56:七夕祭りの予定の日
読み直してないので、変なとこがあるかもです。
7月7日の七夕を前にして、凛の住んでいる光ヶ浜の街は俄かに色めく。
商店街では七夕フェアを開催するし、H(光ヶ浜)TVでも七夕に焦点を当てた番組構成になるし、学校では工作の時間をつかって七夕飾りをつくって、家庭でも話題は七夕のことばかりになる。
それというのも、光ヶ浜の街には七夕祭りなる催しがあるからだ。
それはそれは大きな催しだ。
某ネズミーランドに匹敵するほどの広さの中央公園を全面、七夕祭りに使ってしまうのだ。
開催期間は7日から10日までの4日間。
公園の遊歩道を思い思いの装束に身を包んだ人たちが練り歩く、七夕道中。
中学生や高校生、大学生の鼓笛隊は広場でそれまでの練習の成果を披露するし。
同じく、学生チア・チームが2日に渡ってダンスをして、1等には海外で行われるチアリーディング国際大会への渡航費用をプレゼントなんてものもある。
他にも、ミス織姫と、ミスタ彦星を決める、コンテスト。盆踊りに、いっぱいの屋台。
そして、なんといっても今年の目玉は。
達也は指を指揮棒のように立てて
「光ヶ浜の街が輩出したアイドル、リンのコンサートだ」
と
「そう言いたいところだが」
ヘチョンと眉を下げて付け足した。
「残念ながら、俺たちは最終日にちょっとお呼ばれされただけだ」
なんせ光ヶ浜の街の七夕祭りは有名だ。
観光客だって何10万人と来る。因みに昨年はギリギリ100万に届かなかったので、今年こそはと七夕祭りにかかわるスタッフはヤル気が満々だ。
リンもそこそこ有名になったとはいえ、正直、まだ力不足だ。
呼ばれたのも、光ヶ浜の街の出身だから、そのお情けという感じが強い。
ということで、七夕祭りの主役はコシプロのアイドルたちなのだ。
新旧たくさんのコシプロ所属のアイドルが遣って来る。
4日間で代わる代わる、毎日、違うアイドルが歌やダンスを披露するのだ。
ギャラは…まぁ、安い。
それでも観光客は来るし、テレビにも映る。
安いギャラを覆すだけのメリットがあるのだ。
力不足。そう言われたら、たいていのアイドルは不満げな顔をする。
だけどリンは?
「七夕祭りに出られるだけで」
ヤッター! とバンザイをして見せ
「だよ」
ニコニコと屈託なく言ったのだった。
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所と時間は変わって。凛の家、夕飯を食べた後のまったりな時間である。
「ムーちゃん」
「正彦さん」
互いの名前を呼んだあとにハートマークがつくような口調である。
七夕が近づくと、正彦とむつみは毎年、こうなのだ。
イチャイチャするのだ。
息子がいなかったら、確実にキスをしていることだろう。
2人が出会ったのが七夕だったからだと、凛は教えられている。
ロマンチックな気持ちになってしまうのだと、聞かされている。
とはいえ、だ。
父親と母親である。
仲がいいのは構わない。ロマンチックになるもの仕方ない。
けど、度が過ぎれば、凛としても居たたまれなくなる。
「翔姉えンとこに行ってきまーす」
凛はとっとと逃げ出した。
伴場家に「こんばんわ」とお邪魔する。
お忘れの方もおられるだろうか? 翔子の苗字は伴場なのだ。
勝手知ったる他人の家。
リビングに顔を出して、翔姉えのおばさんとおじさんに「おじゃまします」と挨拶をする。
それから階段をトントンとあがって
「翔姉え、あそぼ」
ノックもせずに年頃の女の子の部屋のドアを開けた。
鉄拳制裁はない。
何故なら、翔子は脇目もふらずにカリカリと漫画を描いていたからだ。
翔子の部屋は……端的に言って、翔子らしい部屋である。
女の子っぽくもあるし、男の子っぽくもある。割合は7:3といった感じだ。
ヌイグルミのようなファンシーなものはなくて、壁にある大きな本棚には漫画本がいっぱいだ。
タックとチックが凛のフードから飛び出して、さっそく翔子の部屋のチェックをしている。
女の子、の部屋に興味津々なのだ。もともとは翔子を魔法少女にする予定だったというのもある。
「あ、凛くんだ~」
ベッドに倒れ込んでいた純菜が顔を上げた。
それでも起き上がる気力はない。
ずっと翔子の漫画を描く手伝いをしていたのだ。
いわゆるベタ塗りや消しゴムかけである。
慣れない細やかな作業に、すっかり翔子は疲れてしまっていたのだ。
時刻は19時。
学校が終わってから、休憩はご馳走になった夕飯の時ぐらいしかない。
とてもじゃないが、MISAKIグループの頂点に連なる血筋の人間にやらせることではない。
しかし、やらせちゃうし、やっちゃう。
翔子と純菜は親友なのだ。
「お疲れ、純ちゃん」
訳知りな凛である。
言いながら、ベッドの端に腰かける。
「あそぼ?」
もういっぺん言ってみる。
「忙しいから無理」」
翔子はニベもない。
ここで今までの凛だったら、しつこくせがんで、最終的に翔子に怒られて部屋を追い出されたことだろう。
しかし、だ。凛はリンとして社会にかる~く揉まれているのだ。
「ちぇ」
と、引き下がった。
「凛くんは七夕祭り、どーするんですか?」
純菜が訊く。
「翔姉えと遊ぶよ」
「何言ってんの、あたしは無理よ」
翔子が言って、凛は「え?」と驚いた。
毎年、一緒だったのだ。
「なんでさ?」
「だって、漫画描かないといけないし」
む~、と凛は唸った。
不満はある。けど、翔子が頑張っているのを知っている凛なのだ。
「でしたら!」
と純菜が起き上がって、凛を背後から抱きしめた。
美少女といっていい純菜に抱きしめられても、凛は動じもしない。
馴れっこなのだ。ある意味、大型犬に抱き着かれてぐらいにしか感じてない。純菜としては、たいへんに不本意だろう。
「わたしと一緒に七夕祭りを回りません?」
「でも…」
凛は未練ありげに翔子を見た。
「いいじゃない、純菜と回れば」
とのお応えである。凛を見もしない。
なんか知らないけど、凛はカチンときた。
「わかった! そんじゃあ、ボク、純ちゃんと2人だけで遊んじゃうんだからね!」
「ご勝手に~」
翔子は気にしたぞぶりもない。
「嬉しい! では、4日目に遊びましょうね」
そう約束をして。
お冠な凛は、さっさと翔子の部屋を辞したのだけど。
「いいのか?」
「いいんですの?」
自室に帰るなり、タックとチックが心配そうに言ってきた。
「なにがさ!」
ついつい口調が荒くなってしまう凛である。
2匹のハムスターは肩を竦めると言った。
「だって、君。約束してたろ?」
約束? プンスカしながらも凛は小首を傾げる。
「忘れてたんですのね。このあいだ、翔子と約束してたじゃありませんか」
と言われて「あ!」凛は思い出した。
リンになっている時だった。
『お願いがあるんです。リンさん、七夕祭りの4日目に付き合ってもらえませんか?』
そう翔子に言われて
「いいよ」
安請け合いしてしまったのだった。
「忘れてた~!」
その場にへたり込む。
仕方ないちゃあ、仕方ないのだ。
凛はリンとしての仕事で毎日が大忙しだ。普通なら、マネージャーがプライベートなことも管理してくれるのだけど、リンは魔法少女、プライベートは達也にだって内緒だ。というか、バレたらドエライ目にあうとタックとチックに脅されている。そんなだから、10歳の限界で、どうしたって忘れることだってあるのだ。
「どうしよう?」
「どうしようもねーだろ?」
「翔子か純菜、どちらかの誘いを断るしかありませんわね」
無情なタックとチックである。
そんな時だった。
「ちょ~とタンマ!」
2匹のハムスターの頭上の空間がムニャムニャ蠢いて、そこから
「お久しぶりだね」
妖精王が現れたのだ!
ということで、リンは翔子と、凛は純菜とデートすることに。
はたして凛はど~するのか!
解決の手段は妖精王が握ってる! そう、都合よく出たからには!
明日のTSリンの投稿はお休みです。
よろしくお願いします。




