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変に恋な画家

前振りは無い!

本編をどうぞ。

 水中から頭を飛び出し、巨大な体躯を現したシミーナの姿に4人の少年少女は圧倒される。

 無理もない。巨人級の存在を生まれて初めて目の当たりにしたのだ。首の皮に皺ができるほど頭を上へ向けてようやくその顔が見える。ただ逆光で彼女の表情は薄影に隠れ見え辛い。もうひとつ彼女の顔を見辛くしているものがある。なんでしょうか?――胸だ。

 キック、ショーコ、テンテコ、ユキの4人の目と見上げるシミーナの顔の間に、シミーナの胸がそびえ立っているのだ。そびえ立つというだけあって相当大きいバストである。薄影どころか濃い影がその双丘を黒く彩り、そして薄い白色の生地が水を含んでほとんど乳白色の肌色へと透けて、色替え色混ざりながら濃い影の黒と3色で大きく豊かな女性の双丘の存在を見せつけていた。

 と、ここでキックとテンテコの少年2人組がシミーナから目を逸らした。テンテコは横に顔を手でズラしたが、キックは下に俯き手をズボンに当てる。シミーナを見上げながら横目をやってその挙動を確認したショーコとユキも納得する。


 なぜなら、実はシミーナの胸に見えていた色はもうひとつ。双丘の天辺に乳首を表す限りなく薄めたピンク色が見えていたからだ。これは”おっき”しちゃうわよね――少女2人組は少年2人組の性の反応に鼻から息を吐いて溜息の代わりとし、ショーコはキックの頭を撫で、ユキはテンテコの肩に手を置いたのだ。


 その様子を真上から見下ろしていたシミーナ。両手を口元に寄せてはしゃぐように口を開く。


「キャアーッ。なーんて素敵な子達なのかしら。リーリパーミィったらいい情報(ニュース)をくれたものだわ。この子たちの力になれるなんて……あっ、反応しちゃうかも」


 何が反応するのか――4人は訊かなかったが、察しはついていた。目の前で嬌声を発しながらシミーナもまた片手を水の中に突っ込んでいたからだ。覗き込んだりしませんよ。それはいけないことですからね。


 やがて顔を上気させていたシミーナが落ち着きを取り戻したところで、再度その巨体を少年少女たちに向けてくる。そしたらいきなりこう告げたのだ。


「チョーット場所を空けておいてね。今からワタシ、縮むから」

「はぴっ?」


 思わず口が滑って「はいっ?」と言えなかった4人組。それに構わずシミーナは頭の金髪に引かれるように上半身を大きく仰け反らせる。その最中完全にシミーナの頭から先は巨大な胸に隠れてしまう。

 ――とおもったら、その胸がとつぜん縮小小さく収まりはじめた。胸だけじゃない、腰回りも腕も、彼女の身体全てが巨体の名を外すように小さくなりはじめていたのである。

 そして最終的にはびっくり、シミーナの大きさはショーコやユキより少し背の高いお姉さんほどにまで収まり、今まで水の中にあった足もスカートも現れた状態で水上にその足を着けて立っていた。4人の少年少女たちの、すぐ目の前の水面の上に。


******


自分達――というより人間(ノッポ)達と同じ大きさになったシミーナは祭壇の中央のテーブルに4人を案内し、来客用の珍しい果物と美味しい水で歓待し更に自分の身の上についても話す。なぜ大きいのか小さくなれるのかなどを説明してくれたのだ。そんなことがあるのかと聞いた4人は吃驚呆然、その一方であのリーリパーミィもその一件でシミーナと接点を持っていたことが分かり、腑に落ちるものもあった。だから天の国(アーザ)への道中最初に通ることになる此処海の国(ノア)で自分達のサポートとしてシミーナを紹介してくれたわけか――多感な年頃の少年少女たちの胸中に、スッと抜ける筋道ができた。空っぽで風が通り抜ける、気持ちのいい筋道が。


 世間話はそこそこそこに長引きそうになった時点でシミーナの方から打ち切った。「ヨルまでにはメルキオルに入城しとかないといけないわね。だったら急がないと」と手を合わせて呟き、祭壇の壁の影に向かってその手をパンパンパパパンとリズムよく叩く。

 すると壁の奥から空飛ぶ絨毯が糧食が詰まった保存箱と旅に必要な火と水の用具一式を上に背負ってシミーナと4人組の傍へと空を飛んで寄ってきた。

 まるで意思を持っているのか絨毯はその身体を波打たせたり小刻みに皆の周りを飛び回ったりするその様はペットっぽい。子犬か子猫か……。


「コノ娘は子絨毯。この間糸の国(シルー)の行商人から買った子なの。広い世界を見せてあげたかったからリーリパーミィのオファーは渡りに船で帆に風だったわ。旅用品と保存と収納に優れた糧食を1ヶ月分を載せてあるわ。是非旅のお供に連れってあげて」

「は、はあ……」

 旅の必需品を貰えるとはリーリパーミィから聞いていたが、まさか生きた絨毯が付いてくるとは――何度度肝を抜かれるのか。返しの言葉を出せたのがユキだけでショーコもテンテコもキックも飛んで寄ってくる空飛ぶ絨毯から目が離せずに息も忘れそうなんだから。


「ア、名前つけてないのよその子。つけてあげてねお願いね。ちなみに女の子よ、人格は」

「はいっ!?」


 シミーナから続け様に放たれる衝撃のガトリング。今度はテンテコが覚醒してツッコミを返す。名前が必要ということはやっぱり生きているということか――太陽がふたつの世界(デュアルサンツインズ)の凄さの《量》に、頭がパンクしそうになる。

 しかしお願いされた以上つけてあげないわけにもいかない。そこでようやっとのこと喋れるまでに回復したキックとショーコを交えて4人、密に寄ってヒソヒソボソボソ。いくつか案を挙げては消して、ようやく候補がひとつに纏まった。


「決めました。この子の名前は令和(ぴゃれれ)とします」

「ピャレレ? あら〜いい名前じゃない。どこから取ったの、教えてよねえ〜」

「オレらの世界、太陽がひとつの世界(ワンサニーライト)で俺らが住んでる国の元号からつけたんだ。ピッタリだろ?」

「エエ、とてもいい名前だわ! じゃあワタシとピャレレも車に乗り込んでメルキオルの入城まで一緒に……と、言いたいところだけどもうひとつ。個人的なお願いがあるの〜。門限まではまだ時間あるし、キックちゃん、テンテコちゃん、絵のモデルになってくれないかしら?」

「いいですわ。ね、キック、テンテコ」

「なんでオメーが答えんだショーコ。ま、いいことには変わりねえけど」

「オイラもいいっすよ。ってか、シミーナさん、画家なんすか?」

「エエ! 何を隠そうこのシミーナ・トゥーラ、男の子の情念と絡みを描かせたらこの世界でも3本の指に入ると評判! 特に描画速度は世界一なんだから! じゃ、早速服を脱いで頂戴ね」


「――えっ?」キックとテンテコがハモる。

「ダ、カ、ラッ、男の子の筋肉と肌と骨と影が浮かび上がらせる魅力と2人の絡みによる情念の世界! それを描きたいのよワタシは!」

「脱ぐの? 此処で? 全部?」

「ゼンブ」


 テンテコとキックから血の気が引いた。モデルってヌードモデルだったの――てかシミーナさんってBL、腐女子なのとか色んな思索が頭を埋め尽くししばらく行動を起こせないでいた。

 が、そんな少年2人に少女2人が喝を入れる。ショーコがテンテコの服を、ユキがキックの服を剥ぎ取りだしたのだ。強引に。無理矢理に。

「なーにを恥ずかしがっているのですテンテコ、キック。わたくし達といつも一緒にお風呂入っているじゃありませんか。今更シミーナさんに恥ずかしがる必要なんてありませんわ。ねーユキ」

「そうよーキック、テンテコ。裸でいられる人間になる――これがわたしたちの目指す人間像でしょう? これはその為の試練、甘んじて受けなさい! 女の言うことは聞くものよ」


 勝手も身体も知ったる仲間に服を剥ぎ取られ、キックとテンテコは一糸まとわぬ姿でポン。最初のうちは身体を前のめりにしていた2人だったが、段々と吹っ切れたようで遂には勢いよく姿勢を正す。


「よっしゃあそうだ! 男に隠し事は似合わねえ! ありのままを凄腕の画家に描いてもらおうじゃねーかテンテコ!」

「乗った。つまりお前は下、オイラが上だぞ」

「どっちもこいだぜ!」


 開き直ったかのようなヤケクソぶりで、勢いよく決意を捲し立てるキックとテンテコ。すでにシミーナは画材一式を用意して待機している。腹を括った少年2人は果物と水コップを持ってテーブルの更に奥に位置する祭壇の踊り場へと向かっていくのであった――。

終わりに言うこと。

読んでくれて感謝。

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