからメンテも喜びそうだな」
「そ、そうですね(すげえええ、タクシー様の行動を完全に理解なさってるよ。これがごナンス家の当主様なのか……)」
ダンディの側にいた部下達は、彼をめっちゃ尊敬したという。
◆
部下達が奮起する一方、メンテとタクシーの二人は……。
「ほほっ。メンテ様、下の様子が見えますか? だんだん部下の動きがよくなってきましたな。状況に慣れてきたようですぞ」
「はあい!」
「そろそろ魔法を使って身を守る頃合いでしょう。次はどこに行きましょうか?」
「きゃあああー! あえー!」指プイ
「ほほっ、ではたかいたかーい」
「きゃきゃきゃ!」
メンテを抱えながら上空に高~く飛ぶタクシー。ジャンプと言うよりボッ、ボッ、ボッとまるでホバリングしているようであった。
「このように爆発魔法を使えば、ゆっくりと空を浮かぶことも可能なのですぞ!」
「きゃー!」
「魔力操作は難しいものですが、慣れればこのように精密な動きも出来るのです。足の裏からぽんぽんと調整しながら魔力を変換するのがコツですな」
「きゃああああ!」
「ウォータークッション!」
「氷壁!」
「ほほっ、さっそく魔法が使われましたぞ。しかもメンテ様が指を差したところですな」
「きゃああああああああああ!」
「どうやら私の部下達は動きを読み始めたようですぞ。おや? 武器防具も捨てましたか。さっきの会話が聞こえていたのかもしれません。ほほっ、これぐらい出来て当然ですな。そうでなければ私の任務は務まりません」
「あぐじいいい!」バシバシ
「ほほっ、早く踏み潰してほしいのですね」
「はあーい! ばんばーん!」
「即決とはさすがメンテ様ですぞ! ……ですが、魔法があると踏みつけるのは難しくなるものなのです。魔法の対処法を知っていれば別ですがな」
「あいしょほー?」
「そうです、対処法ですぞ。知っているか知らないかでは戦闘で差が出ますのでな。この世界にたくさんの魔法があります。ですが、大抵何かしら弱点があるものなのです。何もかもが完璧な魔法はありませんからな」
「えぐぅ?! あぐじーあぐじー!」バシバシ
まじ? めっちゃ知りたいと暴れまくるメンテである。
「ほほっ、とても興味があるようですな。では魔法について少しお教しえしましょう。まずは、あの水を使った魔法をご覧ください。メンテ様はあの魔法の弱点が分かりますか?」
「えぐぅ~?」←可愛い顔で首をかしげるメンテ
「ほほっ。そうでした。メンテ様にはまだ難しい質問ですな。まずは魔法を理解するところから始めましょうか。あれは水魔法。水を生み出したり操ることが出来る便利な魔法です。使い方によっては応用力に優れた素晴らしい魔法になるのです」
「はあーい! あーえ。あーえびゅーびゅー!」
「おお、そうです! アーネ様が得意な魔法ですな。さすがメンテ様。しっかり見たことは理解しているのですね。ほほっ、これはメンテ様の将来が楽しみですぞー! それでは水魔法の対処法を実践してみましょう。やることはただひとつです。とても簡単ですぞ。それは――」
「……えぐり(ゴクリ)」
「それは――――――――――――――――爆殺です」
ドカーーーーーーーーン!!!!




