【お題】たいたんとぽちの友情
『EXの壁』と呼ばれるその鉄の檻で日本国と茨城国が分断され早3ヶ月が過ぎようとしている。
突如として日本に宣戦布告したテロ組織【Ti-TAN-DAYO】によって支配下に置かれた茨城県は独立を宣言。ある日突然隣人が敵になるという未曽有の事件であっても、日本国民はテロ集団など即座に鎮圧され変わらない日常が戻ってくると、心のどこかで思っていた。
しかし、【Ti-TAN-DAYO】は用意周到であった。
茨城が独立宣言を発表するのと同時、群馬県もこれに同調。群馬国を名乗る。
これに国民は「群馬国って邪馬台国となんか似てね?」と大喜利を開催。
【Ti-TAN-DAYO】鎮圧が後回しになる要因となった。
明日どうなるかも分からない、そんな不安と恐怖が国中に蔓延していたとある日の夜。
利根川を泳ぎ切り、EXの壁を見上げる者がいた。そう、それが私、ぽちである。
「お前がそんな事をする必要はない」と周囲の人間に止められたが、私はまだ顔も見た事も無い人の身を案じてここまで来ていた。
とあるゲームで少しの間とはいえ一緒に遊んだ彼の名は「たいたん」。
茨城に住んでいるという事しか知らないが、今、このEXの壁の向こうで確実に困っているであろう人物。
「待っていろ、今助けにいく」
誰に話しかけるでもなく、自分自身の覚悟を確かめる為の呟きだ。
そして、私は壁に手をかけ、登り始める。
この先にいるまだ友人とも呼べないのかもしれない、その男との戦いが待っているとも知らずに。