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【ゆる募】お題  作者: 犬小屋ぽち
17/18

【お題】昆布

もう自分の本当の名は遠い記憶の彼方に霧がかって思い出せない。

いや、生きる意味そのものを見出せない私には、名前など端から意味が無かっただけなのかもしれない。


目の前の開けた大地のあちこちから煙が立ち上っている。

罵声と血の匂いに溢れたその光景は、もはや慣れ親しんだ日常の風景であった。

だからこれも当たり前の事なのだと、男は手で傷口を抑えた脇腹に視線を落とした。立ち上がる気力すらなく、座り込んでいる自分に、じりじりと迫る足が視界の端に映る。

順番だ。ただ、順番が来ただけだ。

男の脳裏に浮かんだのは、もう帰って来なくなったかつての戦友たちとの日々であった。


迫る死という現実から逃れるように、そして、思い出を自分の中に大切にしまい込む様に目を瞑る。気力も何もかも枯れてしまった自分でも、それぐらいなら出来たから。


大地を踏み鳴らす音、砲撃の轟音、断末魔、そんな戦場を支配していた騒音の中で、キィンと甲高い音が耳に入ってきた。

いつまでも自分の命を刈り取る一撃は来ず、男も何かおかしいと気付く。

そっと目を開けた。


「昆布さんのこと呼んだよね!!?」

そこには見知った顔の奴が一人。なんだ、メンがヘラってる人か。

「呼んでない。」

男はそう言い、取り落していた自分の剣に手を伸ばす。


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