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123話 「猫だけが使える魔法」

前回までのお話

パパから貰った粘土で遊んだよ!

「まんまー」

「どうしたの、メンテちゃん?」

「くふわぁ~。えぐぐ……」

「あら、もう眠くなったの? 最近は早いのね」

「ままぁーん」ぎゅっ

「はいはい、一緒に寝ましょうね」



 最近寝る時間が早くなったメンテ。その理由はもちろん……。



「えぐぐぐぐー!(猫魂ー!)」



 猫に変身するためである。家族が寝静まった頃、誰にも見つからずにこっそりと猫の姿になる。これが彼の秘密なのだ!



「(さてと、みんな寝てるね。……ん?)」



 全員が寝ていることを確認してから変身しました。すると僕の近くでシロ先生も寝ているのが見えました。今日は猫達と遊びたいので起こしましょう。



「シロ先生~」かぷっ

「……………………ぐふっ。にゃ、何にゃの?!」

「あ、起きた」



 鼻を甘噛みするとみんなすぐ起きますね。シロ先生だけでなく、父にもこの方法を使えば楽勝なのですよ。なんでも舐めちゃう赤ちゃんだから許されるのです。



「おはよう。じゃあ行くよ!」

「え、何のこと? もしかして今日ってみんなで集まる日かしら?」

「違うよ。今日はね、みんなと遊びたい気分なんだ」

「へえ、そうなの。でもね、よく考えてみて。この部屋ってドアが閉まっているから外に出れないじゃないの。どこにも行けないわよ?」

「大丈夫だよ」



 僕はぐにゅにゅ~んとしっぽを伸ばします。しっぽをドアの前まで伸ばすと、ガチャリとドアを開けます。ほら、ベットの上でも出来る簡単な作業でしょ? これぐらい猫なら誰でも出来ますよね。



「ね?」

「……」←ポカーンとした顔

「じゃあ行こうか」



 今度はしっぽの長さを調節し、シロ先生をぐるぐる巻きにして持ち上げます。



「――えっ?」

「ゴーゴー!」

「えええええええええええ?!」



 ぴょんとベットから飛び降りて静かに廊下に出ます。もちろん音は立てません。気配も消します。周りには誰もいないとドアを開けたときに確認したので大丈夫ですよ。猫だからこれぐらい出来て当然なのです。



「ちょ、ちょっと待って。何もかもおかしいでしょ?!」

「どうしたのシロ先生?」

「何でしっぽの力だけで私を運べるのよ?! 私メンテより体大きいから重いでしょ!」

「え、猫って物を持ち上げるときしっぽを使うでしょ? これぐらいの重さなら大丈夫だと思うけどね。他にもぶら下がったり、物を投げつけたり、ビンタしたりと大活躍だよね!」

「それ普通なら全部出来ないわよ?!」



 あれ~? 猫ならみんな出来ると思ったけど違うんだ……。そういえばしっぽを使った実験は、猫が1匹もいない夜中に試していることが多かったですね。誰からも指摘されないから普通だと思い込んでいました。それ以前に見てる猫がいなかったのか。僕のうっかりです。



「それにメンテの気配が急に消えたのもおかしいわよ?! 私、メンテに触れているはずなのに存在を感じなかったんだけど?! その技術はいったいどこで覚えたのよ!!!」

「えっとね。タクシーの真似してみただけだよ」

「……そう。タクシー様ね」

「うん、タクシータクシー。全部タクシーだよ」



 なぜかタクシーと言えば納得しちゃうようですよ。今度から何かやらかしたときはタクシーに教わったことにしましょう。まあ問題ないよね!



 ◆



 で、子供部屋の前に着きました。あまり遠くに行くと時間掛かるからね。


 もし部屋に僕がいないと気付いた両親が探しに来ても、ここならそれほど不審に思わないでしょう。夜中に起きて遊びに来たと思うはずですし。いざとなれば子供部屋にある布団の中で人間に戻っちゃいますよ。変身中の姿さえ見られなければ全く問題ないのです。



 では、しっぽを使ってドアを開けましょう。



「あーそーぼー!」

「「「「「――うにゃ?!」」」」」



 急に入ってきたら猫達も驚いたようです。どちらかというと、ぐるぐる巻きにされたシロ先生の方に視線がいっているように思いますが。



「みんなどうしたの?」

「……こんな姿の私を見たら誰だってそうなるわよ」



 本当にシロ先生の方に視線が集まっていたようでした。しばらくするといっせいに僕を見ます。



「あ、メンテじゃん」「もうびっくりした~」「驚かせないでよ」

「みんな驚かせてごめんね。今日は暇だったから遊びに来たの!」

「「「「「メンテ、あそぼー!」」」」」

「みんなで盛り上がってるとこ悪いけど、そろそろ私下ろしてよ……あっ」←シロ先生




 そのときです。


 机に乗っていた1匹の猫が走り出したその瞬間、物に当たりました。あれは花が入った花瓶です。花があると心が癒されるよねと机に乗せてあったのです。その花瓶が床に落下していきます。こんな危険な物を机に? そんなミスをする人なんてこの家には……。あ、よくミスするメイドが一人いたね。



「――あっ!?」



 そして、その机の下にはもう1匹別の猫がおり、僕の方に向かって歩いています。運が悪いことに、その猫の上に花瓶が落ちていきます。このままだと頭に直撃しますが、全然気付いていませんね。頭を強打するだけでなく、割れた破片を踏んだら怪我します。水浸しで部屋が汚れます。花も散っちゃいます。大惨事なのですよ。



 危ない!!



 落下する花瓶が、まるでスローモーションのようにゆっくりと見えます。これは僕の目が良すぎるからなのですがね。ちょっと時間があるので考え事をします。



 僕が本気でしっぽを伸ばせは、花瓶をはじいて違う方向に飛ばせると思います。ですが、僕のしっぽはシロ先生をぐるぐる巻きにしたままでした。今からほどいていたら間に合いません。シロ先生ごとしっぽを動かしても重いので間に合わないでしょう。この案は却下ですね。


 違う方法を考えてみましょう。僕が危ないと言ってもキョトンとして動きが止まるだけです。その結果、頭に花瓶が直撃するでしょう。他の猫に助けを呼んでも、もう遅いですし。これは僕が何とかするしかなさそうです。



 う~ん、何か手段はないのか……。ダメだ、このままだと直撃してしまう。もう時間が足りない。



 もし花瓶が割れたら猫達が悪者扱いされるよね。この花瓶って高いのかな? だとしたら猫達を怒って家から追い出すかもしれませんね。これはまずい。


 今この家にいる大人達には、しつけの出来た良い猫のイメージを持たせているのです。もし花瓶が割れたら猫達の努力が無駄になります。ついでに僕の教えたマナーも無駄になっちゃいますね。これだけは絶対に避けねばなりません。


 もっと最悪の可能性を考えると、猫の友達が遊びに来ることもペットを飼うことも難しくなるかもしれません。その影響で僕は……って今それを考えている暇はなさそうです。



 もう時間が足りません。ああああああああああ、どうしよう????






 ……仕方ない。爪でも伸ばしますか。






 ビュィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!






「「「「「「――――にゃ?!」」」」」」



 伸びた2つの爪で花瓶を掴みとります。白刃取りみたいにね。はじいたら水がこぼれちゃうから掴むのがベストだと思ったのですよ。これでなんとか花瓶の落下も頭への直撃も阻止出来ました。ではゆっくり元の位置に戻しましょう。明日になったらこの花瓶邪魔だよアピールしなきゃね!



「ふぅ。なんとか間に合ったね」

「「「「「「……」」」」」」



 みんな驚いた顔をしていますね。爪を数メートル伸ばしただけなのにどうしたのかな? もう危機は去ったはずですが……。



「ん、どうしたのみんな?」

「「「「「「それ何にゃ?!」」」」」」

「これ? 僕はただ爪を伸ばしただけだけど……」

「「「「「「それだにゃ!」」」」」」

「え???」



 猫達が慌てています。急にどうしたのかな?



「「「「「「――爪が光ってるにゃ!」」」」」」

「そりゃ魔力で作った爪だから光るよ」

「「「「「「光るの?!」」」」」」



 これトマト兄弟のトマ兄の真似をしただけなんだけどね。イブシじいじに”ウインドネイル”とか言ってたあれを参考にね。ん、そういえば魔法だったような……?


 ※詳しくは90話の「噂の新人冒険者 その8」






 あれれ? 僕、魔法使えたっけ???






「ギ、ギフトーッ!」




==========

【 】

 年齢 1歳

 性別 男

 称号 なし


 所持スキル

 ・暴走

 ・猫魔法 new

 ・エッグ new

==========



「え? いつの間にかエッグ割れてる……」



 なんか見知らぬスキルが増えていましたよ。それに新しいエッグも追加されてるし。



 ……よし、ヘルプ機能でこの猫魔法を検索だ!



「お、出て来たよ。さすがヘルプは優秀だね! えっと何々、この猫魔法は”猫だけが使える魔法”を略したものです。読み方は決まっていません。自由に名付けてください。……え???」



 称号だけでなくスキル名まで自由にいじれちゃうってこと? 何だそれ?


 そのまま読むと猫魔法(ねこまほう)だけど、猫魔法(おっぱいまほう)とかに出来ちゃうのかな? これ絶対誰も読めないよ。例えがおかしいって? そこは気にしちゃダメだよ。




「ねえねえ、みんな猫魔法って知ってる?」

「「「「「「知らにゃい」」」」」」




 この猫魔法ですが、後にとんでもないスキルだと判明するのです。



だんだん力の片鱗を見せ始めます。

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