好奇心
朝、靄が立ちこめる中、左の耳にピアスを付け、電柱にもたれ掛かっている私と年が同じくらいの男の子がいた。
私は、その子が無性に気になった。
誰かを待っているのかな?それとも家出とか?学校は?
その場から動かずに、ただ真剣道行く人を見つめ続ける少年。
心の中のどこかで危険信号が聞こえてきた気がしたが、好奇心を抑えられずに私は話しかけた。
「ねぇ。何をしているの?」
「あんたを待ってたのさ」
少年は不敵な笑みを浮かべた。悔しいが、その表情がその子にはすっごく似合っていて、ちょっと格好いいと思った。
「からかわないでよ!」
「からかってない。言葉通り。あんたみないなヒトを待ってたのさ」
そう言いながら少年は耳に付けていたピアスを外して、手に持った。
そのピアスは少し変わっていて、親指の先ぐらいの小瓶の中に、銀の十字架が吊されているみたいだった。
手作りかな?もっと近くで見たいな。触りたいな。
「手にとって見たいの?いいぜ」
手元をじっと見つめる視線に気づいたのから言ってくれるのかな?嬉しい!なのに手を伸ばしたが、少年は手を後ろに引いて触らしてくれない。しかも、変なことを言い出した。
「感情ってのは誰にでも持っている、だろ?」
そりゃあそうでしょ。そんな事はどうでもいいの。早く見せてよ。OKだしときながらじらすなんてずるい!
「だがな、どんなのでも持ちすぎたら禄な事がない。だから俺は回収しているのさ」
何を?話の内容も気になる。けど、ピアスも見たい。早く、手に取らせて。触らせて!
「好奇心は身を滅ぼすって言うぜ。それでも触ってみるのか?」
忠告?それとも、ただ単に頭がおかしいだけ?どっちでもいいや。私は、見たいのだから!
私は、恐る恐るそのピアスを触ってみた・・・。
彼女は、触れたと同時に靄となり、瓶に吸い込まれていった。
「だから言ったろ。『好奇心は身を滅ぼす』ってな」
最後まで自覚はなかったようだが、彼女は好奇心が集まって出来た『ヒト』だった。
「にしても、今の子ってメッチャ反則だろ〜。俺の好みだったんだぞ〜!?」
人知れず行き過ぎた感情を回収している彼らを、ヒトは、『感情回収屋』と呼んでいる。