学園長の断罪(1)
長らく更新がなくてすみませんでした。お持たせしました。
「さあ、先輩方。今日、先輩方がここに呼ばれた理由がわかりますか?」
──ああ、あれから本当に大変だった。
白羽かすみがゲーム通りの境遇に陥っていたのを知った俺は、友人達に頼み、聞き込み調査を手伝ってもらった。
俺、琉斗、燈真のいつもの攻略対象3人組と、俺と同じクラスで仲良くなった出口カナと片桐春之の5人で聞き込みを続けた結果、口コミという恐るべき生徒同士のネットワークにより、だんだんと高等部の全校生徒が生徒会長一同の動向を気にするようになった。
最終的に寄せられた目撃情報は被っているものが多かったが、それなりの量だった。
それを片手間に、俺はかすみ先輩と図書館のあの場所で会うようになった。
始めのうちは2人でそれぞれの読書や勉強をしていることが多かったが、回数を重ねるにつれてかすみ先輩は自分のことをポツリ、ポツリと話してくれるようになった。
婚約は2人がまだ7歳くらいの時に片桐の当主が強引に取り付けたものだったらしい。
だがその頃、かすみ先輩と片桐兄弟はまだ3人でよく遊ぶ間柄だったらしく、仲も良かったそうだ。父の白羽の当主も少しばかり時期尚早だと思っていたが特に反対もしなかったという。
関係が悪化し始めたのは2人が中等部に上がってからだった。
片桐元春は自分の成績に固執するようになり、かすみ先輩もそれを察して身を引くようになった。
2人の間の会話も減っていった。
高等部に入学する頃には学年トップは片桐元春という定型ができあがっていて、彼も下々の生徒を見下し、自分の主席の座を脅かす者を極度に敵視するようになっていた。
そしてその中には常に上位層に入っていた婚約者も含まれていたのだろう。
高等部の最初の2年間は、婚約者という外面を気にしてか、話すことはあまりなかったがそれ程険悪な態度をとられることもなかった。
その均衡が崩れたのは白羽家が没落し、婚約者の関係がなくなってからだった。
かすみ先輩が語ってくれたのはそんな話だった。
いじめは次第にエスカレートしていった。
初めはまだ物がなくなったり、通りすがりに嫌味を言われる程度。でも日が経つにつれ、集団で囲まれていびられる、食堂で食事をトレイごとぶっかけられる、その対策で持ってきた弁当に虫を入れられる、などのことがされるようになった。
その頃にはいじめに便乗する人が出てくるようになっていた。
いじめの実態ばかりはかすみ先輩もあまり話したがらなかったので、目撃者から聞くことが多かった。
俺と片桐春之はその間はかすみ先輩のフォローに回ることになった。汚されたり破られたりした制服の替えを用意したり、机や下駄箱の掃除をしたり、と。
だが学年が離れていたこともあって、完全に現場を押さえるまでには至らなかった。
そうやって駆けずり回っているうちに、俺はかすみ先輩のファンクラブ、『乙女百合の会』なるものと接触。
彼らはかすみ先輩を助けようとはしたものの、A組に在籍している人がおらず手をこまねいたところに俺達が現れたらしい。
俺らよりもよっぽど、かすみ先輩の近くにいながら何もできずにいた奴らを『下僕の会』と改名して、俺は十数人の僕を手に入れた。
下僕達は何でもいいから手伝わせてくれと言ってきたので、彼らに先輩のフォローを押し付──任せ、俺は裏で手を回し準備をした。
そして今日、ついに現場を押さえることに成功。それで現在に至るわけだ。あー、苦労したわ、俺。
「誰だよお前。1年だろ、何仕切ってんだよ」
──人が感傷に浸ってるところを………こいつ、状況わかってんのか。
てか、何でこんなんが生徒会会計なんかやってんだ?
確か生徒会は、会長が全校生徒による選挙で、会長の指名が3人、教師の指名枠が1人、部活動連合から1人という内訳の計6名。
会長以外の5人の中で、副会長、書記2名、会計2名が決まる。
今回のいじめの主犯格は、生徒会長と生徒会役員の4人。
生徒会でいじめに加担しなかったのは唯一の2年生の東雲先輩。教師の推薦で生徒会に入った人だ。
つまり取り巻きは片桐兄が指名した3人に、部活動連合が送り込んだ1人。
あまり賢くは……なさそうだな。
今、俺の前で並んでいるのは片桐兄とその取り巻きの、生徒会役員5人と御手洗という名の女子生徒。全員3年生だ。
全員タキシードやドレスのフォーマルな恰好。だらしなく着崩している奴もいるが。
俺らは今、学園長室にいる。
そう、今日は夏休み前のサマーパーティーの日。そして、断罪の日だ。
俺は部屋の奥のど真ん中に置いてある大きな机に座る。
席に着くと、そばに控えていた俺の執事で秘書の宇野が今回の資料を机の上に置いてくれる。
「直接お話するのは初めてですね、片桐先輩。僕は柊紫安です」
「それは知っている。俺のことを聞き回っていたそうだな」
「ご存知でしたか。これは失礼しました」
片桐兄は無表情を貫いている。だが、その表情にどこか澄ましている感じがあるように見えるのは俺だけか……?
いじめも大して隠そうとはしていない空気があったのは、自分は処罰を受けないって確信していたからだったのだろうか。
「お、おい……柊、お前の父さんが理事長やってて偉いのは知ってるが、そうだとしてもそこに座るのはマズイだろ……」
机の横に立っていた生徒会会計の東雲先輩が俺に声をかけてくる。
こいつの目には俺が親の権力を振りかざすようなバカに見えんのか。心外だな。
「大丈夫ですよ、先輩。僕がここに座っていても何ら問題はありません。僕が、学園長なので」
断罪シーンって難しいですね……パート2に続きます。読んでくださってありがとうございます。




