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87:フードエリアでお食事の日

サマロクのフードエリアは広大だ。

なんせ埋立地の島をひとつまるまるフードエリアにしているのだ。


通常の野外フェスのフードエリアなんていったら、どの店も行列で並ばないといけないわ、価格がめっぽう高いわで、閉口ものだけど、ことサマロクに関してはそ~いうことがない。


行列なんて出来ないほどに出店数が多いし、販売価格だってめっちゃ安い。


それというのも、サマロクに協賛している食品会社のほとんどが店舗を出しているからだ。

そういったお店は採算度外視で、新商品の売り込みをしていた。知名度UPを狙っているのだ。


しかも。

企業の店舗ばかりじゃなく、現代でいうところのB級グルメを集めて、グランプリを決めよう的なこともやっていた。


店はもとより、食材だってサマロク側が用意してくれるので、B級グルメの出店者は気軽に参加できる。言っちゃえば調理をする人がいるだけでいいのだ。


というわけで、全国各地からB級グルメも大量に参加。

大量に参加したら、競合するためにも値段を高く設定なんて出来るはずがない。

そもそも食材はサマロクが一括大量購入しているので格安だしね。


なので、サマロクのフードエリアは端的に言って『最高!』なのだ。


むしろ音楽そっちのけで食べ歩きをする人もいるぐらいなのだ。


そ~んなフードエリアに凛と翔子と純菜、それにオリガは遣って来ていた。


「軍資金は?」


翔子が純菜を見遣れば


「抜かりありませんわ」


と純菜は胸を張った。


達也と2人でデートさせてあげるから、という理由で若葉からまっとうな金銭感覚を持った大人が眉をひそめてしまうぐらいのお金をせしめている純菜なのだ。


なんじゃかんじゃ言っても、若葉もお嬢様なのである。

ちょっくら金銭感覚が庶民とは違うのだ。


まさか、そんな大金をせしめているとは翔子は知らない。

せいぜい3000円ぐらいかな? いやいや、あの姫宮若葉ちゃんだもの、5000円かも!

そんな感じでしかなかった。


こんな翔子が、純菜のお財布を見てしまったら罪悪感で半泣きしてしまったかも知れない。


とはいえ、お財布係は純菜だ。

翔子はな~んも知らないまま。


一行はB級グルメを楽しんだ。


北海道のご当地グルメの『ザンギ』。


「これって唐揚げ?」


「竜田揚げみたいですね」


凛とオリガは同時に食べて


「おいしい!」


「****!」


同じような顔をしてみせた。


栃木といえば定番の宇都宮餃子。


はふはふ、4人はタレをつかわないで餃子だけの味を楽しんだ。

ついでにレモン牛乳で喉を潤す。


静岡では、静岡おでん。


「大根が真っ黒なんですけど」


「はんぺんも真っ黒です」


粉状のダシをパラパラ振りまいて。

いせーのせ! で4人は口に入れた。


みんなの眉がおおきくあがる。


「真っ黒だから味が濃いかと思ったら」


「そんなことないね」


翔子と凛はおもわずハイタッチだ。


それから。


「ここが一番のおすすめです」


そう純菜が紹介してくれたのは、お寿司の店だった。


看板には『SUSHI』と書いてある。


「****」


オリガが看板を指さして嬉々として何かを言っている。


どうやらお寿司に興味があるみたいだった。 


「外国の人がやってるお店なの?」


凛が訊いた。


「そう思います?」


4人は縁台に座って


「ランチを4人前、お願いします」


純菜が注文をした。


SUSHIとはいえ、回らないお店のお寿司である。


さぞやお高いのかと思いきや、お値段はビックリご奉仕価格の800円!

しかも消費税がないので、ピッタシ800円!


お安い!


「あいよ」


とお爺ちゃんと言ってもいい年齢の板さんが応じて


「おや、純ちゃん」


孫に会ったみたいに相好を崩した。


このお店。

純菜というか、岬家が懇意にしている板さんが腕を振るっているのだ。


天下のお金持ちMISAKIが行きつけているお店の板さんだ。

いうまでもないけど、一流である。普段はザギンの一等地のお店で握っているのである。


そんな板さんが『SUSHI』のお店を出している理由は。


「はいよ」


足つきのちっさいまな板…は野外ということもあって衛生的にアウトなので、紙皿に盛られて供されたお寿司は。


アボガドとカニカマとマヨネーズが巻かれたカリフォルニアロール。

ホタテをマヨネーズで和えて、きゅうりと一緒に巻いたお寿司。

他にも天ぷらを巻いたもの、チーズとお魚を巻いたもの、果ては果物を巻いたもの。


創作お寿司の数々だった。


「寿司の可能性を広げたくてね。とはいえ、こういったのを銀座でだすと昔気質の常連さんに嫌われちまうからさ」


「そこで、サマロクのあいだだけ内緒で出店して、好き放題なお寿司を握ってるんですよね」


板さんが言って、純菜が付け足す。


お寿司はさすがというべきか素晴らしいお味だ。


4人が普段は食べられないお寿司を堪能していると


「お嬢さま」


何気ない風をよそおって純菜の隣りに腰かけた女性が小声で話しかけた。


隠密の人だ。


ただし悪目立ちしてしまうからスーツ姿じゃない。

いかにもサマロクを楽しみにしてきました! 的なフツーの目立たない服装だ。


「迷子ではないようです」


調べた結果を聞いて、純菜はオリガを盗み見た。


SUSHIを目を細めて食べている。

オリガなかでのお寿司は、創作寿司がスタンダートになってしまったことだろう。

お醤油よりも、マヨネーズ。

生魚よりも、カニカマやアボガド。


う~ん。

世界に広まるって、難しいよね。

日本人も、たらこスパゲッティとか食べてるし。あれってイタリアの人からしたらゲテモノだもんね。


オリガの調査を引き続き頼みます。

なんてことを純菜は言わない。


言わなくても、隠密の人がしっかりと調べてくれることは確定事項だからだ。


「ごちそうさまでした」


4人はお礼を言って縁台を立った。


「次、何処に行く?」


健啖けんたん……要するに大食いの翔子がまだまだ食べる気まんまんで言うけど。


「も~、入らないよ」


「ギブアップですわ」


2人に口々に言われて


「みんな小食ね。ま、腹5分目ともいうしね」


翔子は物足りなそうにお腹をさすりながら言ったものだ。


これには言葉の通じないオリガもなんとなく分かったのか、苦笑いである。


と。


オリガがビクリと足を止めた。


「どーしたの?」


凛たちはオリガの視線の先を追って、そこに異様な3人組を見た。


この暑い最中にキッチリと真っ黒スーツを着込んで、サングラスをして、体格がプロレスラーもかくやというような外国人らしき3人。


ちょー目立っている。


他の人たちが2メートル以上避けているぐらいだ。


そんな3人組もオリガと同じように足を止めて。


「****!」


一目散に迫ってきたのだった。

よーやく、お話が進みます。


次回! 3人組に襲われる凛たち。

はたしてオリガの正体とは!

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