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目指す場所は天の国

前振りは無い!

本編をどうぞ。

「つまり、私達が乗っていたあのミニワゴンは死者の国(アフタス)から死ぬべき人を連れてくる為に送られてきた棺の車。だけど手違いで本来の目的地である太陽がふたつの世界(デュアルサンツインズ)じゃなく、私達が住む太陽がひとつの世界(ワンサニーライト)の、神室村の森に来て機能停止していた。それを私達がが乗り込んだはずみで再び動き出して本来の目的地であるここに跳躍(ジャンプ)したってことですね」


 リーリパーミィからの状況説明を一通り受けた後。

 4人の中では一番解説役に適したユキが両手の十指を一本二本と顔の前で折ったり立てたりしながら、聞いた説明を反芻して確認する。この騒動の大元はあの車の秘密にあったのだと、結論付ける。


 するとリーリパーミィは拍手と同時に身体の色を浮かぶ白から赤に変えて、いきなり飛び回ってしまった。風船飛ばすに似た動きで、書斎の中をあっちへこっちへ行ったり来たり。まるでコントロールがなってない。そういうとこが野球場で一斉に飛ばす風船にそっくりなのだが。無軌道無計画のお手本だ。


 正直訳わからんリアクションだが、4人の中でも着眼点の広さにかけて随一のテンテコがボソリ呟く。

「パーミィ師匠、興奮してくれてんだな……」

「あ〜、なるほろ」

 残る3人も納得する。そして本人も肯定する。涙混じりにだ。

「そう! アタシとっても嬉しいのよ。こう言ったら傲岸不遜だけど、世の中おつむの足りない連中ばかりでね〜。アタシの言うことを聞き取ることもできない奴の多いこと、ったら多いこと! そんな世の中に辟易しているのもここで結界張りながら隠棲している理由なんだけど。ああ! 今日はなんてすーばらしいひでありましょう! 異世界の太陽がひとつの世界(ワンサニーライト)からやって来た少年少女がいとも簡単に理解してくれたなんて……嬉しくって、うーれしっっくってー謳いたくなるような気分だわね!」


「歌ならオレ達だって歌えるぜ。バンドで音楽やってたからな!」

 リーリパーミィの締めの台詞にキックがすかさずパスを送る。したらばパーミィ師匠はなお感激した御様子で、体色を白に変えてキックの頭の上に飛び乗り、「よく言った、よく言ったわよ!」とキックの頭を短い手でペチペチ叩くのでありました。その様子を羨ましそうに見ているのはリーリパーミィのような可愛い生き物大好きなショーコ。一瞬の内に気配を消してキックの背後に回り込むと、キックからパーミィ師匠を取り上げて、自分の頭へと引っ越しさせる。「あら?」と呆けるパーミィ相手に「お師匠様にはわたくしの方が相応しいですわ。さ、どんどんお叩きください」とナチュラルに言い放つショーコ。パーミィは少々悩んだ後、乗っかっているショーコの頭を叩く――のではなく、そっと頭ごと寄っかかって。そして――。


 チュッ♡


 時にPAUSE(一時停止)場にLIGHTNING(ショート電流)。リーリパーミィからの親愛表現と捉えて差し支えないキスを貰ったショーコは仲間のキック、テンテコ、ユキから見て目に見えてわかりやすく恍惚の表情に、至福の時を感じていました。羨ましくはないけれど、気持ちよさそうなのはいいなと3人はちょっと顔を傾け顔半分に影をつけながら、薄く笑うのであった。


 ともあれ、リーリパーミィの説明を呑み込んだキック、ショーコ、テンテコ、ユキの4人は何をすべきか大体わかった。ユキが両手を叩く――のではなく、音もたてずに合わせて発言。

「やるべきことは分ったわ。このミニワゴンこと棺の車を乗せるべき人のとこに持ってけばいいのね。行きましょ、テンテコ、キック、ショーコ」

「了解だ」「合点だ」「合流でーす」

 ユキのとった音頭に3人もフラメンコでも踊りだしそうな調子で手を叩き、ささっささっさと支度をする。リーリパーミィの家から車へと戻り、ショーコも頭からパーミィ師匠を下ろして別れの言葉をひとつ。運転席にはキックが乗り込み、後へ続けと残りもドア閉め。リーリパーミィから教えられた運転呪文(キーコード)をキックが唱えた途端、エンジンが起動し、車は運転可能な状態になる。

 

 いざ出発――となる前に、4人は車の窓を下ろして首を外へ出し、リーリパーミィに別れの挨拶。

「色々教えてくれてありがとさんした、パーミィ師匠。じゃあオイラ達、天の国(アーザ)に行ってきますわー」

「ええ。行ってらっしゃいな。少しは同行してあげたかったけど、何分世から逃げ隠れている身分でね。一緒に行ったらきっと厄介事増やしちゃうでしょうし、無事を祈ってるわよ」

 浮かんだまま短い腕を左右に振るリーリパーミィに、4人は右手左手窓に出る手を直角に頭に添えて無言で笑う。手を戻してハンドルを掴んだキックがマニュアルトランスミッションをバックに入れて、アクセル踏むと同時に、すでに踏んでいたクラッチをゆっくり離す。


 ミニワゴンがバックする。キックのハンドル捌きでターンしながらに。

 そして正面を外の世界に向けると、ギアをバックから前進1速に切り替え、再度アクセルとクラッチ操作。

 勢いよく、車は結界を飛び出した。


 その様子をリーリパーミィは車をぶつけられて開いた壁の穴から浮かんだまま、穏やかな目で見届ける。

「若いっていいわねぇ。こうしちゃいられないわ。アタシもやることやってから、あの子たち追いかけないと」

 後から合流を示唆する言葉を呟くリーリパーミィの姿は、どことなく達観した、悟りを開いた至人のようだ。彼女は体色を元の橙色に変えてからせっせと瓦礫と本の整理。

 勿論全て、魔法でね。

終わりに言うこと。

読んでくれて感謝。

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