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学園長の行事確認

こんな学校あったら怖いな……






清園学園の高等部には特待生制度なるものがある。

それはある水準の成績を修めることを条件に、授業料から教材費、交通費まで学校が負担してくれる、という制度だ。


だが、それを利用しようとする生徒はあまりいない。


清園学園に通う者は皆、ある程度裕福な家の子供だ。

何々グループの会頭の子息とか、どこどこ会社の社長令嬢とか、そんなのがごろごろ転がっている。

俳優や芸能人や有力な政治家の子女達もごまんといる。


いわゆるセレブ学校なんだ、ここは。


そういうやつらじゃないと、この学校の馬鹿高い授業料が払えない。

因みに馬鹿高いとは俺の金銭感覚から言っているので、他の人は高いと思っていない。


そんなやつらにとって、特待生制度を利用することは優秀であることの証拠ではなく、授業料が払えないと大体的に宣伝するようなものだ。


そういう理由で特待生として入学するヒロインは、内部生からはもちろん、外部生からも白い目で見られるわけだが。



少し脱線したか。

言いたいことは特にないのだが、強いて言うならこんな御坊っちゃま御嬢様学校にも肉食がいたんだな、ってことだ。



「紫安君、紫安君、ここ教えてぇー。私たちわかんなくってー」


おう。挨拶、もしかして失敗だったか?

いやー、A組にこんなに肉食系がいると思わなくて……

てか、みんな初日より派手になってないか?怖ぇよ……



「お前らそんなのもわかんないのか。本当にA組か?どう考えても部分分数分解だろ」



近くにいた男子生徒が、俺の机の周りに集まっていた女子に向かってそれだけ言って、教室を出ていく。


おお、勇者か。それともバカか。

ん?あいつは確か……


「何よあれ。学年総代やったからって調子乗ってんの?」


「紫安君に級長取られて嫉妬してんじゃない?まじダッサ」


「そんなことより紫安くーん、お昼一緒に食べよぉ?」


随分とぐいぐいくるなあ。



「紫安、いるか?」



琉斗が教室に顔を覗かせる。隣に燈真の姿もある。


救世主か、お前ら。

まあ、女の子の対処は前世の姉達のおかげで会得しているつもりだけど。


「今日は約束があるから。ごめんね」


彼女らが「私たちも!」とか言い出す前に席を立つ。


「あー、その問題だけど、彼が言った通りにすれば解けるから」


もう話すこともない、という風に背を向けて教室を出る。



「大変そうだな、紫安」


「君も同じようなものだろう?」


「まあ、な」


なんたって手が届きそうな社交派タイプだもんな、燈真は。


「琉斗は?クラスはどう?」


「いや、こいつはみんな近寄れないんだよ」


「俺は避けられてるからな」


「「…………」」


「?」


「え、おまっ、本気か?」


「? 中等部でも俺が女子に避けられてたの、知ってるだろ?」


隣の黒の短髪と鋭い藍色の目を伴った精悍な顔を見る。

琉斗は寡黙な硬派タイプだから近づけなかんたんだな。納得。


「紫安さんや」


「何だい、燈真さんや」


「こやつはもしや、脅威的な鈍感に育ってしまったかの?」


「確かに、脅威的だね」


思わず口調が戻ってしまった。


でもこいつはこのままだと、ヒロインが出てきたときに無防備すぎないか?

これはどうにかしないと……


「お、紫安が真顔になった」


「っ……!!」


「ん?何ビクついてんだ、琉斗?」


琉斗に勘づかれたようだ。

安心させるために笑顔を作る──ダメだもっと怯えられた。



そんなこんなしているうちに食堂についた。

ここの食事はさすがお金持ち学校というくらいに充実している。

他の人は気にも止めないが。


3人で食事を選んで空いている席を探すと、長テーブルや円テーブルが置かれている中で、食堂全体が見渡せるようにそこだけ高くなっている場所が見える。

日当たりが良く、当たりスポットのはずなのに不思議と誰もそこに続く階段を登ろうとしない。

これはもしかしなくても──


「ああ、2階か?あそこは生徒会専用エリアだ」


「やっぱりそうなんだ」


なんだか選民意識が強そうな人が好みそうだ。

だが俺もゲームの紫安と同じように生徒会長になるつもりだから、そのうち使うことになるかもしれない。


──随分な自信だなって、そりゃ必勝策があるからな。



3人で連れたって窓の近くの席に着く。


今日は入学してから4日目、初めて午後まで授業がある日だ。

当然食堂を利用するのも今日が初めてだ。


それにしても、何だか周りに落ち着きがない。

どうしたんだ──って、あーっ!


「そういえばそろそろ新入生歓迎会の時期だったね」


「まだ1ヶ月あるだろ?」


「女の子からしたらもう1ヶ月もない、なんだよね、それが」


御坊っちゃま御嬢様学校の清園学園は年に数回、社交の場としてこういったパーティーを催す。

高等部では中間試験後の新入生歓迎会、夏休み前のサマーパーティー、そして冬のクリスマスパーティーの3回だ。


これは主に将来、このような社交界に足を踏み出す、もしくは既に踏み出している、財閥家や名家の子息子女達のための練習の場。

なので当然、そういった社交の場に相応しいマナーはもちろん、社交ダンスも求められる。


まあ、女子達が浮き足立たないわけもなく。


「その前に中間試験なんだけどね」


そわそわしてこっちをチラチラと伺い見る女の子達を眺めながら言う。


「それは言わないお約束だろっ……」


燈真が頭を抱える。


「なんなら、僕が見てあげてもいいけど?」


「マジで?!A組様が自ら?!」


「おい燈真──「お願いします、紫安様!」……遅かったか」


燈真を憐憫たっぷりの目で見る琉斗に笑顔を向ける。


「琉斗も遠慮なく、ね」


「え」


「でも大丈夫なのか?紫安。クラスでちょっとずつ範囲違うし、ここのテストは結構難しいぞ?」


「大丈夫、心配ないよ」


「そうか?で、琉斗はさっきからどうしたんだ?」


燈真が項垂れる琉斗を不思議そうに見る。


「…………紫安は……物凄く、スパルタだ」


「来年はA組に入ろうね?琉斗」


幼馴染みは絶望した顔をさらに引き攣らせた。







主人公が黒い……



でも作者も結構黒いって言われる。いみふ。



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