42:遠足の日
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6月である。春である。
そして遠足である!
6月6日。
快晴ではあるけれど、ちょっとばかし肌寒いその日。
リュックを背負った凛は家を出た。
普段と同じようにブルーム学園へ行く。
いったん校庭に集まって、そこから電車にのって近場にある山へ向かって山登りをするのだ。
まぁ、山登りといっても小学5年生なのだから本格的なものじゃない。
低山を山道に沿って登って、頂上の見晴らし台でお弁当を食べて、下山するだけだ。
スクールゾーンを進むうちにも、凛と同じようにリュックを背にした子供がぼちぼち見えてくる。
そのなかで顔見知りを発見した凛は「おはよ!」と声掛けをすると、一緒になって学園へと向かったのだった。
さて。ブルーム学園には『お兄さん、お姉さん、学習』なるものがある。
中等部に上がった児童に、去年までいた初等部とは違うのだという自覚をもたせようという学習である。
その一環が今回の遠足にも適用されていた。
具体的に言えば。
「まさか、凛が弟になるとはね~」
腐れ縁だわ、と翔子が肩を竦める。
「しょうがないから、弟になったげるよ」
そんなことを言いながらもニッコニコの凛だ。
そう。遠足で、中等部の1年生が、初等部5年生とペアを組んで、引率するというものだった。
どうして初等部5年生なのか? 疑問にお思いでしょう?
アンサー。12歳の児童が引率するのだ。4年生以下では手がかかるし、6年生では年齢が近すぎる。そういった理由である。
だが、通常は同性同士がペアを組む。お兄さんなら、弟。お姉さんなら、妹。といった具合だ。
けれど凛と翔子に限っていえば、あぶれてしまったので偶然にも姉と弟でペアになってしまったのだ。
まさしく翔子の言うように『腐れ縁』である。
決して、作者の都合ではないのだ!
純菜はといえば、ペア学習には不参加である。
彼女の場合は家柄が良すぎて、妹役が緊張してしまうだろうことが予想されたからだ。
というわけで。
「わたしも凛くんのお姉さんに立候補しま~す」
と勝手にこんなことを言う始末だ。
最初からその積もりだったのだろう。
人前なので、さすがに凛に抱き着くようなことはしないけれど、やっぱりニッコニコだ。
相も変わらず、両手に花の凛である。
クラスメイトの男子も女子も、お姉さん2人にモテモテの凛に憧れの目を向けるばかりである。
これが2010年以降なら、こういう言葉を使ったに違いない。
リア充、爆発しろ! と。
だが、読者のみなさんはご存じのように、凛はリア充ではない。
翔子には弟のようにしか思われてないし、純菜には言っては悪いがペットのようにしか扱われていないのだから。
しかも。小学生にして、アイドル稼業もしなければならずに、二足の草鞋をこなしているのだ。
もはやサッカーをする時間もテレビゲームをする時間もない。大忙しの凛である。
不憫!
凛たちは学校を出発した。
電車に1時間ほど揺られて、山のふもとの駅に着く。
もちろん1時間も電車にいたら、暇を持て余して大騒ぎ……にはならなかった。
他の乗客の皆さまの迷惑になるから騒がないようにと、先生に言い含められているのだ。
バブル期とはいえ昭和の時代の先生である。
現代のモンスターペアレントの陰に怯えなければならない先生とは違って、純粋に恐いのだ。ふつーに大声で叱っちゃうのだ。気の弱い子供なんて泣いちゃうのだ!
いよいよ目的の駅に着いて、山登りが始まった。
先生たちは分散して生徒を見守る。
即席の兄弟・姉妹なのだ。上手くいくペアばかりじゃない。そんなペアには先生が割って入って、取り持ったり、駄目なようならペアを解散して、グループに組みなおしたりするのだ。
凛と翔子と純菜は、言うまでもないけど仲がいい。
しかも3人とも運動をしているので、他のペアに先駆けてドンドンと道を進んでゆく。
「1等を狙おう!」
「狙っちゃおっか!」
「狙っちゃいましょう!」
ノリノリである。
翔子はついこのあいだまでサッカーをばりばりこなしていたし、
純菜もまた「わたし、毎日走ってますから」体は資本だと弁えているので健康管理に気を使って毎日3キロのランニングをしているぐらいなのだ。
余裕のよっちゃん、ぶっちぎりの1位で頂上に辿り着いてしまった。
遠足のしおり、だと到着は11:40分頃になっている。
なのに、3人の到着時間は11時ジャストである!
「あたしたち、お花を摘んでくるから」
「凛くんはココで待っていてくださいね」
翔子と純菜は言った。
お花を摘む、というのはトイレのことだ。
けど、そんなこを凛が知っているはずもなく。
「2人だけでズルイ! ボクも行く!」
と言ったところで、翔子にデコピンをされた。
「お花摘み、ていうのはお手洗いのことなの!」
「な~んだ、おしっこか」
つまらない、とばかりに凛は両手を頭の後ろで組むと、2人から離れた。
「ほんッと! デリカシーないんだから!」
「まだ子供なんですもの、仕方ありませんわ」
そんな声を聞きながら、ぶらぶらと歩いて。
「もーし、そこのかた」
「サッカーボールもってくればよかったなぁ」
「もーし、もーし、そこのかた」
ん? と凛は立ち止まった。
「もしかして、ボクのこと?」
振り向いた凛は、8歳ぐらいの子供を見た。
「そうそう、あなたです」
おかしな子だった。
不可思議な感じを受ける子だった。
男の子とも女の子とも判別が出来ないのだ。中性的? そんなもんじゃない。性別がないような、そんな感じなのだ。しかも、その子は暗い緑色の不可思議な髪の色をしていた。
「あなた。ドリームワールドの関係者ですよね?」
不可思議な子は、そう言った。




