表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/262

131話 「キャットタワー」

前回までのお話

メンテ教官がやりたい放題だった!

 子供部屋に入ると、壁際に何か大きな物が増えていましたよ。何これ?



「……にゃ~?」

「はっはっは。そうだ、これは猫達の遊び場だぞ。メンテが寝た後に設置したんだ」



 僕の目の前には、インテリアみたいな猫の遊び場があります。僕の高さの何倍もありますね。確かこれはキャットタワーというやつですか? 運動不足やらストレス解消に体動かそうぜ! っていうあれですよ。高い場所だと猫は安心したり、休憩所みたいな役目もありますね。よく分からない人はキャットタワーで検索してみましょう。


 この世界でキャットタワーを見たことありませんでした。遊びに来る猫達は、棚の上にごろんとしたり、窓の前で日向ぼっこしてますね。猫用のクッションに座っている猫もいるのですが、これは数に限りがあります。いっぱい集まりすぎると居場所がなくて困る猫もいるようです。そのため、泊まりに来る猫は毎回5匹前後と決めていると聞きました。集会があるときはもっとたくさんいますがね。


 猫達は昼に今日は誰が泊まるか決めて、夜ごはんを食べたら帰っていくのがほとんどなのです。僕の家で猫を飼っているのではなく、ただ遊びに来ているのですよ。そんな猫達に父が遊び場を作ってくれたのです。これならいっぱい集まっても大丈夫になるかな? みんなよかったね!



「ねえメンテ、これで遊んでもいいの?」

「えぐえぐ(いいよ)」

「「「「にゃあ!」」」」



 僕の許可が出ると、待ってましたと言わんばかりに猫達は遊び始めました。どうやら猫達の話によると、このキャットタワーはタクシーが設置したそうです。気になるけど怖いからみんなで避けていたのだとかね。



「おお、猫達がいっせいに登り始めたぞ。はっはっは、楽しそうじゃないか」

「えっぐ(そうだね)」



 父も嬉しそうですね。そして、父は何があったか語り始めます。



「最近猫が増えて来たから何か必要だと思ったんだ。店のみんなに相談したら面白そうだといろいろ作ってくれたんだぞ。今回のこれは期待の新人たちが作った魔道具でな。猫達に好評そうなら店の商品にしてもいいかなと思っているぐらいだ。この遊具の名前は何にすべきか……」

「えぐ?!」

「ん、どうしたメンテ? 気になるのかい?」

「えぐえっぐ!」



 キャットタワーはまさかの魔道具でした。最近魔道具って何なんのかと思うことがありますね。


 例えばタンスは家具です。ですが、タンスに特別な性能を1つ追加すると魔道具になります。今回は消臭効果を付けたことにしましょう。これだと家具でありながら魔法の効果が付与されているので、タンス=魔道具ということになりますね。タンスの中に臭い消しの魔道具を入れた場合は、タンスは家具で臭い消しが魔道具になります。ややこしいね。


 魔道具の定義って何? よく分からないなあ。教えてパパ~と父を見つめていると、私が魔道具と思えばそれは魔道具だと答えてくれました。何でも魔道具にしちゃうからナンスの店は雑貨屋なのですよ。



「はっはっは、そうかそうか。一応魔道具なんだぞ、これ全部」

「ぱんぱぁー」←目キラキラの上目遣い

「しょうがないなあ。猫達も遊ぶかどうかみたいしな。パパがいろいろ使い方を教えてあげよう!」

「きゃきゃ!」



 というわけで父にこの魔道具を解説してくれるって!




 ◆




「じゃあ順番に説明するぞ! まずはこれだ」


 父が指差したのは木で出来たキャットタワーでした。真ん中に棒のような柱があり、猫が乗れる大きさの板が複数あるというシンプルな構造です。図にするとこんな感じですね。



   |

  ―|―

   |

  ―|―

   |

 ―――――



 ちなみにキャットタワーという言葉はこの世界にないので、父はこれを遊び場と呼んでいます。



「これはどこにおしっこを漏らしても安心な防水機能が付いた遊び場だ。ここに魔石を入れるんだ。これぐらいの魔石で1か月ほど持続するぞ」

「えぐえぐ」



 なるほど、汚れに強いタイプですね。なかなか悪くないアイディアです。猫に感想を聞いてみましょうか。きっといい返事が返って来るはず。



「にゃあ、えぐえぐぅ?(みんな、遊ぶとどんな感じ?)」

「まあ面白いけど何だか普通だよね」

「そだね。それとちょっと上に登りづらいかな」

「せめてこの位置ズラせよ」バシバシ

「チープすぎるだろこれ。机を何個もくっつけだだけじゃねえか。猫なめてんのかにゃ」

「「「「にゃわにゃわ」」」」



 ……お、おう。不評な意見の方が多いのね。ちょっと意外でした。シンプルすぎたのかな? みんな楽しそうに遊んでいるように見えて愚痴しか言っていませんよ。子供みたいに正直なのです。猫達みんなの意見をまとめて図にするとこうなりますね。



  |

  |―

 ―|

  |―

 ―|

  |

 ―――



 ……なんか前世にあったようなキャットタワーになりました。これを言葉で表現すると今の僕では難しいですねえ。粘土で作ろうかなと思ったけど難しそうで時間掛かりそうです。それに魔道具の説明に飽きたと思われるのは嫌ですし。う~ん、これの改善点はしゃべれるようになったら伝えましょう。



 ……いや、いっそのこと自分で作ってみようかな? メンテの魔道具なんちゃって。



 それはさておき、話を戻します。僕以外の人間には、猫達がにゃあにゃあと楽しんでいるようにしか見えないし、言葉も理解されていないはずです。父にはやんわりと猫からは微妙だったと伝えますか。



「ぱんぱあ」

「どうしたメンテ?」

「えぐえぐ」←首を横に振る

「「「「にゃあ」」」」←いっせいに飛び降りる

「ん? これは面白くなかったのかな?」

「ぱんぱ、えっぐ(正解)!」「「「「にゃあ(正解)」」」」

「おお、正解なのか。メンテは猫の気持ちが分かるみたいだからな。きっとこれは改善が必要って伝えたいんだろう。作った子に伝えるよ」



 無事に僕と猫のボディーランゲージが伝わりました。父は魔道具のことになると謎の力を発揮するのです。こういうところは大好きです!






「じゃあこっちはどうだい? これは金属で出来た遊び場だ。倒れないという安定感をコンセプトにしているらしい。さらに魔石を混ぜて強度をあげたから、どこでも爪とぎが出来ると言っていたぞ!」



 父が指差したのは、金属で出来た階段みたいなキャットタワーでした。すごく頑丈そうです。正面から見ると階段、横から見ると倒れないように太い柱がありますね。あの太い柱で倒れないように固定しているのでしょう。まるで脚立みたいな形です。図にするとこうなのです。分かりやすいように猫が乗っていますよ。



 正面 


    猫

  | ̄猫 ̄|

  | ̄猫 ̄|

  | ̄猫 ̄|

  | ̄ ̄ ̄|

   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 横

          猫

       猫/| ̄ ̄|

     猫/  |  |

   猫/    |  |

  /      |  |

 ―――――――――――



「にゃあ、んぐぅ?(みんな、これはどんな感じ?)」

「普通かな。悪くはないけど……」

「さっきよりは登りやすいよ」

「だよね。でもなんだか冷たいにゃ」

「愛を感じねえにゃあ。シンプルすぎても困るってもんだよ」



 ちょっと不満があるといった感じですね。ここで爪とぎ出来ることを伝えて見ます。



「えぐえぐぐ(これさ、どこでも爪とぎ出来るんだって)」

「え、結構便利そうじゃにゃい?」

「本当だあ。いいかも」カリカリ……

「「「「にゃわにゃわ」」」」



 ちょっと好評になってきました。みんなで爪をカリカリ引っ掻いています。魔石のおかげか普通の金属と違って爪とぎしやすい硬さらしいです。結構いい感じかも? ついでに1つ気になった質問をしてみます。



「にゃにゃ、あぐぐ?(みんなはどこで爪の手入れしてるの?)」

「「「「教会」」」」

「えぐ?(そうなの?)」

「いつも遊びに行く前にね。うんこも教会だよ!」

「俺も俺も」「私もー」「そうにゃ」

「「「「にゃわにゃわ」」」」



 ……教会に謝った方がいいのかな?



 よし、何も聞いてなかったことにしちゃえ! ふふふ~ん!



 では気を取り直して父に感想を伝えてみます。悪かった点は1つだけ。ここは金属が冷たいのアピールをしましょう。そこで僕は猫達に指示します。



「ぱんぱあ」

「どうだメンテ、今度は良かっただろ?」

「にゃ(ゴー)」

「「「「にゃあ!」」」」



 猫達はだだだとダッシュします。そして、協力して猫用のクッションを持ってきます。僕はそれを遊具に乗せろとパパに伝えます。



「え? これをこの上に乗せるのかい?」

「えぐえぐ」ニコニコ

「にゃ」ニコニコ



 父がクッションを乗せると、猫がその上に乗ります。次は他の猫達の出番です。残った猫達と僕で金属に触ると手を引っ込めます。それはもうわざとらしく何度も父に見せつけます。この金属を触ると冷たくてびっくりするのアピールをしているのです。全員で協力して伝えましょう!



「えぐ(冷たい)」

「「「「にゃあ……」」」」」

「……お、そうか! 触ると冷たいって伝えたいのか!」

「きゃきゃー!」「「「「にゃあ」」」」

「おお、正解みたいだな。よし、これも伝えておくぞ。猫の気持ちになって作らないとな。優しさが足りないってことは愛がないってことだ。これは改良する点が多そうだぞ」



 今回もすぐ分かってくれました。愛がないって普通に伝わったのにびっくりでしたが。そこはさすが父ですね。こういうところは本当に尊敬します。あとで甘えましょう!






「最後はこれだ。葉っぱで出来た遊び場だぞ。柔らかいから怪我しない。これは登るのではなく、中に入って遊ぶ魔道具だそうだ。魔石をセットしたら中は快適な温度になる仕掛けだぞ!」


 父が指差したのは葉っぱで出来た遊具です。箱みたいな形の遊具を3つ重ねてキャットタワーみたいな状況になっていますね。図にするとこんな感じ。



  | ̄ ̄ ̄|

  | ○ |

  |___|

  | ̄ ̄ ̄|

  | ○ |

  |___|

  | ̄ ̄ ̄|

  | ○ |

  |___|



 ……丸い穴の開いた段ボールを重ねたのかな? 一応葉っぱで出来ているので段ボールと違うとは思うけどね。というかこの世界で段ボール見たことないや。



「にゃあ、んぐぅ?(みんな、これはどんな感じ?)」

「おお、中は快適だにゃあ。すげえよ」

「……落ち着くにゃ」

「でも登るのはちょっと難しいよ。ほらすご~く揺れるよ。危ないね」

「上の方は安定感がねえぜ。これ積み重ねない方がいいんにゃないか?」



 なるほど、重ねなければ好評みたいです。今までのと比べたらグラグラ揺れるから危ないよね。登れば登るほど危険なやつです。さっそく父に伝えましょう!



「ぱんぱあ」

「どうしたメンテ? パパには猫達がリラックスしてるように見えるが……」

「にゃ(ゴー)」

「「「「にゃあ!」」」」



 猫達は全員葉っぱから飛び出しました。そして、猫達は同時に一番下の箱に体当たりしてだるま落としのように吹き飛ばします。重ならない状態になると猫達は箱の中に入っていきます。



「――! そうか、これは不安定で危険だって伝えてるんだな。これもしっかり伝えておくよ」

「きゃきゃー!」「「「「にゃあ」」」」



 1発で伝わりました。さすが父なのですよ!



「中はどうだったかな?」

「にゃあ」

「おお、そうか。これは評価をプラスにしないとな」

「にゃおん」

「ふむふむ、気持ち良かったのか」

「えっぐ!」

「はっはっは。それはすごいな」

「にゃぐう」

「なるほど。そう思うのか」



 こうして子供部屋に猫の遊び場が出来たのでした。


 今回の経験からイメージを伝えるのは難しい。だから自分で何か作ってみようと思いました。だって僕には物を上手に作るスキルがあるらしいからね。何かいろいろ出来そうじゃない? 早く魔法使えるようにならないかなあ。



 新たな目標が増えたメンテであった!






 この様子をこっそりと見ていたアーネ、アニーキ―とレディーの3人。


「パパが猫と遊んでるよー」

「うわあああ、ちょっと母さん見てよ。父さんが猫と会話してるよ?! メンテじゃなくて父さんだよ?! メンテは赤ちゃんだから可愛いなあと思うけど、父さんは頭がおかしくなったようにしか見えないよ?!」

「フフッ、そんなに心配しなくても大丈夫よ。まだ奇声をあげてないからね」

「あ、そっか。なら大丈夫だ! ふー、父さんの心配をして損したよ。いつもの父さんだね」

「そだねー」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ