第九話 数は力なり
スタミナの切れかかったイチカに代わってニコが戦闘を開始する。
だが、代わって入ったニコもイチカと同じように力の差が歴然。これがURとNの違いなのか。
ウラヌスの模擬刀がニコの肩に当たる。苦痛に顔をしかめるニコ。苦し紛れに剣を振り回すがほとんどがかわされてしまう。辛うじて当たった攻撃もそれほど有効打にはならない。
「もう二人目も弱ってきているぞ、どうする、また交代するかぁ?」
カンペオンが挑発してくる。
だが確かにこのままだと耐えられなくなるのも時間の問題だ。
「おいレセプ、交代できる人数は制限されているか?」
「いえ、何人と交代しても構いません」
「何人と交代してもいいんだな」
「ハーッハッハッハ!何人交代しようが、俺様のURには勝てないがなあー!」
調子に乗ったカンペオンがたたみかけるように煽ってきた。
「よし、ここで交代だ。ニコに代わって、残りの八人を出す」
「ほえっ?」
「何人と交代してもいいというなら、八人と交代してもいいってことだろ」
「そんな、模擬戦は一対一で……」
「どうなんだ、レセプ。ギルドのルールには必ずしも一対一であるようにと書かれているか?」
レセプが手持ちのルールブックを検索する。
「いえ、模擬戦には集団戦闘もありますので、一対一が必ず、とは規定されていません。ですので……問題はありません」
「なっ!」
レセプの解答にカンペオンが驚く。
「ルール違反でないのなら構わん。さあお前たち、あのいけすかないURをタコ殴りにしてやれ!」
「はいっ、ナツ様!」
俺の指示で残りの八人がニコに代わって戦闘を始める。
多勢に無勢、ウラヌスが反撃しようにもその隙にこちらの攻撃が当たる。そうなるとウラヌスはまた攻撃のために構え直さなくてはならない。威力はでかいが予備動作が重いウラヌスは攻撃しようにもダメージを受けると攻撃の動作が中断してしまう。
八人もいれば余裕なんて与えずに次から次へと攻撃を繰り出して、結果として相手の攻撃を封じることになる。
ウラヌスは攻撃をかわすどころか模擬刀と腕でガードを固めるだけで精一杯。
攻撃は最大の防御とはこのことだ。
「そのままたたんじまえ!」
地味だが確実。
一旦攻撃のパターンができてしまうと、あとは一方的な戦闘になる。
こちらの与えるダメージが軽微だとはいえ、何回も繰り返し与えていけば、どれだけ強靭な戦士でも耐えられない。
見る間にスタミナを奪われていった。
最後に軽く小突いたチョップでウラヌスが目を回し寝倒れる。
「勝負あり!」
レセプが決着を宣言した。
「ウラヌス戦闘不能につき、勝者、ナツ・シング様!」
俺はこの危ない橋をついに渡りきったのだ。