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学園長の級長任命



座席表を確認して、自分の席へと向かう。

席は廊下側から名前順で、柊は真ん中よりやや窓側の後ろの方の席だった。


まあまあ良い席かな。


俺は最後の方に入ったので、既にクラスメイトのほとんどが集まっていた。

内部生は中学からの友達や知り合いとはしゃぎ、対して新しく入った外部生は自身の席で大人しく待っている様子。


でもさすがは最優秀なA組とも言うべきか、まだ新入生だからか、俺を見て黄色い声をあげるような女子はいない。


大分ナルシに聞こえそうな発言だけど、この世界ではそんな漫画みたいなことが実際に起こる。

ここが乙女ゲームの世界だからか?

帰国したばかりの3ヶ月前に、街中で取り囲まれそうになった時は思わず逃げた。

でもあれはマジで怖かった。目ギラギラしてたし……



教室内の女子がひそひそと騒ぎ始める。

うん、とても静かだ。


おそらく俺らの中では燈真が一番苦労するだろう、というのは俺の勝手な偏見だけど、このクラスの人は色恋沙汰よりも成績を気にしていそうだ。


幾分か楽になりそうだ。

とはいえ大分注目されているようだけど。



俺が席につくと同時に担任らしき人が入ってきた。


「ほらー、全員席つけー。あー、俺はこの度A組の担任を任された櫻井だ。担当教科は数学。これから1年間よろしくな。お前らが成績を落とさなければ、それ以上の付き合いになるなあ。頑張れよー」


軽く脅してないか、この先生。


これから3年間、A組の担任はこの男がやるのか。

まあ、この仕組みは学園長に就任した中一の頃から知っていたが。


俺の場合、これまた柊紫安の暴走スペックでおそらく3年間A組になる。

前世でも俺は名門私立大に入るくらいには勉強ができたが、この紫安様の頭はもはや比べ物にならない。

そんなわけで高校3年間この先生のお世話になることになりそうだ。



「全員が自己紹介している時間はないから、そこら辺はお前らで勝手にやっとけー。今日は級長を決めて、配布物を渡せば解散だ。ってわけで男子と女子から級長1人ずつ決めるぞー」


そう言って、櫻井先生は立候補者を募るわけでもなく、教室を見渡す。


……あれ?これ先生が決める感じ?

でも皆も反対する気配がないので、これが普通なのか?

っていうか、なんか嫌な予感がするんだが。


「じゃあ、男子は新入生代表をやった片桐――いや、このクラスには柊がいたな」


はい、嫌な予感的中ー。


「んじゃ男子は柊がやれ。女子は……如月がいいか。柊と如月でよろしく頼むわ」


なんて適当な……

まあ、生徒会長という目標に一歩近づいたと思えば悪くないか。


「じゃあ2人は前出て軽く挨拶しろー。このクラスは外部生が多いからな。柊は内部生でも知らないやつが多いだろうし」


そんなやつに級長やらせんじゃねぇよ、と思わなくもないが黙っておく。

でもそんな文句はもう1人の被害者を見た瞬間に吹き飛んだ。


――もしかして、一目惚れっ?ってそんなわけないだろ。


正直内心は、げっこいつかよ、だ。

名前は聞かずともわかる。


如月玲奈だ。


そういえば、こいつも一緒の学年だったっけ。俺としたことが、失念してたわ。


見た目はまさにゲーム通り。

人形のような白い顔に長い睫毛に縁取られた焦げ茶の目。そして俺より少しだけ暗い色の長い髪は縦ロールだ。


そう、髪の毛が全部、一房も余すことなく丁寧に縦ロールに巻かれているんだ。


はい、そこのあなた大正解。

その通り、この如月玲奈こそあのゲームで、活躍していた悪役令嬢その2だ。


その2がつく理由はなんてことない、その1がいるからだ。

ゲームではどのルートでも悪役令嬢が2人登場し、如月玲奈はその内の1人。


性格は見た目通りのザ・お嬢様。傲慢でひたすら家柄や家の評価を気にする人物だ。


って、如月玲奈ってA組に入る程成績良かったんだ。

ヒロイン視点で見ていると、どうも他の学年の様子がわからない。

まあ何よりも周りの目を気にする人なら、勉強を頑張るのも納得できるか。



如月玲奈は、俺よりも席が前の方にあったこともあり、先に教壇に立って俺が隣に並ぶのを待ってから挨拶を始めた。


どうでも良いけど、こういうのは男子から始めるんじゃないのか。

別にいいけど。挨拶を考える時間ができたし。


「級長を務めることになりました、如月玲奈と申しますわ。皆様、これからどうぞよろしくお願い致しますわ」


そう言って、丁寧に腰を折る。完璧な淑女って感じだ。


ってか短いな。俺もそんなんでいいのか?


「同じく、級長になりました、柊紫安です。僕は小等部に半年ほど通ってたけど、外部生の皆さんと同じ状態だから、気兼ねなく話しかけてくれると嬉しいかな。これからよろしく」


仕上げににこっ、と笑うと、ポッ、と女の子達が頬をほんのり染める。


もちろん、わ・ざ・と♡




うわぁー、あざといわ、俺。







新入生代表の挨拶は毎年学年の主席がやることになっている。

紫安にならなかったのは、単に紫安が学年末のテストを受けていなかったから。


次回はまとめ(みたいなもの)になります。




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