学園長のお節介
やっぱり遅くなりました……すみません(;つД`)
白羽かすみと片桐元春は、共にあの乙女ゲームに名前だけを登場させた、謂わばモブだ。
2人は柊紫安が生徒会長に就任する前の生徒会長とその元婚約者で、当時は柊紫安より2つ歳上の高校3年生だったため、ゲーム開始時にはすでに高等部を去っていた。
ゲームでもやはり2人は婚約していて、同時に幼馴染みだった。
だが白羽家が没落すると途端に婚約は破棄され、白羽かすみは元婚約者とその取り巻きによる陰湿ないじめを受けるようになる。
詳細は述べられていなかったが、当時1年生だった柊紫安はその片桐元春を高等部の全生徒の前で断罪して いじめを止め、生徒会長の座から引きずり落とした。
その結果、柊紫安は上級生の間でも人気を集め、1年生でありながら見事後期生徒会長に当選する。
そうしてヒロイン達が入学する4月に生徒会長として登場できた、ってわけだ。
──まあ、これを知っている俺からしたら、この方法はかすみ先輩の状況を利用しているみたいでやりたくない。
前世では、イケメンでもここまでしないと1年で生徒会長になれねぇんだ。ざまあ! としか思っていなかったんだけどな!
自分がその立場になると結構面倒だな、これ。なんでここでご都合主義展開にならないんだ。
俺はかすみ先輩の手を取って校舎の方に誘導しながら踊る。
踊っている人は結構いる──さすが金持ち学校。
まあ1年は縮こまって隅で集団で固まっていて、踊っている人は先輩が多いんだけどな。
俺はかすみ先輩の正面。ドレスの破れた部分は俺の脚で見えないし、見えても動いていてよくわからない。
──どうよこのパーフェクトプラン! あ?誰でも思い付く? あ、そう。
「柊君はA組の級長だったんですね。私はてっきりゆき君だと……」
「普通は成績優秀者がなるそうですからね。僕が選ばれたのは"柊"だったからですよ」
「あ、ごめんなさい! 私、そういうことが言いたかったわけじゃ……」
「はい、わかっていますよ、かすみ先輩」
可愛くあたふたしている先輩を宥めていると、いつの間にか校舎の近くまでたどり着いていた。
かすみ先輩を連れて第3更衣室まで人気のない廊下を歩くと、目的の部屋の前で片桐弟がぶすっとした顔で待っていた。
「柊、いったい何を──っておい!勝手に……」
片桐弟から鍵──ちゃんと取ってきてくれていた──を受け取って更衣室を開ける。
後ろで片桐弟が何やら騒いでいる気がするが……まあ無視無視。
「柊君……これは……」
かすみ先輩が唖然として部屋に並べられている衣装袋を見ている。
そう、ここは学園が貸し出し用のドレスを置いている部屋だ。
昨日、俺達のダンスの練習で使ったドレスもここに置いてあったものだ。
「これらは学園が貸し出しをしているドレスです。先生方には僕が断っておきますので、かすみ先輩はこのどれかに着替えて片桐君と会場に戻ってください。今日は歓迎会ですけど、いないと無断早退になりますよ?」
「え……あ、はい! ありがとうございます!柊君」
一瞬ぽけっとしていたかすみ先輩は俺に勢い良く頭をさげる。
「どういたしまして、先輩。ドレスは都合のいい日に戻してもらえればいいですよ」
「はい、何から何までありがとうございました!」
「じゃあ僕は先に行くよ。片桐君も先輩のエスコート、しっかりね」
「あ、ああ……」
俺はさっと立ち去る。
そういえば片桐弟とまともに会話していなかったかも。ま、いっか。
それとあの女子、どうしたっけ? 飲み物のテーブルまで連れていくはずが野次馬の中に置いてきたかも。
──ま、いっか。あいつ、自分から野次馬に突っ込んでったし。しーらねっ。
会場に戻って、歩きながら櫻井先生を探す。
あの人、若輩者だけど仕事をたくさん押し付けられているだけあって結構信頼とか権力とかあるし、こういうのはあの人に任せれば確実だと思うんだよ。
先生にはため息つかれそうな気がするけど。
ちなみに言うと、大体の先生方は俺が学園長だっていうことを知らされていない。
知っているのは教頭とか高等部の校長くらいだ。
ついでにいうと、いくら学園長とは言っても一生徒である俺が見ちゃいけないもの──生徒の成績とか──を秘書で学園長代理の宇野に回しているのもその辺りの人だ。
──テストのカンニングとかもしてないからな! 学園長だからって何でもできるとは思うなよ!
で、他の先生はというと、学園長のリュシアン・セイヤードは俺の母方の親戚だと思っているらしい。
普通に俺のフランスの名前なんだけどな。
──うん。さーて、面倒事の押し付け先は、どこかなー?
「………っ?!」突然身震いする櫻井先生……可哀想……
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