164話 「猫エレベーター」
前回までのお話
メンテのぱいストーリーがありました。
「あ、いたいた。メンテこれ見てー!」
「ちゅぱちゅぱ……」
「…………………。やっぱりお兄ちゃん見て見てー!」
おっぱいタイム中のメンテを見たアーネは、空気を読んで相手を変えた。
「ねーってば!」
「聞こえてるから服をひっぱらないでね。でもメンテじゃなくてもいいの? まあ今近づきたくない気持ちはわかるけど」
「だって今のメンテめんどーだもん」
「……そっか。で、俺に何を見せてくれるの?」
「えへへ、ちょっと待って。……いいよ、じゃあ見ててねー!」
アーネは腕を前に出し、手のひらを広げた。すると……。
「出て、水のたまー!」ポン!
ポンという音と共に水の球が浮かんだのであった。
「どう? このままの状態を保てるようになったのー!」
「おお、すごいじゃん!」
「ちゅぱぱぱっ?!」
急に魔法を使ったアーネを見て驚くメンテである。なぜなら前までのアーネは、魔法で水を出しても下に垂れ流していた。まるで蛇口から出る水のような状態であったため、部屋の中は毎回水浸しになっていたという。だが、今は水が空中で浮かんでいる状態なのだ。アーネは魔法を上手に制御するという進歩遂げたのである。そのコントロールの難しさをメンテは知っていたため大興奮だ。
「――ちゅぱぱぱぱぱっ!」
「痛いわメンテちゃん。そんなに見たいならあっちで見てもいいのよ。ついでにそのまま卒業するとママ嬉しいわね」
「……」
くるん! しゅっ。きゅっきゅ~。すぽん。
「ちゅぱちゅぱ」じぃーーーーーーーー。
「……なんて執念なのかしら。どっちも出来るベストポジションを探し出すなんて」
くるっとメンテは体を回転させ、おっぱいタイムを楽しみながらアーネを見られる体勢になった。アクロバティックな吸い方をする赤ちゃんである。同じ子供でもアニーキ―やアーネでは重くて真似出来ない、赤ちゃんの身軽さを活かした無駄に器用な動きである。
どっちか選べと聞かれたらどっちとも選ぶのがこのメンテなのだ!
「うわあ?! アーネ見てあれ。メンテが目を見開いてこっちを見てるよ……。というかあの体勢おかしいよ。いったいどうなってるのさ??」
「でもすごいねー!」
「いや、すごいけどあの目怖いよ。じゃあ母さんの前でやろう。見せないとメンテ怒りだしそうだし……」
「いいよー!」
こうして魔法とおっぱいの両方を楽しむメンテであった。今日もメンテとレディーの戦いは周囲を巻き込みながら続く。
◆
深夜。
「えぐぐぐぐー!(猫魂ー!)」
今日も元気よく猫に変身します。猫睡眠で家族を眠らせた後、近くで寝ていたシロ先生を起こしますよ。
「ねえねえ、シロ先生起きて」
「ふにゃ~。……どうしたの?」
「準備出来たー?」
「……準備? 準備って何の話なの?」
「外に行く話だよ。今日は天気も良いしギルドに行くよ!」
「ああ、そのことね。でも今日は眠いから止めて……」
「はい、猫ドアー!」ぶわーん
「あ、ちょっと?!」
しっぽでシロ先生をぐるぐる巻きにして外に出ます。何か文句を言う気配を感じ取ったのでとっとと行動に移しちゃいましたよ。ちなみに猫ドアは1回だけ出入り可能な入り口です。猫玄関みたいに長く設置出来ないんだ。
で、外に出るとシロ先生を解放します。
「じゃあ行くよー!」
「もう、しょうがないわね。さっさと行きましょう。でも用事が終わったらすぐ帰る、分かった?」
「あはは、話が早くて助かるよ」
「それにしてもあれね。もう元通りなの」
「だね。ほとんど前と変わらない地形になってるよ」
僕がずっと魔法を練習をしている間に地形が元通りになったのですよ。家から町までの道は完全に前と同じです。まあ多少残っている地形もありますがね。
「すごいよね。これ魔法で直したんだって!」
「へ~、人間ってすごいのね」
「土魔法って便利だね。それで僕も手伝いたかったけどね、みんなの邪魔をしないのってママに言われてから離れたところでずっと見てたんだ。僕って人間だと全然魔法使えないからさ。だから今日は僕の魔法を披露したいと思います!」
「魔法使いたくてうずうずしたのね。そういえば最近ずっと何かしてたわよね?」
「そうそう、そうなの。最近の僕はずっと魔法の練習したんだ。まずはその成果を見せちゃうよ!猫バリア―!」
僕は猫結界を応用した猫バリアの魔法で、四角い立方体のバリアを作り出します。1から6まであるサイコロを思い浮かべてください。イメージはそれです。
「こうやって猫バリアの一部に穴を開けて中に乗り込みます。はい、シロ先生も入って」
「はいはい」
「で、いったん穴を閉じます」
「それで?」
「次はこの猫バリアの下にもうひとつ猫バリアを作ります。サイズはこの猫バリアより大きめにね」
「なにか今日はすごい説明口調ね」
「にゃ~?」
「あら可愛い顔」
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今の状況を横から見るとこんな感じです。上の四角いサイコロみたなとことに僕とシロ先生が乗っています。
「それでそれで?」
「ここからが本番なんだよ。ではこの下の猫バリアを伸ばします。上に向かって」
「……伸ばす?」
ギュイーーーーーーーーーン!
「にゃにゃ?!」
「するとあら不思議。勝手に高く上昇します!」
「何これ?! どんどん進むわよ?」
「これが猫魔法・猫エレベーターです」
「え、えれ? 何?」
「猫エレベーターです」
「えれべーたー?? って何にゃの?」
「人や猫を乗せて移動させる昇降機みたいなものかな。魔法で再現してみたんだ。もし落ちてもこのバリアが衝撃から守ってくれるから安全安心だよ!」
「そういうことは先に言って欲しかったわね……」
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横から見るとこうなります。僕のお家と同じぐらいの高さでストップしましたよ。失敗したら落ちて怖いと思ったので。でも無事に成功しました!
「よく分からないけどすごいわ」
「階段がなくても勝手に上に動くんだよ。この前は壁を登るの苦労したでしょ? もう少し楽出来ないかなあと思ってさ」
「……そう聞くと確かに便利な魔法かも。でもよくこんな事が出来たわね」
「実は今僕達が入っているこの猫バリア(サイコロみたいなやつ)はね、水平方向の衝撃には強いんだけど、上下に動く方向には弱いんだ。だからこの猫バリアごと下から押し上げられんだ。最近猫結界の練習をしていたときにいろいろ発見があってね。形だけじゃなくて性質もどんどん変えられるようになったんだ。猫結界および猫バリアを応用したのがこの”猫エレベーター”ってわけだよ!」
「へえ、そうだったの。頑張ったのねえ(まあ私は魔法使えないからよく分からないけど一応褒めておこきましょう)。魔法もそうだけど、私はメンテのアイディアもすごいと思うの。どこでその知識は覚えたの?」
「……にゃ~?」
「あら可愛い顔」
アイディアは前世の知識です! とは言えないので可愛い顔で誤魔化し切りました。
「で、続きなんだけど猫バリアで道を作ります。これで町までゆる~い坂道の出来上がりってわけだよ。じゃあこの上を歩いて町に行くよ!」
「へえ、これなら普段より早く町に着きそうね」
「そういうこと~」
「メンテって天才なんじゃないかしら?」
「えへへ~。照れるなあ」
「「にゃははは!」」
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ちなみに横から見るとこんな風になります。もうお分かりかもしれませんが、参考にしたのは滑り台です。あとは猫バリアから出て坂道を下るだけですよ。
「よし、町に行くよー!」
「出発ね!」
二匹を覆っていた猫バリアを解除し、緩い坂道の上を歩きだすメンテとシロ先生。これで早く帰れそうと上機嫌なシロ先生だったが……。
「ん?」
「どうしたの?」
「今一瞬ゾワっとしたんだけど……。何かおかしくない?」
「え? 僕は特になにも感じないけど」
「気のせいだったのかしら?」
グワーーーーーーン。
「「――!?」」
「ちょちょちょ、ちょっと?! この道、道ごと下に落ちてない?!」
「あ」
「あ? じゃないわよ!! 何その心当たりありそうな声?!」
「この坂道、あまり意識せず作ったから設定間違えちゃったかも」
「せ、設定?!」
「上下に動く方向には弱いってやつ。…………えへっ」
ゴオオオオオオオオオオオン!
バリバリバリ、ドゥゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
「「にゃああああああああああああああ!?」」
「な、なんだ今の音?!」
「あっちだぞ!」
「みんな戦闘準備ー!」
猫バリアで作った坂道は、上下方向の衝撃や重さに非常に弱い設定であったため2匹の猫の体重を支えきれずに下降し始めたのだ。こうして坂道と一緒2匹は落下したという。とっさのメンテの猫魔法により2匹は怪我をすることはなかったが、大きな音が響いたため警備員が集まり始めてしまった。珍しく大失敗したわけである。
「て、撤収ー! 早くお家に入るよシロ先生!」
「……とんでもない欠陥魔法じゃないの!!」
警備も厳しくなり、しばらく町に行く計画は中断されたという。
まだ魔法使い始めて数か月。失敗したっていいじゃないか猫だもん。 めんて
やあ久しぶり。俺の名は
アルティメット・ハンサム・キャット・テンシ・メンテ・ナンス。
世界で一番……。
「えぐぅ?! …………ぐぅ~すぴぃ~」
おやおや、寝ちゃうなんて失礼な。どうやらこことそちらでは時間の流れが違うみたいだ。
今日は何の日だって? それは1周ねn……。
「えっぐぉおおおおお?! …………ぱい、まんまあああnー!」




