88:狙われるオリガの日
短いけど、切りが良いのでココまで。
純菜の隠密が立ちはだかった。
カッコイイ! と思いきや。
食べかけのお寿司をお口のなかでモグモグしている。
吐き出すなんてハシタナイ行為はしないのだ。
「ひゃひもにょひゃ?」
訳。何者だ?
だけど3人組はスルーした。
隠密の人のことを、ただの一般人だと思ったに違いない。
そりゃーそうだ。
彼等はどうやらオリガを目当てにしてるみたいだけど、まさか一緒にMISAKIグループの人間がいて、隠密までついているとは思わないもんね。
足早に迫る3人。
隠密の人はゴックンすると
「喝!」
と発声した。
驚いて3人組が足を止める。
そのうちの1人の手首を掴むと、隠密の人は小手返しをしかけた。
小手返しって何? て人はググってね!
合気道の投げ技だけど、体格差があるから投げるなんてことは出来ない。
それでも関節を決めてるわけだから、痛みにへたりこんだスーツさんに小手返しを極めて自由を奪ったまま
「狼藉者が!」
いやいや、仕掛けたのは隠密さんですよね?
な~んて突っ込みは野暮だ。
この大立ち回りに「なんだなんだ?」と来場者が見物をはじめる。
これで3人組は大袈裟なことをできなくなった。
しばらくしたら警備も駆けつけて来ることだろう。
隠密の人が『喝』なんて大声を出したのは、決してカッコをつけるためではなかったのだ!
「この隙に」
純菜が、凛たちを促す。
相手が3人とは限らないのだ。正直、今だって隠密1人では手に余っている。
さらに言えば、衆人環視だからと言って穏便に済ます連中だとも……限らない。
凛たちは逃げようとして
!
足止めしている3人と同じようなびっちり黒スーツが、あっちから、こっちから、向かってくるのを見てしまった。
さいわいにも、向こうはまだオリガに気づいてない。
とはいえ、見つかるのは時間の問題だろう。
「こっちだ!」
SUSHIの板さんだった。
凛たちは招かれるままに、カウンターの裏っかわに隠れた。
「あの連中は純ちゃんを狙ってんのかい?」
「いいえ、わたしじゃなくて」
と純菜がオリガを見た。
オリガと同じ言葉を喋っていた。
狙われているのは彼女だろう。
「あの黒スーツなんなの?」
翔子がオリガに訊くけど
「****」
何を言っているのか分からないのだ。
ただ、オリガが申し訳なさそうな表情をしているのが分かるだけだ。
「ココに隠れてれば平気かな?」
というか!
凛くん、凛くん! 君たちは隠れないでもよくね?
な~んて冷静なことを考えられなくなっていた。
いきなり大人に迫られたら、動揺するよね?
それに。まぁ、オリガと一緒にいるところを最初の3人組に見られてもいるしね。
純菜はピョコンとカウンターから顔を覗かせた。
駆け付けた警備と3人組が何か言い合っているけど、警備の人が掣肘出来ているのは、その3人だけだ。
他の黒スーツは怪しいだけで、何も仕出かしてないから注意もできないんだろう。
「お嬢さま」
何時の間に! という感じで純菜の隣りに隠密の人がしゃがみ込んでいた。
きゃ! と翔子もオリガもびっくりだ。
凛だけが「忍者だ!」喜んでいた。
「他の隠密が集まるまでの時間は?」
「5分は必要かと」
ピョコンと翔子もカウンターから顔を出した。
「うわ…」
と思わず絶句する。
黒スーツたちは傍若無人にお店の裏を覗き始めているのだ。
3人組から、オリガが遠くに逃げてないと伝えられたに違いない。
ところどころで警備の人とぶつかってるけど、なんせ体格が違う。
軽くあしらわれていた。
「見つかるのも時間の問題だね」
凛もぴょこんと顔を出して言った。
オリガも顔を出そうとしたのを
「だめだめ」
と3人と隠密は再びカウンターの裏に隠れて顔を突き合わせた。
「どうしよう?」
「どうしよっか?」
「****」
パチン、と翔子が指を鳴らした。
「閃いた!」
と言うと「あのね」ごしょごしょとみんなに耳打ちしたのだ。




