第五話 十連して出たのは十人
今までカンペオンのハズレガチャで何度も見てきた光景が目の前にあった。
普通で無名の家事手伝い。
俺の一人目のガチャ人。
「よし、気を取り直して次行くぞ!」
気合いを入れ直してルーレットを回す。
ルーレットが止まる。
次に出てきたのは青い髪の女の子。
「私、ノーマル家事手伝いです。よろしく」
「次だ次!」
黄色い髪の女の子。
「私、ノーマル家事手伝いです。よろしく」
緑の髪の女の子。
「私、ノーマル家事手伝いです。よろしく」
ピンクの髪の女の子。
「私、ノーマル家事手伝いです。よろしく」
「私、ノーマル家事手伝いです。よろしく」
「私、ノーマル家事手伝いです。よろしく」
「私、ノーマル家事手伝いです。よろしく」
「私、ノーマル家事手伝いです。よろしく」
九連ノーマル。Rすら出ない。
「まあ落ち込むなって。まだあと一回残ってるんだろ?」
ドウグラスが俺の肩を叩く。
他の冒険者はもう俺のガチャには興味がなくなったのか、カンペオンのガチャ人ウラヌスに声をかけたり、自分のテーブルで酒を飲んでいたりした。
「最後、最後だ。俺の十年、十年がこれで溶ける……」
震える手でルーレットを回す。
回る回る、ルーレットが回る。
もはや作業になってしまったストッパー。
速度が落ちていく。ゆっくり、ゆっくりと。
「そろそろ十回目が決まる……」
それでも可能性があるのなら。
「高レアが出ますように、出ますように」
ルーレットが止まろうとしている。矢印の先が指すエリアは、この先だとRが広めに置かれている。少なくともRか。ゆっくりなルーレットがそのRのエリアをゆっくりゆっくり超えていく。
息を止めて見守る。
矢印の先が、ほんの細い線にさしかかろうとしていた。
「L……レジェンドなのか……」
矢印はLの線に触れようとする。ルーレットは限りなくゆっくりに回って、いつ止まってもおかしくない。
「L、L、L……!」
止まった。ルーレットが止まった。矢印の指すその先は……。
「私、ノーマル家事手伝いです。よろしく」
Nだった。
十連ガチャをやって出てきたのはNが十人。Rすらも出ない。
そこまで俺の運はなかったのか。どこで使い果たした? カンペオンがURを引いたからか?
俺の頭の中で考えがぐるぐる回っていた。
「ま、残念だったな」
ドウグラスが俺の頭を軽く叩く。
今の俺には何の気休めにもならなかった。慰めるくらいなら高レアよこせ、課金する金をよこせ。それが俺の素直な心情だった。