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第3話 <賢者>との出会い

ブックマークして頂いた方ありがとうございます。

今回で仲間になる賢者とあと一人仲間にして、しばらくはお話が続く、予定です。


宜しければ、

ブックマーク、感想、評価どうぞよろしくお願いいたします。


どうしようどうしようどうしようどうしよう!!



<勇者>の【スキル】が意味が分からないものであると判明し、混乱していた僕はキャラ崩壊甚だしい(諦めてしまった)オネスト様が仰った通り、<王>様への面会を求められてしまった。

断るわけにもいかないため、当然向かったのだがそこで多くの国の重鎮の方々に見守られながら<神官>様に大層大仰なありがたい話を聞かされることになる。


使用している言葉が難しいこと以上に内容が頭に入ってこない。

僕が手に入れた【スキル】は【勝手に住処に侵入しても怒られない】と【勝手にタンスを漁り中身を取っても大丈夫】だ。

これがバレてしまったら、僕が使い物にならないと知られてしまったら、次の<勇者>を見つけるために殺され……嫌だぁぁぁ!!


僕の内心など誰も分かるわけもなく、玉座の間での話は進み続ける。

唯一の頼りの綱であるオネスト様は我関せずを貫いてるし……。


「――以上となります。<王>よ。新しき<勇者>へ御言葉を。」


「…………う、む。」


そうこうしている間に<神官>様の話が終わる。

返事をされた<王>様なのだが、……大丈夫だろうか。高齢だということは知っていたが、もう誰が見ても限界だと分かるほど身体は小さく萎れており、プルプルと震えてしまっている。

返事をされたので話は聞こえているんだろうけど、僕とは違った意味でちゃんと内容理解出来たのかな。

昔は当時の<兵士長>にも負けないほどの鋼の身体をお持ちの豪快な<王>様だったと言われているが、もう見る影はない。誰も年齢には勝てないのだろう。


「勇、者……殿。こちら、へ。」


「は、はい!!」


「良い、目だ……。未来を掴……む、意志の、籠った。」


そんなことはないと思います。


「そな、たであれば……、必ず、やこの国、いや、この世、界……を、救える、であろう。」


無理です。


「どう、か。そな、たの力を貸して、くれ。」


貸せるものがない場合はどうすれば宜しいでしょうか。


「そ、なたの、【スキル】を、おし、えてくれ、ないか。」


「え。あ、その。」


「どう、した……。」


言えるはずがない。あんな【スキル】をこの場で口に出せるはずがない。

言えば最悪殺される。でも、言わないとそれはそれで不敬だと言われるかもしれない。ああ、視界の端でオネスト様が早く言え、早く言え、と口パクされてる……。他人事だと思って、!


「<勇者>殿。<王>が問われております。お答えを。」


もう駄目だ。はやくしろよと周りの人たちが目で語っている。

諦めよう。良い人生だった。

ごめんよ、父さん。母さん。メリッサ。


「僕の【スキル】は。」


せめて、最初で最後だろうけど、1回ぐらい勇気を持って堂々といよう。

間違いでも、僕は<勇者>なんだから。



「【勝手に住処に侵入しても怒られない】と【勝手にタンスを漁り中身を取っても大丈夫】です!!」



――ざわざわ。


はい、死んだ。

もう周りの<大臣>様たちがざわざわしているよ。<神官>様に至っては、は? って口が空いて閉じてないもの。

なにそれ、意味わかんない。なんて声まで聞こえて、ってオネスト様ァ! 今の台詞はオネスト様でしたよね!? 自分は無関係を貫く気満々ですよね!!


「い……ま、なんと、言われ、た。」


「はい、<王>様……。【勝手に住処に侵入しても怒られない】と【勝手にタンスを漁り中身を取っても大丈夫】です。」


「そ、れは、誠……か。」


「……はい。」


「お、<王>よ! これは何かの間違いかと! かの<勇者>の【スキル】がそのようなものが、おい! こいつを連れてきたのは誰だ! 探しだ、」


「素晴らしい!!!」


「「「は?」」」


「その【スキル】は、その【スキル】はァ! あの、! 最古の、! 原初の<勇者>のみが所持していたという伝説の【スキル】!! <王族>にのみ伝わる古の伝説が甦った!!」


「原初……?」


「ふふふ……、勝てる、勝てるぞ……! あの憎き<魔族>共に勝てる、! 歴代の如何なる<王>も討伐することが出来なかった<魔王>を我の代にて遂に、! 永久なる平和をこの手に……! ふふ、ふふふ! くはははは!!!! はぁーーーっっ!!!!!」


――ぴかーん!


急に叫び出した<王>様が、謎の眩い光を身体から発し、僕らは何も見えなくなってしまう。

光が収まり、目の前に居たのは……。



窮屈だった服がはじけ飛び、弾けるような瑞々しくも荒々しい筋肉をむき出しに、黄金色に輝く肌と太陽要らずに輝く白い歯を持ち合わせた、身長は2mはあろうかと思われるムッキムキの大男になった<王>様であった。


「「「ぇぇぇぇえええええええ!!??」」」


「<勇者>殿!」


「ひゃい!?」


「そなたは素晴らしい! そなたが居れば必ずやこの世界を平和に導ける! そなたこそが希望! そなたは神より遣わされたこの世界の道標だ!!」


「あ、あの、、その、御姿……。」


「伝説の<勇者>が甦ったその時に、! 加齢などに負けていられるはずがない! 我とて闘おう! <王>として、この国を導こう! 他の国と手を取り合おう! その想いの前に、不可能などはなぁぁい!!!」


「あると思いますけどォ!?」


「病は気から! 元気があれば何でもできる! つまりはァ! 気持ちさえあれば誰でも若返る!!」


「絶対に無理です! 人間の限界があります!?」


「<王>よ!」


「む! どうした、我が愛すべき忠実なる頭脳、オネストォ!!」


「わたくしも<勇者>殿にさきほど初めてお会いしたその時より、<王>と同じ想いにございます! この方であれば、この世界を必ずや平和に導いてくれると!!」


「くははは! そうか! さすがは『翡翠の牢獄』の名を持つ男! 貴様には全てお見通しだったということか!」


「はっ!!」


ひっくり返ったァァァァ!!

この人手のひら思いっきり反してるよ!? もうねじ切れんばかりに手のひらがくるっくるしてるよ!

さっきまで僕を売る気満々だったくせに! 自分の被害が来ないようにしまくってたくせに!

え!? なんですか、視線で語りかけてこな、さっきまではごめんちょ? なんだよこの人ぉぉおお!!


あ、待って!? 他の<大臣>様や<神官>様までこの空気に飲まれて拍手し始めてる!?

待って! 待ってください! 違うんです! 皆さん冷静に考えてください! あの【スキル】が大昔の<勇者>様と同じだったとして、それでどうやって戦えって言うのですか!? 落ち着いて考えてください! 無理でしょう、どう考えても!!


「民へ知らせるのだ!! 原初の<勇者>復活を! この奇跡を! 民へ! この国、いや、この世界の全てに知らしめるのだァ!!」


「「おおーーーっっ!!」」



やぁぁぁめぇぇぇてぇええええええ!!!!!



……。

…。


「でもぶっちゃけ、どうやっても勝てないよね。君じゃ。」


「二人っきりになった途端にそれですか、オネスト様!? ていうか、最初僕を売る気満々でしたよね!」


「いやー。あの場ではああするしかなかったじゃーん? まじめんごめんご。まさかあんなことになるなんてね。生きてて良かったね!」


「ね! じゃないですよ!? もっと悪い方向にいってるじゃないですか! <王>様が大広場にいる国民に宣言されたあとの皆の顔見ましたか!?」


「え、なにその【スキル】……。って顔してたね。」


「そりゃそうなりますよぉ!! 全員、とりあえず話合わせるか、的な拍手だったじゃないですかァ!」


「長い物には巻かれろ、良い国民性だよね。」


「どぉぉしよぉおお!!!」


「まあまあ、じぃじには何の責任もないけど。もっかい言うけど責任はないけど。でも、このまま放置も寝ざめ悪いしぃ? 真面目な話をしようじゃないか。」


「その一人称なんとかならないんですか……。」


「まず、君がすべきなのは手っ取り早く戦闘訓練を積むことだ。【スキル】を得ていないから本職には勝てないとはいえ、経験自体は必ず君を助けてくれるはず!」


「お、おぉ! オネスト様がまともなことを!」


「幸いにして、<兵士長>の一人、ああ、あの赤毛の女性ね? は、君のことを気にかけていたようだから、彼女に頼んでみるといい。」


「そ、そうですね……、少しでも生き残れる可能性をあげれば。」


「うむ。つまり君が目指すべきは、戦いの最前線で成果を上げる存在ではなく、象徴として士気を高めるための存在!」


「はい!」


「つまりはマスコット!!」


「象徴のままでお願いします!」


「もしくは<アイドル>!」


「象徴のままでお願いします!」


美少女(男の娘)戦士レオなるるんちゃん!」


「オネスト様の昔の威厳を返して!!」


「そしてもう1つ。仲間の存在じゃ。」


「仲間、ですか。」


「うむ。歴代の<勇者>のほとんどがパーティーを組んでおったのは知っているな。例外として、前回の<勇者>のようにソロも居ったが。」


「はい。<戦士>や<魔法使い>といった方々ですよね。」


「ああ、そうじゃ。そして、<勇者>と同様にレア<職業(ジョブ)>と呼ばれるものに<賢者>というものがある。」


「<賢者>、!」


「君と初めて会話したとき、君にこの国最高の智が同行する予定があると言うたな。つまり、この城に今、その<賢者>が居る!」


「なんと!」


「彼を最初の仲間とし、頼れる仲間を増やすのだ! そうすれば、!」


「生き残る可能性が更に高まる!」


美少女(男の娘)戦士レオなるるんちゃんを戦隊ものに出来る!」


「本当にオネスト様の昔の威厳を返して!!」


「それでは、さっそく<賢者>様をお連れするんじゃが、実はその御方は特別な立場の方でもあってな。間違っても失礼のないように。」


「は、はい!」


「まあ、そこまで緊張せんでええ。なにかあっても首がちょんぱされるだけじゃ。」


「ああ、それなら。駄目ですよね!? 死んでますよね!?」


「じぃじの首は大丈夫だし?」


「僕は僕の首が大事ですけど!?」



不安しか残らない台詞を置き土産にオネスト様が出て行ってしまう。

1時間ほど待たされただろうか。もしかして、呼んでくるといってたけど途中で飽きてやめたとかないよな、あの方だし、と心配になってきた頃。

とんとん、と扉がノックされる。


「<勇者>殿。オネストです。<賢者>様をお連れ致しました。」


「は、はい! どうぞ!」


「失礼致します。さあ、<賢者>様、御掛けください。」


「ああ。」

わぁ、! ど、どうしよう! 本当に来ちゃったよ! き、緊張で顔が見れない! ちゃんと会話できるかな……。失礼ないようにしないと、あれ、待てよ。仲間になってもらうとして、僕のあの【スキル】を説明しないといけないわけで……、無理じゃない!? <賢者>様なんてすごい方がこんな僕の仲間に、あああ、しまった待っている間に色々考えておけば、!


「こちらが、本日<勇者>に成られたレオナルド殿です。<勇者>に目覚めたばかりのためまだ力を全て使いこなせてはおりませんが、その心に宿る強き意志は誠の勇者。」


「は、はじめまして、! レオナルドといいます!!」


「レオナルド殿。この御方こそは、<賢者>にして、この国の第四<王子>でも在らせられるテオダート様でございます。」


「お、<王子>様っ!」


「よしてくれ、爺。<勇者>殿が委縮されているじゃないか。<王子>ということは気にせず、気軽に接してほしい。これから、貴方と私は仲間になるのだからな。」


「<王子>様……!」


「はっは。名で呼んでくれ、私も貴方のことはレオと呼ばせてもらおう。さあ、握手をしよう。この記念すべき出会いに。」


「は、はい! よろしくお願い致しま……あれ、?」


「ん、? どうかされたか、レオ……げ。」

握手をしようと手を伸ばし、ようやくしっかりと<賢者>様、もとい、テオダート様の御顔を見たのだが、どこかで……。


「あ、! あなたはあの時のチンピ、むごっ!?」


「おぉっと! 爺! 私はレオと二人っきりで話がしたいのだ! すまないが、席を外してはもらえないだろうか!」


「え、し、しかし……。」


「良いから!!」


「はぁ……、仕方ありませんな。<勇者>殿、テオダート様に失礼のないように。それでは。」


「む~~っ、! む、ぷは!! な、なにするんですか!」


「うるせぇ! てめぇ、あの時のちんちくりんだな! 今ジジイの前で下手なこと言いかけやがっただろ!」


「や、やっぱりあの時のチンピラの人!」


「黙ってろ! 外に出てたのバレたら怒られるじゃねえか! ぶん殴るぞ!」


「なァ! お、<王族>ともあろう方がカツアゲなんてして良いと思ってるんですか!」


「あ”!? ……ふ。これだから<農民>風情は学が無くて困る。本当にこの俺様が何も考えなくあんなことしてたとでも思っているとはな!」


「え、? じゃ、じゃあなにか意味があったんですか?」


「本当は話してやる義理はないんだが、仕方がない。良いだろう。耳をかっぽじって良く聞くが良い! いいか!」


「は、はい!」


「第四<王子>はな。」


「……はい。」


「あんまりお小遣いもらねえんだよね。」


「理由あっさ!?」


「浅いとはなんだ! こちとら死活問題なんだぞ! 城下町に出かけても娼館にも行けやしねえ!」


「娼館に行っているんですか!?」


「あ!? <王子>が行っちゃ駄目ってルールでもあんのか! どこに書いてあんだよ、あ”!? 適当で人馬鹿にしてんじゃねえぞ、どつきまわすぞごらァ!!」


「横暴にも程がある!? あなた、本当に<賢者>なんですか!」


「くそ【スキル】しか持ってねえお前に言われる筋合いはねえよ!」


「ぐは、!」


「確か、【勝手に住処に侵入しても怒られない】と【勝手にタンスを漁り中身を取っても大丈夫】だっけ? ぷぎゃー! へそで紅茶を優雅にティータイムできるってもんだぜ!」


「それは、その……。」


「しかもその2つだけ! 戦闘で役に立つものなにも持ってねえくせに<勇者>とかまじ無いっての!」


「じゃ、じゃあ!」


「ァん?」


「あなたの【スキル】は、そんなにすごいんですか!」


「当たり前じゃねえか。なに? 知りたいの?」


「は、はい……。」


「仕方ねえ。良いか? 俺の【スキル】は。」


「あなたの【スキル】は。」


「まず数は1つだ。」


「棚に上げるにもほどがある!!! え、嘘! 1つ!? 僕よりひどいじゃないですか!」


「あー!? 【スキル】の数で優劣図ってんじゃねえぞ!」


「そっくりそのままお返ししますけど!?」


「まあ、待て。大事なのは内容だ。そうだろう?」


「それはそう、ですけど。」


「俺の【スキル】に度肝を抜かせ! 俺の【スキル】は!」


「はい、!」


「【敵から逃げやすくなる】だ!!」


「流れを変えることのないびっくりするほどまっすぐなクズ【スキル】!? え、ここはせめてめちゃくちゃすごい内容とかであえて流れを変えるところじゃないんですか! もう、そのまま普通にダメダメな方向に走ってるじゃないですか!」


「あ、! お前、馬鹿にしてんだろ! 敵から逃げやすいってのはすごいじゃねえか!」


「すごいですけど! すごいけど、<賢者>要素がどこにあるんですか!」


「は?」


「え、?」


「え、ちょっとお前が言いたいことが分からねえけど、なに? もしかして大魔法が使えるとかでも思ってた?」


「普通、そう思いますけど……。」


「はぁ……、あのな? <賢者>って、どう書くよ。」


「賢い者、ですけど。」


「どこに魔法が使えるって書いてるんだよ。」


「そういう解釈!? え、嘘。それはありなんですか!? 仮にそうだとしても、なんで逃げるなんですか!」


「遠い異世界にこんな言葉がある。『君子危うきに近寄らず』と。」


「はぁ……。」


「君子ってのは賢い人だそうだ。つまり、賢い人は逃げるのが上手い!!」


「それって、賢い人は危ない所に近寄らないって意味じゃないんですか?」


「…………。」


「…………。」


「で、お前と仲間になるしかないって話なんだけどよ。」


「誤魔化すにしてももうちょっとなんかあるでしょう!?」




こうして僕は、<賢者>ことテオダートを仲間にすることが出来た。

この最悪の出会いをした二人こそ、のちに歴史に名を遺す最高のコンビになろうとはこの時は知る由もなかった。


「オネスト様!? なにをナレーションっぽく話して良い感じに締めようとしているんですか!! ていうか、僕を語らないでください!?」


チッ。


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