表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/128

11:神宮寺達也が天使に魅了された日

書けた、というか。

書けてしまったので。

神宮寺じんぐうじ達也たつや

それが彼の名前だった。


眉目秀麗にして成績優秀、品行方正でいて運動神経抜群。

加えて、父親が神宮寺グループの社長ともなれば、誰もが達也をチヤホヤと構った。


世界は俺を中心に回ってる。

誇張ではなく、達也はそう思っていた。


ただ、そんな達也に冷たい目を向けてくるのが1人。それが婚約者のみさき若葉わかばだったが、当時の達也からしたら、ちょっと居心地を悪く感じるくらいで、ご機嫌取りをしながら、おおらかな気持ちで接していれば、それで済んでしまう、そんな存在だった。


でも、それも過去のこと。


2年前。達也が大学1年生の時だ。

達也の父親が失脚した。会社の資金を横領して愛人に流していたのだ。


このことは内々で処理されたので、父親は逮捕こそされなかったものの、ありとあらゆる資産を没収されて、北海道の果てへと追放された。

母親は離縁されて、実家へ戻された。

そうして達也はといえば、若葉との婚約を解消されたうえにも、大学へ通うためのお金がままならず、中途退学。彼は神宮寺グループのお情けで芸能事務所『アポロ・プロ』の社長へと就任したのだった。


社長、とはいえ。

アポロ・プロは業界では新参だ。伝手だってほとんどない。実際のところ、ほとんどの社員は神宮寺グループからの出向で事務所に姿を見せないし、それもそのはずでタレントなんて1人もいない状態だった。


つまりペーパーカンパニーのようなものだったのだ。


神宮寺達也は、しかしながら絶望しなかった。

前向きな男なのだ。


タレントがいないのなら、俺が探せばいい。


そう考えて、達也はアイドルのオーディション会場のひとつに足を運んだ。

どうやらオーディションは2段階あるようで、後楽園会場で他の芸能事務所と競ったのでは、どうしたって勝ち目がない。だったら、後楽園に行く前に青田買いしてしまおう。俺のキラリン笑顔にかかれば、嫌とは言うまい、そんな風に考えていたのだった。


達也は……ちょっとナルシーなのだ。


そうして会場に張り込むこと朝から2時間と少し。


「外れだったかな」


眼鏡に適うような娘はいなくて、他のデパート会場に足を運ぼうとしたところで。


出会ったのだ。

美少女と。


綺麗な女の子だった。

達也はこれまで、多くの美人をみてきた。けれど、目の前の女の子は、そんな美人の誰とも違っていた。親近感を感じるというか……幼いころに遊んだことのある遠い親戚の女の子と久しぶりに会ったみたいな…そんな不思議な感じがするのだ。


達也は、偶然にも転びそうになっていた女の子を救った。


これは好印象だろう! 達也は内心で拳を握っていた。

あとはキラリン笑顔で女の子の名前を訊いて…。


「知らない人に、名前は教えられません」


「え?」


思いもかけない反応だった。


このキラリン笑顔でなびかなかったのは、岬若葉ぐらいなんだけど…?


「では、これで」


「え? ええ?」


颯爽と歩き去る女の子を達也は呆然と見送って


「しまった!」


彼女がステージにあがって、ようやく回復した。


周囲の観客が、女の子に注目しているのが分かる。


「圧倒的だな」


改めて達也は思った。カリスマというのか。人の目を嫌でも惹きつけてしまう、そんな不可思議なものを女の子は放っていた。


女の子が司会者にマイクを渡される。


普通はココで名前を名乗る。


けれども、女の子はいきなり歌いだした。


「これは…!」


達也は我知らず口許を手でおおった。そうしないと歓喜に叫んでしまいそうだったのだ。


それほどに女の子の声は美しかった。

歌は聴いたこともない曲だ。ルールーとしか歌ってない。


それでも分かった。

分からずにはいられなかった。


「…天使」


アイドル? そんなものじゃない。彼女は国民的アイドルになれる!


よくよく聴けば、女の子の歌はへたっぴだった。

小学生みたいに拙い。それが味といえば味だが、その下手さは逆にいえば伸びしろだった。

キチンとした先生に習えば、どこまで伸びるか…。

空恐ろしさすらあった。


女の子の歌は、ものの2分もなかった。

ペコリ、と女の子が頭を下げたことで、ようやく終わってしまったのだと達也は気付いた。

それほどに惹き込まれてしまったのだ。


達也だけじゃない。

みんながみんな、屋上にいた人は誰もが同じように魅了されていた。


女の子が困ったように司会者を見る。


「あ、ああ」


司会者は思い出したように女の子の差し出すマイクを受け取った。


ごくり、と図らずも生唾を飲み込む音がマイクを通じて会場に広がる。


「あ、え~。拍手をお願いします」


途端に割れんばかりの拍手の音がした。


点数パネルの表示が一気に上に到達する。


「100点! 100点です!」


司会者が興奮して、女の子は小学生男子みたいに「おっし」とガッツポーズをしていた。


そんな様子を見ながら達也は『彼女しかいない!』心のなかで決めていた。

絶対に、あのをアポロ・プロでスカウトする、と。

基本的に、リンが歌う時は他の登場人物からの視点にしたいと思っています。


そして、今日の投稿で精魂尽きましたので、次の投稿は日曜日辺りになるかと。

ごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ