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学園長の事後処理





「それでこれからですが、綾野あやの先生、東雲しののめ先輩……」


 生徒会長とその取り巻きが呆然と退出した後の、俺、東雲先輩、綾野先生、宇野の4人が残った学園長室で言う。


「いじめの処罰はできましたが、彼らに再び生徒会の仕事を任せることはできません。後期生徒会選抜までまだ暫くありますので、その間は僕と宇野さんが生徒会の仕事を手伝います」


「お、おう、助かる」


「わ、若様、私もですか? 残ぎょ──「宇野さん」はい、若様」


「あなたはかなりの期間、自分の仕事を少量だけど、生徒会の仕事に紛れ込ませていたようですね」


「「「え」」」


「東雲先輩と綾野先生は2か月の間、ほとんど2人だけで生徒会の仕事を回していたんですよ。2人でやるにはかなり負担も大きく大変だったようですね。その上宇野さんの──「はいぃぃ! わかりましたからぁっ! もちろんサービス残業ですぅっ!!」」


「そうですか? それは有り難いですね」


「……本当に少しだけでしたし……私も2人だけでやっていたなんて知らなかったんですよ……(ブツブツ)」


「全く……生徒会に回してもいい書類を仕分ける分の労力をその処理に使ってくださいよ……」


 宇野が何やらブツブツ言っていたので、同じ音量で嫌味を返してやる。うぐっ、という呻き声が聞こえた。



「僕はかすみ先輩の様子を見てきますね。では」


「あ、俺も付き合うぜ」


 東雲先輩がついて来ると言うので、一緒に廊下に出る。去り際に「ちょっと宇野さん! さっきの話は本当ですか?!」と綾野先生が宇野に詰め寄ってるのが見えた。……頑張れー。


「あー、その……柊」


「はい、何でしょう、先輩」


「その……今回のことは、ありがとな。本来なら俺が気づいて止めるべきだったのによぉ」


「いえ、先輩は生徒会で手一杯だったでしょう? 仕方ないですよ」


「おう、そう言ってもらえると助かるわ。それと、お前が学園長だっていうのも黙っとくから」


「ありがとうございます」


 この人も、長身で目つき悪くて怖そうだけど、成績は良くて生徒会も真面目にやってて……良い人なんだよなあ。ちょっとだけ強面だけど。強面だけどさぁ。

 生徒会の仕事も本当に辛かったらいつでも投げ出せたわけだし、あの状況では学校側も大して咎めなかっただろうに。



「「紫安!」」「しぃくん!」



 2人して無言になって歩いていると、廊下の向こうからフォーマル姿の友人達が駆け寄って来るのが見えた。

 精悍な顔つきのクール系イケメンはちょっと眉が垂れてて思案顔。爽やか系イケメンはいつもの楽天的な雰囲気と打って変わった真剣な顔。長身な2人をピョコピョコと追いかける少年ショタは眉尻下がっていて心配そうな顔。


 心配になって駆け付けくれたのだろう。

 こいつらにはこの数か月本当に世話になったなあ。今度なんか御礼でもするか。


「紫安、終わったのか?」


 3人を代表して琉斗りゅうとが俺に聞く。


「うん、一件落着だよ。皆今日まで頑張ってくれてありがとう」


「おう! 言ってくれたらまたいつでも手伝うぜ!」

「やったぁー! わるもの、げきたいだね!」


「生徒会の東雲だ。俺からも礼を言う」


「気にすんなよ。お前も大変だったみたいだしな!」


 頭を下げる東雲先輩にニカッと燈真とうまが人好きのする笑顔を湛える。いや、お前こそ……


「燈真、東雲先輩は2年生だよ……?」


「とし上のひとにおまえって……しかもため口……とまちゃん」

「………………」


「わかったから! 俺が悪かったって! だから無言はやめてくれ琉斗ぉ」



 集まった人でわらわらと保健室へ向かう。

 失礼します、と一言断ってから扉を開ける。保険医の先生、よし。かすみ先輩と片桐の距離、よし。



ひいらぎ



 かすみ先輩のベッドの隣の椅子に座っていた片桐が席を立つ。


「兄さん達は、どうなったんだ……?」


「先輩たちはしばらくの間謹慎処分になったけど、もう夏休みだし、さして影響はないよ。かすみ先輩の希望通り、経歴にも残らない」


 ベッドの上のかすみ先輩は小さく微笑んで、ありがとう、と言った。目もしっかり合わせてくれる。

 目元はまだ少し赤いけど、大分落ち着いたようだ。よかった。



「どうして? あんなことされたのに、ゆるしちゃうの?」



 カナがキャラメル色の頭を揺らして首をかしげる。他の人も口にはしないものの、皆も同じ疑問を抱いていることは表情から見て取れる。


「……私は今回のことで、何か、一生残るものを負ったわけではありません。だから彼らにも、一生残るような罰も受けてほしくなかくて、紫安君に頼んだんです。皆さんがどれ程尽力してくれたかを知りながらも、勝手に……すみません」


 かすみ先輩はゆっくりだけど、しっかりとした声で3週間前に俺にしてくれたものと同じ説明をしてくれた。

 やっぱり片桐元春()達を許す気でいるようだ。かすみ先輩は優しいな。


「ここに貴女のその判断を責めるような人間はいませんよ、かすみ先輩」


「柊の言う通りだ、かすみ姉。寧ろ、俺の身内が、すまなかった。償えるものならなんだってする。」


 片桐が頭を下げ、かすみ先輩が慌てて宥めて、俺らがそれを苦笑して見守る。そんな平凡な日常が続けばいいと、つくづく思う。

 俺だって、片桐元春()のかすみ先輩にした仕打ちに対して、あの罰は軽いと思う。でも最低限、彼らが金輪際かすみ先輩に関わってこないなら、それでいい。


──それにあいつらはこれから受験勉強、大変だしな!







◇◇♠◇◇♠◇◇♠◇◇♠◇◇




「全く……ルーシュが珍しく頼み事なんてしてくるから観ていたが、本当に全部自分で解決してしまうとは……小さい頃から優秀ではあったんだが、可愛げのないものだ」


「そういうものしょうか……。旦那様、こちらは?」


「ああ、それか。それは高等部の食堂の改築プランだよ。今回も結局私がしたことといえばルーシュの言った所に監視カメラを設置しただけなのに、優秀な部下を紹介して貰ったからね。ささやかなプレゼント(キャドゥ)だよ」


「私も家族も、旦那様と坊ちゃまに大変感謝しています。」


 新任秘書は食堂の改築がどうして息子へのプレゼントになるのか疑問を覚えたが、口にはしなかった。白羽という名のその男は、新しい主が一見そうは見えなくとも、結構子煩悩であることを知った。








長らくお待たせいたしました!ごめんなさい!

ナメクジからせめて亀くらいまで進化できるように頑張ります。


今回も読んでくださってありがとうございます<m(__)m>



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