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19/22

始まりの町



 わざわざ振り返るのもカッコ悪いし、面倒なんで、名前の件はそのままスルーした。

 カッコ良くキメたつもりが、なんか台無しだ……


()()()」はちょっと気になるが、町に居れば、顔を合わせることもあるかもしれないしな。特に考えないことにした。


 さ、いよいよ見えてきましたよ。


 ザ・壁! 近くで見上げると首が痛くなりそうだ。

 俺が作った土壁なんて、かわいいもんだ。オモテャみたいだわ。やはり、こちらの常識たる一般的な知識を早く仕入れねば。


 ちらほら人もいるなぁ。ようやくこの地の文明ってやつにに触れられそうだな。馬車が主流みたいで、独りってのは俺くらいだな。


 うーん。みなさん、デカいし顔のホリが深い。濃い。外国人だーって、アジア系ではないガッシリした感じだ。

 ヒトの姿を見て、少し安心できたと思ったけど、突然異国に独り放り込まれた感が……、俺浮いてるよな。


 さっきは普通に日本語が通じたから、今後も大丈夫だと思いたい。




 入場料はなし。

 行きはよいよい帰りはこわいってか?


 税金は中でガッツリ取ってる系か?


 1人ずつ万引き防止ゲートみたいな板の間をくぐっていく。

 さして待つこともなく、順番がきた。



 パァーっ。両方の板がうっすら緑色に光った、

「ちょっとよろしいでしょうか?」

 警備員っぽい兵が話しかけてきた。


「ん。何かありましたか?」

「少しあちらで時間をいただきたいのですが……」


 おっと。止められたよ。何かフラグったか?

 少し考えを巡らせていると、更に

「いや、特に問題があったわけではありません。少し協力いただけないかと思いまして。あなたは指輪持ちですよね?」


 あぁ、なんか光ったよな、緑色に。いままで誰も光ってなかったのに。指輪持ちってことは、この指輪を感知したってことだよな。まずいものではなさそうだが、丁寧(ていねい)な態度だな。珍しいのか?


 うーん、分からん。どうしよっかな。

「……そうだが、なんだ? 面倒事なら断るぞ。早く休みたいんだ。着いたばかりだからな。理解してくれ」


「……そうですか。そうですよね。それでしたら、こちらで宿を手配しますので、明日にでもまたお時間をいただけませんか?」


 うーん。簡単には解放してくれないのか? まったく。面倒だな。

「ワケくらは聞いても?」

「はい。ここではなんですので、こちらへどうぞ」

 詰め所みたいな建物に誘導され、用意されたイスに腰をおろす。


「で、何か?」

「実は、ここのところ野獣の数が増えてまして、治安の方でいろいろ問題になっているのです。町でも傭兵を雇ったり、ギルドにも依頼を出したりしているのですが、思ったよりも野獣の数が多く、怪我人も出ているような現状なんです」


 また(つな)がったか。さっきの3人組が受けた依頼ってのがこれか。


「それで俺とどう関係するのかな?」

「失礼ですが、指輪持ちということは、それ相応の戦力を有するお方かと。入場審査で反応があった場合には、話をするよう指示を受けております」


「協力しろと?」

「はい。依頼という形になりますが、報酬(ほうしゅう)もしっかりと用意させていただきます。」


「その依頼料の中に宿の手配も入ると?」

「いえ、それとは別になります。明日の朝の作戦会議で話を聞いていただければと」


 なんか、待遇がいいなぁ。指輪持ちって言葉もなんか、カッコよくね? 特別なのか? 皆が魔法を使える訳ではないというところかな? うーん。悪くはなさそうなんだけど、野獣狩りかぁ。確かに脅威(きょうい)なんだろうけど、あの惨劇(さんげき)をもう一度とか……

微妙だよなー。



「話を聞いて、参加しないこともありか?」

「はい。それは構いません。現状を聞いていただければ。勿論(もちろん)、依頼を受けていただけるのがありがたいのですが、無理は言いません。検討いただければと」


「話は分かった。だが断る」

「……」


「すまん。言ってみただけだ。朝の会議とやらには参加させてもらう。それと、こちらも少し質問いいかな?」


 無理矢理だが、言えてよかった。普段使えないからな。よく分からない世界だからこそ押し通した。達成感だ。

 ドン引きされたわ。そりゃそうだ。俺でも引くわ。


 無言で(うなず)いてくれた。すまなかった。反省はしないが、もう使わない。こんな空気になるならもう使えない。ありがとう。



「この町にくるのは初めてなんだ。例えばそうだな、その剣の値段、一般的な昼飯の値段、あと宿屋の値段を教えてほしい」

「この剣は10万。昼は500、宿は5000エーンくらいが相場になるでしょうか」


 おう。エーンて。値段トんだわ。まあいいや。

「あと、この金は使えるか?」


 布袋から(ふところ)に入れておいた財布を出す。財布といっても頑丈な皮の袋? 見たこともないコインを数枚出して確認してもらう。

外国の通貨? って感じだ。



「……はい。問題ありません。銅貨、銀貨、金貨、白金貨まで……、この町で使える貨幣(かへい)ですが、白金貨は、そのぉ……あまり目にしない貨幣ですので、使えない店のが多いと思います」


 おう。白金貨なんてのもあったのか。よく分からんかったからちょうどよかったよ。にしても、お金はいっぱい持たせてくれてたのね。ありがとう。【イージーモード】じゃないなんて言ってごめんなさい。そして、も一度ありがとう。


 白金貨(百万)、金貨(10万)、大銀貨(1万)、銀貨1(千)、大銅貨(百)、銅貨(十)エーンって感じで、財布には白金貨1枚の他はそれぞれ10枚入っていた。


 2,111,100エーンだね。何もしなくてもしばらくは大丈夫そうだ。ステキ。


「そうか、ありがとう。では案内を頼む。食事をしたい」


「分かりました。少しお待ちください。手配します」

 警備員っぽい兵は走っていった。




 ほどなくすると、町の宿屋に案内され、食事を提供してもらうことになった。兵は、明日の集合場所を伝えると、とすぐに帰っていった。



 3日目にして初のお食事。早いのか遅いのか分からんが、またドキドキだ。『何が出るかな、何が出るかな、そんなことわからない。デン!』

 これもノリだ。サイコロ振ってトークしてたお昼のあれだ。サイコロ振る時のミュージックに歌詞つけてみた感じだ。ごめんよ。わからないよな。


 肉だ。デカい。厚い。そして熱い。食えんぞこんなに。

 だが、旨かった。(やわ)らかジューシー。脂っこくなくガンガンいける。気がつけば完食です。


 やるじゃん。いい感じだよ。満足だよ。点数高いよ。

 飲み物は、何かのフルーツジュース? 多分ブドウ?

 おかわりしたよ。ごちそうさまでした。

 あとは風呂入って寝るだけだな。

 いや、まだ日も高いし、散策行っとくか?



 軽く散歩してみた。


 (おだ)やかな空気の流れる、清潔(せいけつ)な街だった。よかったよ。そこら辺に糞尿(ふんにょう)が転がってなくてさ。あまり期待はしないようにしたけど、思った以上に活気がある。世紀末っぽくなくてよかったよ。


 建物にこそ重厚感はあるが、行き交う人は軽やかで、子供も大人も笑顔が(あふ)れている。平和でいい町なんだなぁと感じた。



 そんなこんなで適当に歩き、宿に戻る。


 部屋には、ベッド、棚、机、イスがあるが、トイレは共同。風呂はなし。暖かみを感じらる内装で、落ち着けそうだ。


 分かってはいたけど、電化製品の(たぐ)いはなかった。



 必殺! 《洗浄》祭り!

「《洗浄》×3」ベッド、全身、お口


 落ち着いたところで

「『ステータスブック』オープン!」

 アイテムボックスから出すだけです。


 ……


『認証の指輪』には変化ないな。

『生活魔法』には《ジャグジー》と《火葬》が新しく登録されてて、


「ん? ページが増えてる」



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


【名 称】旅人


【訪問地】旅人の(とりで)

     始まりの町


【称 号】生活魔法の探求者

     半日で砦を築きし者


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 ツッコミ専用ページだ……



「はははは……」





読んで頂き、ありがとうございました。

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