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147話 「私のご主人様のご主人様 その7」

 新たな力を使う場所を探しましょう。目に魔力を集め、力を使うのに良さそうな場所を確認していきます。ふむふむ、この辺りが丁度良い感じの狙い目だねえ。



 よし、ぶち壊してやりましょう!




「ふむふむ、ここが脆そうだね。……猫パンチ!!!!!!!!!」




 バリーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ。


 ボロボロ、バリバリバリッ……………、ズザァアアアアアアアアアアアア!!!!



 メンテが軽く猫パンチをすると空間にひびが入り、バリバリと音を立てながら砕け散った。




「「「「「「「「「「にゃああああああああ?!」」」」」」」」」」




 当たり前のように空間を破壊するメンテ。あまりにも非日常な光景に、この場にいた全ての猫が叫ぶのであった。そして、空間のひび割れが終息する頃にある変化が起こった。



「「「「「「「「「「……にゃ?!」」」」」」」」」」

『……今何したの?!』

「え? ただ猫パンチしただけだけど……」

『どういうことにゃ?!』

「「「「「「「「「「ね、猫ばあ?!」」」」」」」」」」

『……にゃあ?』



 なんと、猫ばあが猫達全員に見えるようになったのである。



「「「「「「「「「「猫ばあーお帰り!」」」」」」」」」」

『……は?』

「「「「「「「「「「にゃわにゃあ」」」」」」」」」」

『ちょ、これは本当にどういうことにゃの?!』

「猫ばあさんですか? はじめまして、私はシロ。メンテの友達です。何が起きたのか分かりませんがよろしくにゃ」

『あ、はあ……。こちらこそよろしくって何が起きてるのにゃああああ?!』

「「「「よろしくにゃあ」」」」←教会の猫



 猫達が猫ばあに押し掛けた。ここで変身を解いたメンテは、人間の姿でハイハイしながら猫じいに近づくのであった。



「ね、嘘じゃないでしょ?」

「……」



 ポカーンとしてしまう猫じいである。その様子は、ただのおじいちゃん猫であった。なおメンテは眠くなる前に猫の姿に戻り、話を続けるのであった。



「ねえ、これはどういうこと?」←シロ先生

「パンチしただけだよ」

「いやいや、それだけじゃ全く理解出来ないわよ?!」

『メンテー、もっと詳しく説明してにゃあああああああー!』

「え、もしかしてみんな知りたいの?」

「「「「「「「「「「そうにゃ!」」」」」」」」」」



 では、みんなが知りたがっているので説明しましょう!



「これ邪魔だなあと思って猫パンチしたんだよ!」

「「「「「「「「「「……は?」」」」」」」」」」



 あれれ? みんなに説明しましたが、誰も理解してくれませんでしたね。



「……わかった。その猫パンチ? とやらでいいけどね、なんで空間が割れたのかだけ説明して?」←シロ先生

「え? そりゃあ猫の認識の壁を壊しただけだよ。みんな幽霊が見えないっていうから誰でも見えるようにね。なんかこの壁が鬱陶しいというか邪魔だったからさ。ぶっ壊しただけだよ」

「いや。ね、ちょっと……にゃあ?」

『その壁を一度も見たことないにゃ。分からない私がおかしいのかしら……』

「「「「「「「「「「メンテがおかしいにゃ!」」」」」」」」」」



 別におかしなことはないでしょう。僕は猫魔法を使ってこの壁を見つけたのです。なんかこれ目障りだなあって思って壊しただけですよ? だって僕は猫ですから。壁があれば引っ掻いたり蹴ったりしますよね。それで傷ついたり壊れちゃうこともあるでしょ? そういうことですよ。


 ※何度も言いますが、今のメンテは暴走中です。



「まあ、猫ばあが見えるようにしただけだよ。それと猫ばあが、猫じいだけに話があるから……猫結界!」


 メンテを中心に広がるように放出された魔力は、猫の結界を作り出した。結界の中には、メンテと猫じいと猫ばあの3匹だけが入ったという。




 説明しよう!


 猫結界とは、ダンディやタクシーが使用した結界を作る魔道具を真似して作られた魔法である。猫が苦手な人にとって、猫がいっぱいいる場所に近づきにくい。それってまるで結界みたいじゃんと思ったメンテが作り出した猫魔法なのだ!


 何を言っているのか理解できない君も安心したまえ。暴走したメンテの思考は常人には理解出来るわけがないのだ。人間と猫の2つの観点から考え、いろいろ出来ちゃう不思議な魔法。それがメンテの猫魔法なのである!




「みんなに知られない方がいいかなと思って結界を作ってみたよ。外に声は聞こえないから安心してしゃべっていいよ」

『いや。もうね……。何でもありにゃのね……』

「もう何が何だか分からんわい……」



 そして、2匹の会話が始まりました。なお、外に残された猫達はというと……。



「なんじゃこれにゃー?!」

「お、この上に乗れるよ」

「中の会話が聞こえないね」

「にゃはは。面白そうだしこれで遊ぼうにゃ」

「「「「「にゃあ!」」」」」ピョンピョン!

「ご主人様のご主人様は本当にすごいにゃ!」

「魔法ってすごいにゃあ~」

「さっきから初めて見る魔法ばっかりなの……」←頭を抱えるシロ先生

「メンテが本当に魔王な気がしてきたにゃ」

「「「「「「「にゃわにゃわ~」」」」」」」



 ◆



 結界の中では、猫じいと猫ばあが向かい合っていた。



「……あんたは本当に猫ばあなのかの? ずいぶん若いような気がするが」

『ああ、肉体がないから年齢を自由にいじれるのよ。ほら、こうやって死ぬ前の姿もね』

「ほほう……。こりゃたまげたわ」

『でしょ~?』

「……それで猫ばあや、何かわしに伝えたいことがあるのかの?」



 猫じいは長話をするかと思ったけど、直球でした。意外ですね。



『う~ん、まあそうといえばそうね。本当はただ見守っていたかっただけなんだけどね。でもメンテのおかげで、いろいろ伝えることが出来るようににゃったわけよ。ありがたいわね』

「にゃほほ、また猫ばあと話せると思わんかったわい。もしや夢でも見ているのかのう」

『幽霊の私が言うのもあれだけど現実にゃのよね』



 とりあえず二匹の会話は邪魔せずに聞いていようと思う僕です。



「で、伝えたいこととは何かの?」

『そりゃあれよ。猫じいは見栄を張りすぎなのにゃ!』

「……にゃほ?」

『まずその足よ! 怪我の原因って、外に脱走しようと2階から飛び降りたやつじゃない。近所の猫達に、あの屋敷に行って怪我したとか嘘ついて……』

「いや。それはのう……」

『それに話だけで満足って大嘘じゃないの。あんたは年とっても外に脱走しまくってたくせに! 散歩大好きなくせにカッコつけて嘘ばっかりにゃ』

「にゃほほ……。そ、そこの子猫や。わしを助けてくれんかの?」

「僕の家で怪我したって嘘はよくないなあ」

『そうにゃ! 誰も分からないからって調子に乗ってカッコつけてんじゃないのよ!! 嘘をつきすぎて身動きが出来なくなるほどじゃにゃいの!!! 本当はさっさと外に出たいと言いにゃさい!!!!』

「にゃほほ……」



 それからは猫ばあが伝えたいことを言いまくっていきました。さっきまで黙って見守ろうとしていた猫とは思えませんね。もう言いたい放題です。猫じいは何も言い返せませんよ。秘密を全部覗かれてたようなものですしね。



『全くもう、死んでまで私に心配させるんじゃないわよ』

「にゃほほ……。わしが悪かったわい」

『そうにゃ。分かればいいのよ』



 これで個人的なお話は終わりなようです。僕は猫結界を解除し、みんなと合流します。



「あ、出て来た」

「終わったよー。2匹だけで話したいことがあるからって結界作ってごめんね」

「まあ死に別れたからそういうこともあるよね」

「あとね、猫じいがたまに散歩に付き合ってくれることになったよ!」

「「「「「「「まじにゃ!?」」」」」」」

「たまには運動せないかんのう。猫ばあに動けと怒られてしまったわい……」



 みんな嬉しそうでしたが、猫じいは少し顔を逸らしていましたね。まあこれで一件落着かな?


 その後は、猫達みんなで猫ばあと会話をしていきました。みんな幽霊になった猫ばあに興味があるのですよ。だって誰も触れないのに見えちゃう奇妙な状態なのでね。それに積もる話もあるでしょう。ここはゆっくり話をした方が良いと思います。


 ということで、僕はお家に帰ることにしました。また今度も来るからよろしくねーって感じにお別れです。



『ねえメンテ。最後にひとつお願いがあるんだけど……』

「どうしたの猫ばあ?」

『猫じいの怪我って治すこと出来ない?』



 お、そう来ましたか。でも僕の魔法を勘違いしちゃってますね。



「うーんとね、僕の魔法は心に癒しを与えるぐらいだよ。さすがに怪我の回復までは出来ないよ。にゃははは」

「「「「「「「「「「えっ?!」」」」」」」」」」

「え? 何でみんな驚いてるの? 僕は猫っぽい魔法しか使えないんだよ。だから何でも出来るってわけじゃないんだよね。それに僕赤ちゃんだしさ」

「「「「「「「「「「ええっ?!!!」」」」」」」」」」



 猫達は今までやりたい放題な魔法について驚いたのか、赤ちゃんだった事実を忘れていたことに驚いたのか。それは猫達だけが知るという。



「じゃあ僕達そろそろ帰るよ。またね!」

「「「「「「「「「「にゃあ!」」」」」」」」」」

「アイとラブも帰るよ。今日は遊ぶのおしまい」

「「にゃあ!」」



 この日、メンテはたくさんの猫達とお友達になりました。これが、使用人の猫達のご主人様が尊敬するご主人様との初めての出会いになったのです。



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