第四話 ガチャ初体験
その後カンペオンがガチャを回したが、高レアリティのガチャ人はURのウラヌスだけだった。
Rはそれなりに出たものの、結局のウラヌス以外の九九人にはガチャの世界へ帰ってもらったようだ。
ただ、ガチャ人は自分の世界へ帰る時に合成珠という宝珠を召喚者に贈る決まりになっている。合成珠は他のガチャ人に与えると、そのガチャ人を成長させる効果があるらしい。
「まあURが残ったからよしとするか」
満足そうだが少し残念なようにも見えるカンペオン。それでもURを引き当てた強運には誇らしげだった。このギルドで召喚されたURはこれで三人目らしく、長いギルドの歴史の中でも珍しいことだったようだ。
「よし、俺も挑戦してみるか!」
あんなのを見せられては、俺もやってみたいと思うものだ。
「えっとナツ様、ガチャやるのかな?」
「おうさ!」
「一回百ゴルドだけど、何回やる?」
受付嬢のまっすぐな瞳が俺を見る。
俺は鞄の中に入れていた金袋を取り出すとカウンターに乗せた。
「ここに千ゴルドある。十連ガチャだ!」
カンペオンの百連ガチャに比べればしょぼいかもしれないが、それでも俺が十年貯めた金だ。これで高レアの仲間を引き当ててやるぜ。
「おいおいナツ、いいのかよ。見たところ装備もたいして用意できていないようだが」
言われてみればそうだが、それよりも俺はガチャに賭ける。
「見てろよ、俺はレジェンドを引いてやるからな」
「ほほぅ、それは楽しみだぜ」
期待しているのかからかっているのか、ドウグラスがにやにやと笑いながら俺とルーレットを見ていた。
「さあナツ様、数え終わりましたよ。確かに千ゴルドいただきましたので、それでは十連ガチャ、行ってみよう!」
受付嬢の掛け声と共に、またギルドの中が騒がしくなる。
「ようし、いっけぇ!」
勢いよくルーレットを回す。
回る回る、ルーレットが回る。
俺の一年分の稼ぎがこの一回のルーレットに変わるのだ。
「出ろ出ろ出ろっ!」
ストッパーをかけてルーレットが減速する。
どこで止まるか判らないが、Rとか出そうな気がした。もしかしたらSRとかも……。
俺は期待に胸を膨らませて回転するルーレットを凝視した。
「出ろ出ろ出ろっ!」
俺の念と野次馬のはやしたてる声。
ゆっくりと、ゆっくりとルーレットが動きを止めた。
その矢印が指す場所は。
「ノーマル……」
肩を落とした俺は、召喚の扉に手をかける。
控えめな光の渦から現れたのは、赤い髪の女の子。
「私、ノーマル家事手伝いです。よろしく」