第二話 百連ガチャ
冒険者といえば旅を共にする仲間が大切だ。共に笑い共に泣く仲間が。
「でも、仲間ってギルドで募集するとか……じゃないの!?」
「それもあるけど、うちのギルドは……これっ! じゃじゃーん!」
俺の目の前に置かれたのは大きなルーレット。ルーレットを回して矢印の止まったところがその結果になるというやつだが、そこに書かれていたのはNからLまでのいくつもの文字。
「これはねぇ、ガチャルーレットって言ってね、出たレアリティのメンバーが仲間になるっていう超絶便利なアイテムなんだよ~」
「そうなのか。N、R、SR、UR、それにLって、これは何の意味があるんだ?」
「えっとね、Nはノーマル。一番出やすいけど能力もそれなりな仲間。Rはレア。少しは能力値も高くなるし成長率もいいよ。次がSR、スーパーレア。なかなか出ないけど強さは一級品ね。そしてURはウルトラレア。もう滅多に出会えないけど、仲間にできたら頼りにできること間違いなし! そんでもって最後はL、レジェンド。これは伝説級というだけあって、私もまだ見たことがないくらい珍しいレアリティで、それこそ魔王だって倒せちゃうかもしれないポテンシャルを持った仲間ね」
すげえ。Lなんて出たら俺の冒険も楽勝かもしれない。
ただ、ルーレットのLの幅はかなり細い、もう線に近いくらい細い幅だ。確かにこれではほとんど出ないだろうな。
「今なら一回百ゴルドだけど、どうする?」
「ひゃ、百ゴルド!?」
百ゴルドって言えば俺が村で一年働いてようやく貯められる額だ。
俺は村を出る時に、家財道具含めて一切合切処分して金に換えた。その額千ゴルド。六歳の頃から働いて貯めた、十年分の稼ぎだ。
「LとかURとか、どんな奴が出るんだ?」
「そうだよね、説明だけじゃ判らないもんね」
そう言って看板娘はギルドの壁を指さす。
入った頃は把握していなかったが、よく見ると様々な人の肖像画が壁に掛けられていた。
「どれも綺麗な女だったり、強そうな男だったりするなあ」
「彼らがうちのギルドで出たSR以上の仲間だよ」
説明途中で呼び鈴が鳴る。
「あ、ちょっと待ってね。ガチャやりたくなったら声かけてね。はーい、お待ちどー」
受付嬢は呼び鈴を鳴らした冒険者のところへ飛んで行く。
「え、ホント!?」
受付嬢の驚きと共に、ギルド内が一瞬静まりかえる。
「本当だとも。俺様が冒険者になるというんだ、百連ガチャをやってやるさ!」
新参者の言葉がギルド内に浸透していく。
それと同時に段々と騒がしくなっていき、いつの間にか大歓声がギルドを満たしていた。