【お題】一日一ジンギスカン・ラマダン
ひつじさんはフレンドさんのお名前です。
その日、ひつじは恋をした。
恋を自覚した。自分の恋は実らない事も一緒に自覚した。
ひつじが好きになった羊は、とある雄羊に目を向けて離さない。ひつじは、そのあまりにも分かりやすすぎる恋する羊の横顔にときめいてしまったのだ。
雄羊もひつじが好きな羊を気に入っている様子だった。
嫉妬だ。
分かっていてもどうしようもない、胸の奥から湧き上がるようにしてやってくるドロドロしたものに身体を動かされて、ひつじは雄羊を睨み付ける。
ふと、雄羊を悲しそうな顔をして見つめている雌羊が視界に入ってきた。
この子も僕と同じだ。
そう思った。その悲しそうな顔をしている羊もひつじを見つけたようだ。
互いの傷を舐め合う様に二人は寄り添った。
・・・
ある日、人間達がやってきて彼女を連れ去ろうとした。
ひつじはその身で人間にぶつかり、それを阻止しようとする。
「なんだ、この凶暴な羊は!!」人間が叫ぶ。
振り上げたこん棒が頭に当たろうかという時、彼女がひつじの身体をぐいと押した。
「大丈夫よ、いつもの様に毛を刈られに行くだけだから」
「君は知らないのかもしれない!聞いてほしい!最近一日に一匹ずつ仲間たちが連れて行かれる!誰も帰って来ない!!」
ひつじは気付いていた。自分達は人間達にとっての餌であるのだと。自分だけが気付いているのだと、そう思っていた。
「君の好きな羊も連れて行かれた!!でも戻ってきていない!!」
ひつじの叫ぶ声に、彼女は幼子をあやすように応える。
「…私が好きなのは、あなたよ、ひつじ。明日からはラマダン。暫くは大丈夫でしょう。その内に、ひつじは逃げて、ね」
そう言って彼女は人間達の方に自ら歩み寄っていった。
手間が省けたと人間達は彼女は連れて行く。
後に残されたのはめぇめぇと鳴くひつじ。
彼女を連れ去った人間にはその言葉の意味は理解出来なかった。しかし、もし理解出来ていたならこの時ひつじをこのまま放っておくなどしなかっただろう。
「ころすころすころすころすころすころす………」
ひつじのラマダン期間中の肉体改造計画が始まった。