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103話 「変身魔法 その2」

 僕メンテ。こっそりスキルを調べています。


 今のところユニークスキル”猫魂”は、猫の姿に変身することしか分かっていません。ただ、隠密性は優れていると思います。着ていた服も変身するとき一緒にぐにゃっとなるから体の一部と判定されてるんでしょう。思ったより使いやすそうなスキルだよ。


 有効的に活用したいので皆には秘密にしておきます!





「うえええええん!」

「メンテちゃんどうしたの?」

「うぐぅ」すりすり



 僕は寝る前に兄貴にくっ付いています。



「えぐぅ~」

「メンテ、もう寝る時間だよ?」

「うえええええええええん!」

「困ったなあ。全然離れないよ」

「今日はアニーキ―がいいの? それなら今日は一緒に寝たらどうかしら」

「ちょっと、母さん何を言って……」

「きゃきゃきゃ!」

「ほら、元気になったわよ」

「……そうだね」



 今日は兄貴と一緒に寝たいのアピールをしたら成功しました!



「もうしょうがないなあ」

「きゃきゃ!」

「でも泣いたら母さん呼びに行くからね。どうせ原因はおっぱいだし」

「えぐえぐ(泣かないよ)」

「フフッ、メンテちゃんは泣かないって言ってるわよ」

「本当かなあ……」



 さすが母です。僕のことを理解しています。というわけで今日は兄貴のお部屋で寝ますよ!



 ◆



 アニーキ―の部屋。



「じゃあ寝るよ」

「えっぐ!」

「あっちがメンテね。寝相ひどいから落ちないように壁側だよ。俺はこっちでいいよね……」

「ぐぅ~」

「はやっ?!」



 メンテは赤ちゃんなのですぐ寝ちゃうのだ!



「……俺も寝よう。メンテお休み」

「すぴ~」



 こうして二人は眠りについた。そして、深夜になってメンテは動き出した。



「うぐぅ~(猫魂)」



 僕が唯一使える魔法である”変身魔法”で華麗に変身します。今日は音も光も出しません。スピードだけを求めましたにゃん。


 ちなみに変身の途中に魔力を使っても演出は変更出来ます。でも中途半端になるせいか、煙や光で姿を一瞬だけ見えなくするぐらいしか出来ませんがね。これは見つかりそうになったときの緊急時に使いたいと思います。



「にゃあ……」



 僕は兄貴の部屋を見渡します。やっぱりそこらじゅうに物が散らかっていますねえ。でも歩けるので問題はありません。


 今回の目的は、スキルと魔法についての調査です。


 両親の部屋にはそういう本とか関連する物はありませんでした。猫の姿で部屋から出ようとしたけどドアに手が届かないのも問題でしたね。そこで兄貴を利用してここまでやってきたのです。ここなら僕の調べものが見つかりそうだしね。



「にゃ(行こう)」



 僕はベッドから飛び降ります。兄貴はぐっすり寝ていますねえ。もし見つかっても兄貴が寝ぼけてたと押し切る予定です。



 ごてっ!


「……にゃあ(いてっ)」



 てってと歩く僕の前足に何かがぶつかりました。この丸い物体はゴミ箱ですね。兄貴の部屋は元から汚いので、これぐらいなら問題ありません。



 がすっ!


「……にゃあ(うわっ)」



 再び歩きだしたところ、今度は足が服の上に乗ってしまいました。滑ってびっくりしましたよ。邪魔ですねこれ。


 少しイラっと来たので服をゴミ箱に突っ込みます。これも問題ありませんね。気持ちもスッキリです。


 そこから10歩ぐらい歩くと今度は鞄が前に落ちています。中身を確認したけど僕が気になるものはありませんでした。うん、なら邪魔なだけですね。どんだけ物が落ちているんですか。この部屋は普通に歩くだけでイライラしますよ。



「……にゃ!」



 いいことを思いつきました。これで爪の威力をチェックしましょう!



「にゃにゃ~!」ガリガリ



 少しだけ鞄に傷が出来ました。さすが猫ですね。爪は本物でした。やりすぎると僕の正体がバレる恐れがあるのでここまでにしましょう。



 まあ別に何も問題ありませんね! 僕の仕業ってバレるわけないもん。にゃっはは~!



 時間は掛かりましたが本棚の前に到着出来ましたよ。



「にゃあ……(高いなあ)」



 この姿で本棚を見上げると高く感じますね。とりあえず下の段から順番に見ていきます。下の方に僕が読みたい本はありませんでした。上の方にあるのかなと思って、少し離れた位置で本を探します。多分あそこかな。



「……にゃ(届くかなあ)」



 えいっとジャンプしますが届きません。



「にゃにゃ!(魔力!)」



 僕は力を込めると一瞬だけ力が使えます。多分ですが身体強化系統の力だと思います。魔力が出た瞬間だけ五感がすごいことになるからね。でも魔力を使うとすぐ疲れるので数回しか使えませんよ。これは人間でも猫のときも同じです。僕はまだ体から魔力出すだけで精一杯なんだよねえ。


 シュッっと高く飛ぶと、本棚の真ん中あたりにたどり着きます。あ、勢い余って本の上に乗ってしまいましたね。本の手前側はスペースがあると思ってました。でも飛び乗ったこの段にはスペースがないどころか本が不規則に倒れていたのです。下の段はスペースがあったので騙されました。ごちゃごちゃと汚い本棚ですな。


 これは兄貴が本を片づけないから起きた事故です。そのせいで僕は本と一緒に落ちそうになりました。兄貴。ちゃんと整頓してくれよと思いましたが、今はそんな場合ではありませんね。



「にゃ?!」



 僕は落ちないようにバタバタと暴れます。そのたびに近くに置いてあった本が下に落ちます。これも整頓されてなかった本ですね。本棚にある本がどんどん床に向かって落ちていきます。やばい状況です。



 トダトダトダ!


「にゃ、にゃふ!?」



 結局僕も落ちてしまいましたが、下に落ちた本がいっぱいあったせいかそれほど高く感じませんでしたね。


 それとナイス着地でした。全然痛くなかったですよ。猫の身体ってすごいね!



「ん~? んん……」



 物音で兄貴が起きそうです。大変だ!


 僕はダッシュでベッドに戻って変身を解きます。それから兄貴にくっついて寝ました。ずっと一緒に寝てたでしょ~? とね。



 ◆



 そして、朝。



「うぐぅ?」



 まだ兄貴は起きていませんでした。僕は赤ちゃんなので起きるのも早いのですよ。


 そうだ、戦利品でも見よう!


 僕はゆっくりとベッドから離れて本棚の下に向かいます。そこには本の山がありました。



「きゃきゃ!」



 よーし、スキルを調べるぞ~!





 ……30分後。



「ふあ~、朝かあ」



 ガサガサ。



「……なんの音? あれ、メンテ?」



 アニーキ―はベッドにメンテがいないのに気が付いた。そして、音のする方向を見ると……。



「うわああああああああああああああああああああああああああああ?!」



 寝る前よりひどく物が散乱した部屋、それから積み重なった本の上で楽しそうにしているメンテ。すぐに状況を認識し、この部屋を荒らした犯人目がけてアニーキ―は走り出した。



「こらー、メンテーーーーーー!」

「きゃきゃ!」



 この後、アニーキ―はメンテが勝手に部屋を漁りまくっていた事を両親に報告した。アニーキ―がダメでしょと怒ってもメンテは悪意のないピュアな瞳で見つめてくるだけで言葉を理解してないふりをするからだ。反省させるには親の力が必要である。


 だが両親には面倒を見なかったアニーキ―が悪い、起きるのが遅いからだと逆に怒られた。まさに年上の子が理不尽に怒られるあれである。



 それからというものメンテはアニーキ―のお部屋に遊びに来るようになる。メンテは毎回お兄ちゃん大好きなのアピールをするため、ついつい騙され甘やかしてしまうアニーキ―であった。



ごみ箱あたりから暴走してます。

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