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143話 「私のご主人様のご主人様 その3」

 メンテの作った魔法の玄関から外に出た猫達。



「これが外……」

「すごい、すごいよアイ! 私達外に出ちゃったね!」

「そうねえ。まだ実感がわかないけど」

「遊ぶのは明るくなる前までね。それとこの玄関を作る魔法だけど、持続時間がよく分からないんだよね。だから次僕が遊びに来たときに何時まで残っていたか教えてよ」

「「いいにゃ!」」



 アイとラブは初めての外にはしゃいでいます。赤ちゃんの僕が言うのもあれですが、子供みたいで可愛らしい反応ですよ。ついでに僕のお願いも聞いて貰いました。昨日完成したばかりの魔法なので未知の部分が多いのです。ついでにこの魔法の名前も募集中です。



「そういえば遊ぶって何をするの?」「私も知りたーい」

「僕の家の周辺を探索だよ。今日はね、他にも近所に猫がいるかもしれないから挨拶しようかなって。昨日のアイやラブみたいにさ。それが終わったら町にでも行こうとって思ってるよ」

「そうなんだ」「へえ。そういえばメンテのお家ってどこなの?」

「ん、あそこー」



 僕はしっぽを伸ばして伝えます。猫の姿のときはしっぽが指代わりになるのですよ。猫の姿のときは手が増えて便利です。



「「にゃにゃあああ?!!!!!!」」

「ん? 二匹ともどうしたの?」

「あれってご主人様の働いている屋敷じゃない?!」「絶対にそうだよね?!」

「屋敷じゃなくてお家ね。みんな間違えるけどお家だよ。そういえば二人のご主人様って誰なの?」

「私達のご主人様は”エルフノ”っていう呼ばれている人間なの」

「あ、そうなんだ。エルフノさんは僕とよく遊んでくれる優しいメイドさんだよ」

「「メイド?」」

「メイドは身の回りのお世話をしてくれる人だよ。僕赤ちゃんだからね。とても助かってるよ」



 へえ、そうだったんですが。エルフノさんが猫を飼っていたなんて知りませんでした。


 エルフノさんは耳が長く、見た目がゲームに出てくるような金髪エルフっぽいメイドさんですね。なぜエルフに外見が似ているのかと言うと、アニマルパワーと似たようなスキルを持っているからです。スキルに種族名があり、それがエルフだったということです。種族スキルとでも言えばいいのかな?


 ギフトで表現するとこうなります。エルフノさんの知らない部分は僕の勝手な推測です。名前とか年齢やらね。



===========

【エルフノ・なんとか】

 年齢 にじゅうだい

 性別 女


 所持スキル

 ・エルフ

 ・精神統一

===========



 精神統一のスキルは、集中力を高めて魔力をすごーくするとか言ってました。毎回僕が邪魔をするので成功する姿を見たことありませんがね。無防備なのでスカートの中に突撃し放題なのですよ。


 そして、これが一番大事なのことですが、エルフだろうと動物だろうとこの世界には差別はありません。見た目が変化するのはスキルの影響なのです。だからどんな姿をしていようと人間は人間、姿が違うのはただの個性なのですよ。種族の醜い争いは起こらない異世界に転生されて良かったなあと思います。だって平和だもん。



「「えええ?! ご主人様のご主人様ってメンテのことにゃ?!」」

「う~ん、僕だけじゃなくて僕の家族も含めてかな。エルフノさんはね、僕の家族の手伝いをする仕事をしてるんだよ」



 それからアイとラブにエルフノさんについて話していきました。ナンス家の使用人だとかね。詳しくは面倒なので省略します。



「そっか~。メンテのお世話がご主人様の仕事なんだ」

「私はね、ご主人様はあの巨大な屋敷でえらそーな人間にこき使われてると思ってたのよ。だからいつか噛み付いてやろうって思ってたけど……、メンテなら安心ね」

「あはは、僕はそんなことしないよ。あと巨大な屋敷じゃなくて普通のお家ね」



 アイとラブから今のご主人様が好きな気持ちが伝わりますね。エルフノさんはいい飼い主らしいです。今度仕事に来たときは、ご褒美にもっと甘えてあげましょう。



 まったり話しながら家の周囲を探索するメンテと猫達であった。



 ◆



 しばらく歩くと、人が住んでいそうな民家を発見しました。ここらへんは民家がいっぱい立ち並んでいます。人がいるってことは猫もいそうな気がしますね。



「猫探知! ……う~ん、家はあるけど猫は飼っていないね」

「見なくても分かるの?」「なんでなんでー?」

「それは猫魔法で生き物の気配を調べているからだよ。この家は気配が多いけど人間だろうね。きっと子供がいるんだと思う」

「そうなんだあ」「へえ~」



 人と猫では気配の感じ方が違います。最初はどっちも同じように感じましたが、猫探知を使っていくうちに違いが分かるようになってきました。まあ人と猫以外の生き物は全く区別出来ませんが。



「……(この名前はキッチンスタッフの人だっけ?)」



 家の表札を見ると、聞いたことのある名前がありますね。そういえば僕の家の周りは使用人達の家があり、家族で住んでいると聞いたことがあります。ということはここが使用人達の住む住宅街なのでしょう。実際に来たのは初めてなのです。


 それにしてもどのお家も僕の家から離れているような気がしますね。無駄に家や庭の面積が広いのは田舎みたいですが。


 ※ナンス家の周囲に家がないのは、ダンディの被害を受けないためです。メンテはこのことを知りません。





「あ。猫の反応見つけた!」



 しばらく歩くと猫が家の中にいるのを発見しました。



「どの家?」

「えっとね、あそこー」



 しっぽで場所を教えます。すると猫達の表情が曇っていきます。



「「「「にゃ……」」」」

「え、みんなどうしたの?」

「あそこの家に犬がいるわ。あまり近づきたくないの」

「犬? あ、本当だ」



 シロ先生が言った方向には、茶色っぽい犬がいました。外にいるから番犬か何かでしょう。前世の知識からするとゴールデンレトリバーに似ています。



「あははは、寝てるから大丈夫だよ」

「でも起きたら嫌だにゃ」

「じゃあ猫魔法の出番だね!」

「「「「にゃ?」」」」



「猫魔法・もっと寝てて!」



 メンテのしっぽから放たれた魔法が犬に当たる。だが、茶色い犬に変化はなかった。何が起きたのか分からず戸惑う猫達であった。



「今にゃにしたの? あの犬に変化なさそうだけど……」

「起きないように睡眠をかけたんだ」

「「睡眠?!」」←アイとラブ

「うん、猫魔法でね。僕の兄弟に兄がいるんだけど、最近猫を抱っこしながら横になるとよく眠れるらしいんだ。だから猫には睡眠効果があるって判明したんだよ。魔法も試してみたらこの通り使えるしさ。僕は猫だからね。猫っぽいことなら何でも魔法で出来ちゃうんだ! すごいでしょ?」



 猫に睡眠効果があるなら僕にも使えるはず。だって猫っぽいことなら何でも出来ちゃうのが猫魔法だからね。何もおかしいことはないのです。普通です。



「「……」」←ポカーンとするアイとラブ

「「「「へえ」」」」←他の猫達

「「え?! それで納得しちゃうの?!」」

「いつものことよ。それにメンテは、毎回親にこの魔法を使っているからね。夜遊んでいることがバレないように覚えたらしいわ」

「「えっ?!」」

「この姿のことは人間には秘密なんだ。まだ時間はあるし詳しくは後でね。じゃあこのお家の猫に挨拶しに行くよー」

「「「「にゃあー!」」」」



 こうしてアイやラブみたいな普通の常識を持つ猫達も、メンテの非常識さに慣れ……、いや浸食されていくのであった。



エルフノは、09話に出ていたエルフです

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