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52:リンの写真撮影の日

撮影が始まった。


どうやら水着をきていた5人の女の人はグラビア・アイドルだったらしい。

前かがみになって胸の谷間を強調したポーズをしたり、ヒップ・アピールでカメラにお尻をむけつつ上半身をクイッと振り向けたり、四つん這いになっていわゆる雌豹めひょうのポーズをしたり。


「はわわ!」


セクシーフェスティバルに、翔子と純菜は大慌てだ。

咄嗟に翔子が凛の右目を手で覆って、純菜は凛の左目を手で覆った。


「なにすんのさ!」


凛が抗議するけども


「「 見ちゃ駄目! 」」


と2人に言われてはどうしようもない。


こういうときは歯向かっても好いことはないと凛は調教…もとい学習しているのだ。


屋外である。

お陽様がさんさんと照っているなかでの、あられもないポージングである。


だからこそ公園のはじっこの人目につかない場所での撮影なのだ。


実際、こんな公然わいせつっぽいことが許されるのだろうか?

読者さまは疑問に思われるだろう。


でも、実際に許可なく撮影していたっぽいのだ。


なんせ2008年に写真家の篠山紀信氏が、青山霊園でヌード撮影をしたとして、公然わいせつ罪と礼拝所不敬の罪で起訴されているのだ。その際、ビックリすることに、篠山紀信氏側は墓地の管理者に許可をとっていなかったというのである!


というわけで、2008年あたりまではフツーに青空サンサンな野外で、誰はばかることなく、こういったグラビアの撮影がおこなわれていたと思われるのだ。


翔子と純菜はしばらくのあいだ、撮影を見ていた。


翔子にしたら、煽情せんじょう的なポージングの数々は勉強になった。

もちろん、男の子を誘惑する手段としてじゃない。漫画でのキャラクターの見せ方、としてである。


純菜にしても、写真撮影はこういうものなんだと面白くみていた。


ただし、それは先にも言ったように『しばらく』の時間だけだ。


「レフの向き! 何年やってんだ!」


「はい!」


「のろま! そっちじゃないって分かんねぇのか!」


「はい!」


どんなに平太に口汚くののしられても、梢は「はい!」と従っている。


なんだか見ていられなくて


「帰ろっか」


「そうしましょう」


翔子と純菜は凛に目隠ししたまま回れ右をした。


凛はされるがままである。


充分に離れたことで凛は解放されたけど


「ふん!」


とそっぽを向くほどに不機嫌だった。


そのご機嫌取りで、翔子と純菜が凛にアイスをおごる羽目になったのは、仕方のないことなのだ。

因みに。買ったアイスは『クロキュラー』である。食べると、舌が黒くなってしまうのだ。


「べー」


と3人で舌をだしあって


「真っ黒!」


と大笑いして帰ったのだった。






そんな出来事も記憶に新しい、ある日。


「リン! 写真集の撮影が決まったぞ!」


何時もながらテンション高めで神宮寺達也が電話を寄越した。


・・・この後の展開は、読者さまも推察できるでしょう!

平太と梢がでてくるとお思いでしょう?


ところが、である!


「わたくしが鹿野かの天全てんぜんです」


撮影の当日に自己紹介をしたのは、当代随一といわれるほどのカメラマンだった。

年齢は39歳。いかにもアーティストな自己主張の強い眼光と、陽に焼けたツヤツヤな黒い肌が印象的な人物だ。


腕は間違いなく一流。

とくに女性の色気を写真におさめることに関しては天才的で、彼が撮影したグラビア・アイドルの写真集は書店での売り切れが続出で、増刷待ったなしなのだ。


しかし、鹿野天全には悪い噂もあった。


女癖が悪いのだ。撮影した美人さんに手をだしてしまうのである。


今回、リンの撮影を申し出たのは天全からだった。


達也としても迷ったのだ。

鹿野天全の悪癖は、達也の耳にも入っているほどだった。


「え! あの子もなの!」


と実はピュアな達也が心底驚いてしまうような清純派芸能人との噂さえあるのだ。


迷った。

考えすぎて、花弁をちぎっては「やる」「やらない」と花占いをしてしまったことさえある。


そうして、決めたのだ。


天全の力を借りることを。


彼の撮影した写真集が発売されたのなら、リンは2段飛びどころか、10段抜かしで、芸能界に羽ばたけると考えたのだった。


「リン…」


天全には気をつけろ。という言葉はぎりぎりで我慢した。


気をつけろ、と忠告したのならリンは確実に天全を警戒するだろう。

そうなれば、リン本来のイキイキした快活さを損ねてしまうように思ったのだ。


だから、達也はこう口にした。


「ちゃんと、見てるからな」


リンにしてみたら今更なことだ。

人手不足のせいでマネージャーでもある達也は、何時だって現場にいっしょに居るのだから。


更衣室で水着に着替える。


「うへ~」


である。スカートでさえ嫌な凛なのだ。


「我慢しろよな」


「そーですわよ、お仕事なんですから」


タックとチックには事前にしつこいほど言い聞かせられているのだ。


「わかってるよ、もう」


リンは素直に水着を身に着けた。


だいたんにもビキニである。ただしトップスはナイナイペタンが誤魔化せるようにとの配慮からかフリル状だ。


そうして更衣室から出てきたリンを見て、天全は「ほほぅ」とうなった。


ボディーラインは、ハッキリと子供だ。色気の欠片もない。

だが、肌が綺麗だった。

今まで、誇張でなく星の数ほどの女を見てきた天全をして、リンの肌は飛びぬけて綺麗だと思えた。

それこそ生まれたての赤ン坊もかくやだ。


これなら! と心の内で思う。


撮影が始まった。

今更ながらの説明で恐縮ながら、場所は天全の所有しているスタジオだ。


さすがに売れっ子の天全である。

スタッフが幾人もいて、広やかなスタジオで忙しそうに動いている。


実はココには翔子と純菜もいた。


純菜はリンのファンクラブの運営を任されている。その役職? の強権を発動して、リンの撮影に同行したのだった。


写真撮影にはまっている純菜の興味本位という点は、その通り。けど、それ以上に加納天全の女癖の悪さを聞きかじっていた翔子と純菜はリンさんを守るために参加を強行したのである。


「違う! そのポーズじゃない!」


撮影は難航した。


天全の要求に、リンが応えられないのだ。


天全は『女性』の色気を撮ることにかけては天才である。

しかるに、リンは中身が小5なのだ。応えられるはずがないのである。胸の谷間を強調とか言われても?だし、ヒップアピールと言われても、そもそもリンのお尻は小さい。雌豹めひょうのポーズはどうかといえば、雌豹というよりも仔猫がキョトンと振り向いただけな感じと、お粗末にもお粗末なポージングだ。


残念なことに、写真の撮影に魔法は効果をもたらせない。

リンの魔法は、今のところ『歌』と『ダンス』に限定されているのだ。


天全に怒られて、リンはテンパった。

怒られ続けるうちに、リンから溌剌としたものは消えて、ぎこちなさだけがあった。

泣いちゃう5分前ぐらいである。


「もうやめだ!」


遂に怒声を張り上げると、天全はカメラをスタッフに押し付けてしまった。


まさかの事態だ。


「くすくす」


と鈴が鳴るように誰かが笑った。

緊迫した雰囲気の中で、その笑い声はよくとおった。


スタジオの視線が、笑った誰かに向けられる。


そこに居たのは女の子だった。


「そういうことなら。わたしの撮影を早めにしてくれますよね」


藤堂美也子だった。

リンがアイドルとなって初めての失敗です。


6/28 リンが水着に着替えるくだりを追加しました

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