学園長の歓迎会
暫くぶりです。やっと更新できました!♪ヽ(´▽`)/
ご指摘を頂いたのでちょっとつけ加えておきます。
紫安さんはリュシアン・セイヤードっていうフランスの方の名前で学園長になってます。お偉いさん数人しか、その正体を知りません。
他の先生方は紫安ママの血縁だと思っています。
わかりにくくてすいませんでした。これからもよろしくお願いしますm(__)m
次の日、清園学園高等部に籍を置く総勢550人の男女が講堂に集まっていた。
入学式のために設置されていた椅子は取り除かれ、ドレスやタキシード姿の着飾った男女がそれぞれグループに別れて思い思いに喋っている。
パーティーが始まる時刻が近づくにつれて、皆の注目は未だ閉じられている講堂の扉に向けられていく。
その扉の奥では
「ちょ、やべぇ、マジで緊張してきた」
「ちょっと西那!失敗とかやめてよね、ちょーハズいじゃん!」
「お前もな」
D組の級長2人がいつものように言い合ってる。
そこまで緊張してないのかな?よかったよかった。
「みんな大丈夫そうだね。先生に腕章もらってきたから、左腕につけて」
「柊、今どこ見て大丈夫って判断したんだよ。東浦なんて真っ青じゃんか」
と西那が捲し立てるのを聞き流しながら、それぞれの組が書かれた赤い腕章を配っていく。
「はい、葛西さん」
「ありがとう紫安君!」
「うっわぁー、目キラキラさせんなよ、キメェーな」
「西那うっさい」
こっちは通常運転だけれど、さっきから一言も喋ってないもう1人の騒ぐ系要員が心配だ。
「どうした北上?いつになく静かだな。緊張してんの?」
西那も気づいたようで声を掛ける。
「逆になんでお前らいつも通りなんだよ」
呆れたようにそう言うE組の派手級長の表情が硬い気がする。
西那と葛西が顔を見合わせる。
「やつら……俺らが失敗するの待って見てんのに、何で平然としていられるんだよ」
「北上くん……」
俯いた北上を、隣の北川さんが心配そうに見遣る。
北上の言う"やつら"はおそらく上級生と、同級生の中でも家格が上位の者達だ。
確かに、生徒の間で自分より家格の低い家の者を下に見る風習がこの学園にある。
まあ、その家格が上位の生徒の筆頭が如月さんと俺なんだけど。
──あ、もちろん俺は見下してなんかいねぇよ? 俺も前世は普通民だったんだから。
「そんなの、気にしてたらあいつらの思う壺だって」
「あんな特訓受けといて失敗できるかよ」
葛西と西那が励まそうとするけど、今一釈然としない顔をしている。
「そろそろ時間だよ」
「柊……」
「……失敗したら、西那君とスローダンス踊ってもらうよ、北上君。頑張ってね」
「っておい!」
「…………なんか一番やる気出たかも」
「俺もだ。柊すげぇ……」
「「……………」」
「何か失礼なこと考えてない?小南君、南部さん」
「「滅相もございません!」」
「ふうん……そう?」
ガクブルする2人から目を離して俺は先生に準備オーケーのサインをする。
「じゃあ、行くよ」
如月さんと並んで先頭で講堂に入ると、何百もの好奇の視線が注がれる。
これは今世で流石に大分慣れた。
隣の如月さんも難なく受け流しているが、後ろがガチガチに固まっている。
俺達10人が講堂の中央まで進むと、2階で待機していたオーケストラが打ち合わせ通りの曲を奏で始める。
ダンス練習で飽きるほど聞いた馴染みの音楽を聴いて、皆の緊張が少し解ける。
てか、たかが学校のパーティーでオーケストラ呼ぶとか流石金持ち学校だな……
緊張でガチガチだったけど、皆なんとか1曲を踊りきる。
踊り終わった皆は晴れ晴れとした表情だ。頑張ったな。
ここで2年、3年の級長達が加わり、打ち合わせ通りにC、D、E組の級長が抜ける。
残った者で先輩達に混ざって踊り、漸くお勤め終了だ。
爽快とした足取りでダンスフロアを去る同級生に続いて、中央を先輩方に譲り端の方へとステップを踏んでいると、如月さんの顔が僅かに曇った。
視線を追った先には、男女の2人組。
「知り合い?」
「っ……ええ、まあ」
ちょっと不躾かもしれないが、聞いてみると、如月さんはやはり『しまった!』というような顔をして、曖昧に返事を濁す。
ダンスが終わると、パーティーはオーケストラごと校庭に移り、立食形式になる。
俺は如月さんを連れて講堂の階段を下りる。
深紅のドレスを着た如月さんは、やはり生粋のお嬢様で、重いドレスと高いヒールでも周りの女子達のようによろめくことはない。
「少し、挨拶して来ようか?」
如月さんは首を傾げた──こういう仕草も優雅だな──けど俺に付いてきてくれた。
彼女が俺のお目当てに気づいた時には先方も俺達に気づいていた。
「やあ、こんにちは、如月さん」
声を掛けてきたのはほんわかとした雰囲気のタレ目の少年、先程如月さんが見つめていた相手だ。
「……ごきげんよう、和田様、新井田様」
「ごきげんよう……如月様」
タレ目の少年の隣の女子生徒もおざなりな挨拶を返す。
「柊様……」
如月さんが控え目に声を掛けてくる。
俺が突然連れてきてしまったので戸惑っているのだろう。
「すまないけど、僕はちょっと用事があってね。付き合わせるのも忍びないから、少しの間彼に任せようと思って。知り合いのようだしね」
「先生に頼まれたものなら、私も……」
「いや、僕個人の用だから、気にしないで」
少年の隣の女子生徒が不満そうな声をあげる。
「ちょっと、私と和田くんは今からドリンク取りに行くところだったんだから。邪魔しないで」
「……いや、僕は……」
どっちかというと邪魔したの、俺なんだけどな。どうしてさも当たり前のように如月さんに噛みつくんだろうか。
こういう女は一生理解できそうにない。
「……それなら、お詫びに僕がエスコートしますよ」
少し腰を折って彼女の目の高さでにっこり笑んでみせる。
頬を紅潮させた女子生徒を連れて飲み物のテーブルの方へ歩くと、俺の目当ての喧騒が聞こえてきた。
──漸く用事の時間だ。
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