学園長の友人関係
もっと早く更新する予定でしたけど、なかなか忙しくて(つд;*)
遅くなりました、ごめんなさい。
ブックマークなど、ありがとうございます。
件の乙女ゲームには、隠しキャラである柊紫安──つまり俺──を入れて、攻略対象は7人いた。
ヒロインの一つ上の学年に2人と隠しキャラ、同い年に3人、一つ下に1人、といった分布だった。
因みに教師枠はいない。
居たら居たでヒロインがそのルートに進んだ時、俺はそいつをクビにしなきゃならない。
俺、学園長だし。
強いて言えば教師枠は俺……になるのか……?
やめよう。俺も一応肉体年齢は高校生なんだ。
皆が席を立って講堂を出ていこうとする。
どうやら、考え事をしているうちに入学式が終わったようだ。
「紫安、帰ってたんなら連絡しろ」
声を掛けられて振り向くと、数年ぶりに会う幼馴染みがいた。
幼馴染み、とは言っても俺は小さい頃から外国と日本を行ったり来たりだったので、実際一緒にいた期間は短い。
それでも仲は良く、こいつは親以上に俺の表情が読める。
「ごめん。なにかと忙しくてね。最近やっと落ち着いたんだ」
──おい今、誰?とか思ったやつ、そこで起立。
俺はバカじゃないし、この見た目を最大限活用するために、外面にも気を配っているんだ。
そのために口調や態度は常に温厚で優しげ。
そうだよ。盛大な猫だよ。
そこで、皆様気になってくれているだろう俺の容姿だ。
まず、俺のフルネームは瑠紫安・セイヤード・柊という。名前の通り、日本人の父親とフランス人の母親をもつ、ハーフだ。
見た目は、贔屓目抜きにしても超絶な美魔女の母に、地を歩くダンディズムの父の良いとこ取りをしたような、さすが攻略対象という相貌。
現世での俺は、母のブルネットと深緑の瞳を受け継ぐ、どこはかとなく色っぽい雰囲気の美男子だ。
前々から思っていたが、このキャラだけ他のキャラ以上に設定がブッ飛んでいるんだ。
てか隠しキャラなのに全然隠れていない。隠しキャラが生徒会長をやっている時点で既に大分おかしい。
確かにゲームの柊紫安はずっと生徒会室に篭っていて、他のキャラを全員攻略して逆ハー状態に持ち込み、生徒会に入らないと、姿さえ拝むことができない仕様になっていたけど。
因みに俺はゲームの筋書きお通りに生徒会長になるつもりだ。
あんな脳内お花畑女に学内の権力者を誑かされてたまるかっつーんだ。
「久しぶりだね、琉斗」
「ああ」
改めてそう言うと、目の前のイケメンが嬉しそうな顔をする。
尤も、俺以外の人には無表情にしか見えないらしいが。
勘が良い人も良くない人ももうお気付きだろう。
そう、さすがゲーム仕様とも言うべきか、幼馴染みであるこの男も攻略対象だ。
身長は外国の血が入っている俺よりも高く、黒髪に濃紺の瞳をもつクール系イケメンだ。
ゲームでは、硬派で寡黙な先輩として登場する、轟琉斗という男だ。
「そろそろ行こ──「轟!」」
赤茶色の髪をした男子生とが駆け寄ってきた。
「……銅か」
は?こいつ、銅燈真かよ。
俺、ヒロインじゃなくて隠しキャラなんだけど。
なんでこんなに攻略対象がわらわら集まってくるんだ。
なんだか説明も面倒になってきたな。
皆様察してくれたでしょうけど、今さっき講堂を突っ切って来たこの男は、社交派スポーツマン枠の攻略対象だ。
俺は入学早々、同学年にいる2人の攻略対象の両方に会ったわけだ。
「初めて見る顔だな。外部生か?」
「……いや、去年までは外国に居ただけで、在学はしていたから、内部生という扱いになっているよ」
内心うんざりしながら、人好きのしそうな笑顔を向けてくる男に言う。
「あー、ってことはお前が噂の理事長の息子か」
「噂?」
「今年から理事長の息子が帰ってくるってな。お前、今時の人だぜ?」
隣を見ると、琉斗が神妙に頷く。
本当なんだ。
「とりあえず、教室行くか。あ、俺は銅燈真。よろしくな」
「柊紫安だ。こちらこそ、これからよろしく」
話ながら校舎へ向かう。
呆れるくらいに女子からも男子からも視線を向けられる。
さすが攻略対象達。って俺もなんだけど。
「そういや、高校からクラスが成績順になったけど、お前ら何組になった?」
「僕はA組だよ」
「Bだ」
「特進かよ……さすが理事長の息子だな……っておい、轟もBなのか!結構勉強できたんだな……」
「銅は?」
「俺はCだった」
「……うん、まあまあなんじゃない?」
「真ん中だな」
「何だよお前ら!俺勉強は普通なんだよ!」
いや、この学校での平均も結構良い方なんだが。
「そうだ、柊は結構運動神経良さそうだけど、部活は入るのか?」
「僕は生徒会……かな?」
「へぇ、優等生は違うな、やっぱり。ちなみに俺はサッカー部に入る。轟は水泳部だろ?」
「ああ」
琉斗の口角が僅かに上がる。
「轟は部活楽しみなんだな。ま、俺もだけど」
ニカッ、とここで爽やかスマイル。
ってか、こいつにもわかるんだ。
「銅君は、琉斗の表情はわかるんだね」
「いや、結構わかりやすいだろ、こいつ」
「そうだね」
何だか、琉斗がこいつと仲が良い理由がわかった気がする。
「ってかいいな、名前呼び!俺もそうさせえもらうから、お前らも燈真って呼べよ、琉斗、紫安」
「わかったよ、燈真」
「……銅」
「何でだよ。そこは素直に燈真って呼べよ」
「…………燈真」
そんな感じ喋っている間に教室に着いた。
2人と別れて、俺はA組の教室に入る。
ヒロインと俺の学園の覇権をかけた攻防戦の開始まで、あと1年。
8/5 燈真くんはバスケからサッカー部に転部しました。
……バスケファン、怒らないで。