105話 「猫と交流する その1」
前回までのお話
猫の姿になる”変身魔法”で遊ぶようになった。
猫に変身したらシロ先生を気絶させちゃいました。
「ぱーーーーい!(シロせんせーーーーい!)」
「……はっ?!」
「え、えっぐぐ?(だ、大丈夫?)」
「今、夢でも見ていたのかしら……?」
「えぐえぐ(僕が猫になれること?)」
「……夢じゃないのね。てっきり冗談かと」
シロ先生は僕が猫に変身出来ることを冗談だと思っていたそうです。それにいきなり変身したのも原因ですかね。僕のスキルについて詳しく教えなかったのも悪かったと思います。ここは謝りましょう。
「うぐぅ(なんかごめんね)」
「別にいいのよ。記憶が飛ぶ体験なんてなかなかないわ」
「えっぐぅ~(詳しくはあとで話すよ)」
「そうね。私まだ信じられないわ。あとでゆっくり話しましょう」
迷惑かけちゃいましたね。これは何かお詫びが必要です。
「えっぐ、あぐぐぅ!(そうだ、僕のお家に来てよ)」
「メンテのお家?」
「えぐぐぐぐ!(飯でも食べってって)」
「いいの?!」
「ぱいぱーい(驚かせちゃったお詫びだよ)」
「じゃあ行こうかしら。みんなに言ってくるわ」
「えっぐ(後でね)」
シロ先生を家に招待しました。今日はじっくり猫についてお話したいですね。
「お前の弟すごいな。まるで猫としゃべてるみたいだ」
「メンテくんだっけ? 動物好きなのかな」
「そういえばメンテのスキルって……。いや、まさかね」
アニーキ―とその友達たちは、メンテとシロ先生の様子を不思議そうに見ていたという。
◆
教会からの帰りはベビーカーです。僕がシロ先生を呼ぶとベビーカーに飛び乗ってくれました。抱っこしながら帰りますよ。
「メンテちゃん? その猫ちゃんは人形じゃないのよ」
「えぐぅ」首ぶんぶん
「じゃあこの猫持って帰ったらー?」
「いやいや、猫は物じゃないからダメだよ。というか今日メンテと仲良く遊んでいた白い猫だよね? 俺の友達もびっくりしてたし覚えてるよ。人に懐いてるところを初めて見たってさ」
「そうなのね。でもメンテちゃん、その子もお家に帰りたいかもしれなわよ? ほら、ぎゅっとしないの」
「えぐぅ」首ぶんぶん
「困ったわね……」
僕がシロ先生を放さないため、みんな困っています。僕も困っちゃいました。しゃべれないせいで計画通りいきませんね。意地でいくしかありません。
「ごめんなさいね。うちのマネキが」
「いえいえ、悪いのはメンテちゃんなので」
この様子を見ていたマネーノ・キスイダさんがこの場を収めようとします。マネーノ・キスイダさんは、この教会で一番偉い人ですよ。そして、シロ先生を招き猫みたいな名前を付けている変なおばさんです。
丁度良いので利用してやりましょう!
「マネキはこっち来なさい。お客様に迷惑でしょ」
「シャー!」
シロ先生は、マネーノさんが近づいてきたら威嚇します。マネーノさんが手を伸ばして来たのでありえないぐらいぶち切れて爪で引っ掻きます。変貌っぷりが尋常ではありません。もちろん演技ですよ。……多分。
「いたっ?!」
「シャーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「えっぐ」スリスリ
「………ごろごろ」
僕がシロ先生の頭を撫でると大人しくなります。
「ミルク嫌そう」
「アリスすごい顔してるね」
「……かわいそう」
「いつもケーキちゃんはマネーノさんだけ嫌がってるよね」
「アニーキ―の弟はすげえなついてるのにな」
「僕もマネーノさん苦手……」
「しー、本人に聞こえちゃうでしょ」
周りにいる子供たちからは、シロ先生がマネーノさんを嫌がってるという言葉しか聞こえませんね。よし、いいぞ。もっと援護してー!
それにしてもシロ先生の名前に関してはバラバラですね。子供は自分の思い通りに名付けちゃうんだ。
あと誰かがマネーノさんを嫌いみたいなことを言ったような気がしますが、それは聞き間違いでしょう。基本的にお金の話をしなければ優しいおばちゃんですよね。ね?
「今日だけそのマネキさん? をお泊りさせてみてはどうでしょう。お世話は私達メイドにお任せてください」
「えっぐ~」←目キラキラ
「メンテ様も喜んでいますし、それになついているように見えますから」
「んー。そうしようかしら。どうメンテちゃん?」
「こちらも全然問題ありませんよ……」←引っ掻かれた手が痛くて涙目なマネーノ
「きゃきゃ!」
「フフッ、よかったわねメンテちゃん」
カフェさんのおかげで僕のお家に招くことが出来そうです。やったー!
「……これでよかったのかしら?」
「うぐぅ(完璧だよ)」
メンテの指示通りに動いたシロ先生。正直何が起きたのかよく分かっていないのである。なおマネーノが嫌いなので思いっきり引っ掻いたらしい。
「えっぐ~(今日は僕に任せてよ)」
「不安しかないんだけど……」
「うぐ(お肉)」
「メンテは頼りになりそうね」キリッ
おいしい食べ物があるなら何でもする。シロ先生はそういう猫である。
こうして僕はシロ先生を抱き枕にしつつお家に向かいました。いつも浮いてるベビーカーを見ていたシロ先生。これって乗るとこんな感じなんだ、ふふ~んとご機嫌でした。
猫魂をどんどん使っていきます




