59:純菜の恋心の日
チョコとバナナの愛称が抜群のチョコバナナ。水あめが前歯にくっついちゃう、リンゴ飴にあんず飴。なんとも軽~い触感のカルメ焼き。おじちゃんがサービスしてくれるかもの甘栗。今川焼き、タイ焼き、ベビーカステラは、屋台で買うと、なぜだかお店で買って食べるのと違う味がする…気がする。作る人は手間だけど、人気のクレープ。そんなクレープに似てるようで似てない、あんまき。さっぱりな甘味のさつま芋スティック。さらにお口をさっぱりさせたいのなら、冷やしパインがある。食べるのがむずかしい綿あめ。かぶりつくと、お口のまわりがベタベタしちゃうからね。忘れちゃならない、カキ氷。シロップの味はどれも同じで色しか違ってないって知ってた? ほかにもイチゴ大福、揚げアイス。
甘いものばかりじゃない。
定番のお好み焼きにタコ焼き。えび玉焼き、イカ玉焼き、なんて粉物もある。お醤油の焦げたのが香ばしい焼きトウモロコシにイカ焼き。焼きそばで満足できなければ、玉子焼きを乗せたおむそばだってある。ジャガバターや磯辺焼きは、美味しいけれど、お腹にズドンと溜まって他の屋台が食べられなくなるからご注意。お酒のお供には、焼き鳥と唐揚げなんてどうでしょう? 夏になると食べたくなるアメリカンドッグやフランクフルトなんて物もある。お口が油っぽくなったら、きゅうりの1本漬けだ。
スナックだって、もちろん。
チープだけど、そこがいい、ソースせんべい。え? もうちょっとボリュームが欲しい? なら、えびせんに目玉焼きと揚げ玉をのせて、ソースとマヨネーズを盛り盛りの、たませんがあるよ。映画館だけじゃもったいない、ポップコーン。値段が安い割にいっぱい入ってるスピンなんてお菓子もある。他にも、ぎんなん、イタリアンスパボーなんてものだって。
食べ物ばかりじゃない。
景品が後ろに倒れないと貰えない、射的。むしろ射的に比べて良心的な気がする輪投げ。根気が必要だっていうけれど、ほんとに必要なのは運な気がする、型抜き。運といえば、紐をひっぱって景品をもらう千本引きなんて屋台もあるよね。水から掬い上げる系では、スーパーボール掬いに金魚すくい。亀すくいは、緑ガメが要注意外来生物に指定されちゃったから現代ではもう無理かな? そんな掬い系とは似て非なる、ヨーヨー釣りは水風船なのになんでヨーヨーなんだろう。
おもちゃだって売ってる。
お値段の割に家に帰ったら興味が1ミリもなくなっちゃう、おめん。それに比べて、ハッカパイプは中身がなくなっても、ついつい吸っちゃうよね。そんなハッカパイプとおめんを買えるぐらいお小遣いがあったなら、きっと水笛も買ってるはず。ぴーひょろろ。
色んな屋台があるのだ。
凛はヨーヨーを左手の指にぶら下げながら、タコ焼きを食べていた。
そんな凛の隣りでは、純菜が焼きそばを食べている。
2人は野っぱらに座っていた。
人込みに疲れてしまったのだ。
遠くから盆踊りのアラレちゃん音頭の歌が聴こえてきている。
ジージーと虫の声もしている。
「さっきは惜しかったなぁ」
凛が悔し気にぼやく。
輪投げの屋台で、凛はミニ四駆を狙ったのだ。そのミニ四駆は、高速で走らせると形がぶれて竜の頭のように見えるという、とてつもなくカッコいいデザインのミニ四駆だった。
けど、そういった大物が獲れるはずもなく。
凛は悔しがっているけど、惜しいとこなんて欠片もなくて、残念賞でペンギンのマスコットがついたキーホルダーを貰えただけだった。
そのキーホルダーは純菜がねだって、譲り受けている。
大切に、巾着に仕舞っている。
「また挑戦したらいいんじゃありません?」
「2回目はないかな、高いし」
輪投げは高いのだ。1回目は勢いでやったけど、2回目をするほど凛はギャンブラーじゃないのだ。
ここで「奢ってあげる」と純菜は言わない。
というか。
2年前に言ってしまったことがあるのだ。
「そのお菓子、欲しいようでしたら、わたしが買ってあげますけど?」
その時は凛に『そういうのって、いけないんだよ』と叱られてしまったのだ。
凛にしたら、それほど深い意味で言った言葉じゃない。
当時の凛は8歳。むつみの『知らない人にお菓子を買ってもらっちゃだめよ』という誘拐対策の注意と『お菓子はお小遣いの範囲で買うこと』というお金の使い方の注意とが、何時の間にかまざりあって、買ってあげると言った純菜に『いけないんだよ』と言ったまでのことだった。
でも、純菜にしたらショックだった。
そんなことを言ってくれたのは凛が初めてだったのだ。
翔子との友達づきあいでは、純菜はあえてお金のことは口にしないようにしていた。
対等な付き合いをしていたかったからだ。
でも凛とは違った。
そもそもの話。純菜は凛が嫌いだったのだ。
初めてできた気の置けない友達の翔子に付きまとう凛。
邪魔だ、と思っていた。
なので、お金の力で篭絡して、うまいこと翔子から遠ざけてしまおうと考えたのだ。
岬純菜は清純な外見とは裏腹に、お腹の中は真っ黒けっけなのだ。
叱られて、ショックだった。同時に、自分の汚い部分を、凛の言葉で、純菜は見せつけられたような気がした。
それからだ。
純菜は凛を観察した。
ちょこまかと翔子を追いかける凛。
翔子に構ってもらえないと『いじわる!』と憎まれ口をたたいて不貞腐れるくせして、翔子が慰めてくれるのを待っている凛。
なにこれ、かわいい。
純菜が結論に辿り着いたのは直ぐだった。
愛らしい小動物を可愛がるように、純菜は凛を猫可愛がりした。
それが何時からだろう。
恋心をともなった好意に変わったのだ。
近頃はスキンシップで凛に抱き着くたびにドキドキしちゃう純菜なのだ。
と、いうようなことを勿論、凛は知らない。
翔姉え一直線なのだ、気づきもしない。
「純ちゃん、焼きそばとタコ焼き、とっ替えっこしない?」
「いいですよ」
返事して、取り替えてから純菜は気付いた。
タコ焼きは楊子が2本ついてる。
でも、焼きそばは、わたしが使ったお箸しかないじゃない!
新しいお箸、貰ってきたほうがいいよね。と思ううちにも、凛は
「美味しいね」
と純菜がつかったお箸を使って焼きそばを食べている。
純菜はもう真っ赤だ。
だって、これって、間接……。
「どうしたの純ちゃん?」
凛が、ジッと自分のことを見ているから訊くけど
「なんでもないの」
わたわた答えて、純菜はタコ焼きをひょいぱくひょいぱく、リスみたいに口に詰め込んだ。
言うまでもないけど、未使用の楊子をつかった。
間接キッスに興味がないわけじゃない。でも、いざやるとなると恥ずかしかったのだ。
「きゅー」
とタックがフードのなかで鳴いた。
「ボク、ゴミ捨ててくるね」
凛は立ち上がった。
「わたしも」
立ち上がろうとした純菜を
「いいから、ゆっくりしてて」
抑えて、凛は純菜から半ば強引にゴミを受け取ると
「行ってくるね」
スタコラ走ったのだった。
さぁ、ここからだ!
「急げ急げ!」
「あと5分ですわよ!」
2匹のハムスターに急かされて
「分かってるよ!」
凛はゴミを屋台のゴミ箱に突っ込んでから
「ヘイ!」
魔法の口紅をステッキに変えた。
場所は屋台の裏だ。
もしも、のことを考えて、いちおう人目を気にしているのだ。
もっとも、おおぜいの人がいるので焼け石に水ではあるのだけど。
「ペペッチ、ポポッチ、レレンチカ」
くるくるくるり~ん、の
「ポポッチ、ペペッチ、レレンチカ!」
魔法のボールを蹴り上げて、金色のシャワーを浴びる。
繭が割れたら、T〔天使に〕S〔スイッチ〕だ!
本日のリンは、浴衣である。
た、だ~し!
着ているのは男物である。
何処からどう見ても少年だ。
そして。
誰もが見てしまうほどの美少年だ。
加えて。
これなら微妙にリンとは分からないだろう。
「いいじゃない」
チックが恋する乙女の眼差しをリンに送る。
「どうやら、妖精王の言ったとおりに誰にも気づかれてないみたいだな」
タックが言う。
「妖精王に感謝!」
凛は雪駄を履いた足を翔子との待ち合わせの場所へと急がせたのだった。
腹痛で、朝起きました。
病院に行ったら、尿路結石との診断!
今は痛み止めが効いてますが、明日はどうなるか…。
投稿をするつもりはあるのですが、無理かもしれませんので、ご理解を。




