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17:オーディション本予選までの日

ぶつ切り風味。

パンパカパーン! とお風呂を上がって部屋に戻った凛に、タックとチックが魔法なのだろう、くす玉を割ってみせた。


「「 おめでとう 」」


金銀の紙吹雪が舞う中を、2匹の真っ白いハムスターがベッドの上で手をつないで踊っている。


「え? なんかあったの?」


凛はびっくりだ。


「なにがって、君、魔法のレベルがあがったじゃないか」


「そういえば…! あれって、なんで上がったの?」


「笑顔ポイントですわ。あーたの魔法は、大勢の人を笑顔にしたらしただけ、レベルが上がりますのよ」


「ほほう」


凛は偉そうにうなずくと、ベッドサイドに勢いよく腰掛けた。

弾みでタックとチックがボンヨヨヨーンと浮き上がる。


それで魔法が解けた。

掃除が大変だなぁ、と凛が考えていた紙吹雪が跡形もなく無くなったのだ。


ボンヨヨヨーンと浮かんだ2匹のハムスターは空中を泳ぐようにして、それぞれが凛の左右の肩に着地した。


「ちなみに、あーたの今の笑顔ポイントは10ですわよ」


左の肩でチックが教えてくれる。


「アイドルになったら、もーともーと笑顔ポイントを稼げるな!」


右の肩でタックがワンツーパンチのシャドーをしながら言う。


「アイドルね~」


う~ん、と凛はうなる。


「おいおい、今更になってごねるのか?」


「いやいや、違うよ。アイドルになるのは楽しそうだしさ、嫌じゃないよ」


お風呂場でも、拍手や歓声を浴びた時のことを思いだしてゾクゾクしたほどだ。


「でしたら、何がう~ん、なんですの?」


「だってさ、ボクなんかがアイドルになれんの?」


聞いたタックとチックは、呆れたみたいに溜め息をついた。


「これ、魔法が効きすぎじゃねーのか、チック?」


「そう思います、タック?」


う~ん、う~ん、と凛と2匹のハムスターは同じように悩んだのだった。






翌日の学園は、もちろん金髪の女の子の話題でもちきりだった。


ラッキーにもリンを目にできた子は、どんなに可愛らしかったかを凛が赤面するほどに話して聞かせ。

歌を耳にすることのできた子は、どんな歌だったかを歌って聴かせて「へたくそぉ」と笑われて、笑っていた。


そんなリンの話題はブルーム学園だけに留まらなかった。

あの家でも、その家でも、奥様達の集まりでも、会社でも、道端でも、喫茶店でも。

ありとあらゆる所で『謎の女の子』は話題になっていた。


そうして、人伝ひとづてでリンのことは広まっていったのだった。


午後6時30分。


何時も通りに干原家では家族3人と2匹で食事をしていた。


両親は遅くとも午後6時には帰宅する。

これは凛の家が特別なのではない。何処の会社も5時に終業するのが当たり前なのである。家庭のある人は家路をたどり、独り身の人は個人経営の居酒屋で一杯をひっかけたり外でゆっくりと食事を楽しむ。そんな余裕が当たり前にあるのだ。


「お、そろそろだな」


正彦がチャンネルを変えた。

ローカル放送のチャンネルだ。


「あ~、どんな子なんだろ? どきどきするわ」


散々に『謎の女の子』のことを聞かされたむつみは期待に胸を膨らませていた。


やがてテレビにリンが映しだされた。

正彦のった映像だ。


情報が遅い? しかし、こんなものなのである。

インターネットも携帯電話すらない時代ということを忘れてもらっては困る。


「もっとしっかり撮りたかったよ」


正彦のぼやく通りで、あまり良い映像ではない。なんせ、ただでさえ画質の荒い持ち運び型のカメラで、デパートの屋上から公園を遠撮しているのだ。しかも転落防止のネット越しだった。女の子の顔まではしっかりと映ってない。


それでも。


「可愛い子ね」


むつみの言うとおりに、そんな感じだけは分かった。


雰囲気というものがある。それが画面越しにも伝わってくるのだ。


そして歌だった。

これは残念ながら、映像以上に程度が悪かった。なんせ距離があるし、人でごった返しているのだ。雑音のなかでなんとなく歌声が聴こえる、それぐらいでしかない。


それでも。それでも。


「好い歌ね」


そう感想がでるほどだった。


放送はものの3分ほどで終わってしまった。


そのあいだ、凛はほとんどテレビに目を向けなかった。


「凛ったら、興味ないの?」


むつみが訊くのに、凛は好物の高菜漬けをおかずにご飯を食べながら


「あんまり」


と答えた。


「そっかそっか、凛はまだ色気より食い気なんだな」


「10歳だものね」


何も知らない正彦とむつみは笑い合うのだった。






この番組の視聴率は1パーセントもいけば御の字というものである。

なんせローカルなニュース番組なのだ。


それが『謎の女の子』の放送時間だけは、なんと15パーセントにまで跳ね上がった。


そして局のお偉いさんは急遽、MISAKIグループに連絡をすることになる。


「後楽園球場で催すオーディションに密着させてくれ」


というものだった。


既にオーデイションを放送する局は決まってしまっている。東京に本社のある、球団をもっている大手だ。


そこで裏技を考えた。

オーディションの舞台裏を撮影させてほしいと申し込んだわけだ。


もちろん。狙いは謎の女の子である。


MISAKIグループはこれを了解。


この日から、ローカル局は全力でオーディションの裏側放送の宣伝をするのだった。






当事者の凛である。


彼は呑気に過ごしていた。

気負いとかは全ぜ~んない!


落ちたら落ちたでしょうがない。

それぐらいの気持ちなのだった。ストレスとかは皆無である。


学園で勉強して、帰りにみんなと校庭でサッカーして、帰宅したらテレビゲームをする。そして宿題を忘れて先生とむつみに叱られる。そんな日常をふつ~に過ごしていた。

おっと忘れてはならない。日曜日にはサッカー・チームで練習もしている。


しかしながら、ここで1人だけヤキモキと気を揉んでいる人がいた。


純菜である。


「どうしよう…」


連絡をしようにも、リンの所在は知れないのだ。


「来てくれるのかしら?」


ひたすらに気を揉んで、純菜は『凛くん人形』を抱きしめるのだった。

次回、オーデイションの本選。

…だと思います。


あと、本文では書いてませんが。

リンの点数は今回も満点でした。

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