心のすきま
『え!!あの宮原先輩と!
良かったぢゃん!!前進したってカンジだね!』
『メッセージのやり取りだけだからそんな大したことないないけど、でもやっぱり嬉しいかな!』
『そりゃそうだよ!
宮原先輩もすみれから連絡きて嬉しかったんぢゃない?』
『まさか〜。嬉しいとかはないと思う!
ただつまらないかったわけではないとは思いたい!』
『そんな謙遜することないでしょ!
絶対嬉しかったって!!前から思ってたけど、
先輩はすみれに気があると思う!』
私はあの日のやり取りの事を紗江子に話した。
先輩と毎日顔合わせてるのに今までメッセージのやり取りをしたのは仕事関係の内容しかなかった。
私も今まで彼女いる人に会社以外のプライベートで連絡なんてできなかった。
けど…紗江子から別れたって聞いて前に進んでみたくなった…。
『私に気なんてあるわけないぢゃん!
可愛い後輩ってゆうくくりではあるかもだけど。
…あっ!ここだっ。〝Katze〝〔カッツェ〕って書いてある。』
『ちょーオシャレなお店ぢゃん!!
女子が入りやすそうな外観だし!』
私はあの、久利生 椿のもらった名刺をもとに彼のお店に来てみた。
1人で来るのもつまらないかと思って紗江子を連れてきた。紗江子はお酒が好きで強いからこうゆう話はすぐにのってくれる。
そして私達は早速店内へと入っていった。
『いらっしゃいませ!
お2人様ですか?、でしたらあちらのカウンターへどうぞ。』
1番手前のカウンターにいたボーイが私達を1つ奥のカウンターの席へと通した。
『ねえ!店内もイイカンジぢゃん!
なんで私今までここ知らなかったのか不思議だわ』
わたしもこのあたりは普通に通ったことあるのにこのお店のこと知らなかった。
『こちらのお店は初めてでしょうか?』
『あっ…はい。あの…久利生 椿くんからの紹介で来たんです。』
『そうだったんですか!そうとは知らずにすいません。今、オーナー呼んで来ますので少々お待ち下さい。』
私達のカウンターにいたボーイは久利生 椿を呼びに行った。
『てかさ、今のボーイの子もイケメンだったね!
ここのお店イケメン率高くない!?』
『まぁそうかもね。
でもあのボーイの子は私達より年下な気がするけど!』
私達が小声で話していると
奥の方から白いワイシャツにネクタイを締めたギャルソン姿の久利生 椿が歩いてきたのが見えた。
『おっ。来てくれたんだ。ありがと!』
『うん。友達の紗江子と一緒に来てみた。』
『どーも初めまして、久利生 椿です。
早速お二人はなにを飲まれますか?』
『紗江子はなに飲みたい?』
『わたしは甘め苦手だからなぁ。』
『わたしは逆に強いの無理だなぁ…』
彼を見てみるとカクテルをもう作り始めていた。
『ぢゃあ俺のおすすめをそれぞれの好みに合わせてお作りしますよ。それがバーの楽しみ方ですからね。』
当たり前だけど、ちゃんと接客してる…。
この前会った時とはまた違う顔があるんだ…。
なんか凄いなぁ。
手慣れた手付きでカクテルを作っていく
久利生 椿の姿はまさに、〝オーナー〝の顔になっていた。
『はい。どーぞっ。
スミレは甘めで、お友達さんは辛めな感じで
そのカクテルの色は2人のそれぞれ俺のイメージで作ってみました。』
『すっごく綺麗!…』
『確かに!ちょー綺麗な色合い!』
〔久利生 椿からみた私の色のイメージって
アクアブルーなんだっ(゜o゜!〕
それにしても飲むのがもったいないくらい。
『……飲まないの?』
『もちろんいただくよ!
でももう少しこのままでゆっくりいただきます。』
『なんだよソレ。
そんなのいくらでも作ってやるのに。』
『いーの!今日、初めてこのお店に来て
久利生 椿が作ってくれた初めてのカクテルなんだから!』
『…っやっぱり面白いな!スミレって。
けどそうゆうとこいいよな!』
私はこんな大人っぽいバーに来た事がなかったからちょっと雰囲気に慣れたい気持ちもあった。
隣にいる紗江子は美味しい美味しいと飲んでいる笑
『わたし、ちょっとあっちのカウンターのお兄さんとお喋りして飲んできてもいい??
あんた達も2人で楽しんでてよ!』
『えっ…ちょっと紗江子…。』
『お友達の子、ウケるね!』
『うん…。いつもあの感じなんだけどね。』
『…てか店に来ないと思ってたよ。』
『?…なんで??…』
『彼氏いるんでしょ?』
『はい!?いないけど…!』
『だってこの前、プリンスホテル前で男の車から降りてたぢゃん?』
!!!
『あ!あれは私の兄で送ってもらっただけ!
…って何で知ってるの??』
『えっ…兄貴!?…
いやっあの日、二階の窓際で会場が始まる前にオヤジからスミレの話をちょっとされてて、その時外みたら
その光景が見えたってわけ。』
『偶然見られてたんだ! しかも兄といるとこを笑』
『兄貴めっちゃイケメンぢゃん!
それにいい兄貴ぢゃん。』
『そうかなぁ?…
てかお兄ちゃんの話なんてどうでもいいよ!
それより、素敵なお店でビックリしちゃった!』
『まぁ…ね。一応俺がこだわって設計して家具やグラスとかも全部考えたから自信はあるかな。』
『すごい!!才能あるんだ!』
『才能なんて文字は俺には合わないけど、
とりあえずは上出来な気はしてるよ!』
『この場所にこれだけのお店出して繁盛してるんだから凄いよ!』
『この店出した時まだ学生だったから、場所代とか設計費とかはじーちゃんが出してくれてさ。
でもそれ以外の物は自分で稼いだ金貯めてたのとか昔から通帳に積み立てられてたのから出した。
自分の店なのに自分の金一銭も出してないなんてかっこわりぃぢゃん?』
へぇ。…よく考えて行動してるんだ。
あんなに凄い家系なのに甘えすぎてないなんて偉いよね。甘えた方が絶対ラクなはずなのに、
『どうやってお金貯めたの??』
『んー…まぁ昔は色々やっててさ、その中でもキャッチで貯まったかな。
この辺りでやると目立つから別の繁華街とかで』
『キャッチってキャバクラとかヘルスとか風俗とかのだよね?歩いてるとそうゆう人よくいるもんね。』
『俺は目的があったからやってただけで別にあの仕事もだるい仕事だよ。ある意味ラクだけど結果ラクでもないし…。それでも月50〜60いってたからさ。』
『確かにそれは凄いね!
けど…ホストとかの方がもっと貰えそうぢゃない?』
『ホストだと顔を売らなきゃならないぢゃん。
やっぱ久利生の息子ってゆうのがバレたりしたらまずいし、偽名使えたり辞める時簡単にやめれる仕事が良かったんだよね。
ここから一時間ちょっとかけて行ってキャッチやってたよ。』
私はカクテルを飲みながら久利生 椿を見ていた。
見た目からしたら本当にそうゆうこと考えるようには見えない…。
でもどこか説得力のある言葉を感じるのはやっぱり自分自身で努力してきたからなんだと思う。
『……美味しい…!!
このカクテルだと何杯でも飲んじゃいそうで怖いよ!そのくらい美味しい!
なんて名前のカクテル??』
『SUMIREっ!』
『…っすみれ?!偶然!?』
『今日初めて作った記念。
んで、すみれが飲んで美味しいって言ってくれたからそう付けた。』
私は一瞬返事に困ってしまった。
それは…急に恥ずかしくなってしまったから。
『そっそんな簡単に名前付けちゃっていいの?!…
しかも私の名前なんて…!』
『だってここ、俺の店だし俺がしたいようにするに決まってんぢゃん!
次来た時はメニュー表に載ってるからそん時は驚けよ!』
凄い可愛い笑顔で笑っていた。
〔…こんな表情もするんだ…。
久利生 椿、あなたもモテるんだろうねえ…( ´▽`)〕
『そういや俺のことは、椿でいいから!
てかまぁ呼びやすいようになんでもいいんだけど。』
『うん。…ぢゃあ椿って呼ぶ。』
するとそこに女性客3人組が店内に入ってきた。
『つばき〜!今日も来ちゃったよ〜。
仕事のあとはつばきの顔見たくなるんだよね〜』
1人がそう言いながらあとの2人もキャッキャしながら私がいるカウンターへ歩いてきた。
『今日もご来店ありがとうございます。
ぢゃあ…あっちの席でお待ちください。』
そういい3人を私とは反対の席へ促した。
『私、紗江子連れてもう帰るから大丈夫だよ!
気にしないで!』
『…まぢでごめん。あの客けっこう大変でさ。
次来てくれた時はちゃんと時間作るからゆっくりしてってよ。』
『うん。ありがとう。
本当にご馳走様。美味しかった!』
私は紗江子がいるとこへ向かい帰ろうと告げた。
紗江子はもう少しいたそうだったけどダラダラいるよりこうゆう場所はサッと帰ったほうが格好がつく。
お会計の場所へ行くとまた違うボーイさんが立っていた。
『本日はお会計ございませんので、またご来店の方お待ちしております。』
『えっ…!いやっでも私達けっこう頼んでるしで…』
『これはオーナーより承っていますので。
お気になさらずに今後もKatzeをよろしくお願い致します。』
そこまで言われた私達はご馳走になって店を出た。
『にしてもさあ、あの久利生 椿くんて人結構イイ感じぢゃんっ!!』
『…うーん…。まぁ見た目によらず意外と努力して自分の意思もあるみたいだしね…。』
『それにご馳走してくれたし男っぽいぢゃん!』
『…うん。確かにね〜。』
私達は夜の街をブラブラしながら椿について話していた。
『?なんか元気なくない??
なんかあったの??』
『…別に特に何もないんだけど、…
結構オンナの子慣れしてるって感じだったしなぁと思って。』
『まぁね。やっぱりバーとかやるなら多少そうゆう付き合いしとかないと客の繋がりにならないぢゃん!』
『わかってるんだけどねっ…。
別に好きなわけでもなんでもないしどうでもいいんだけど、、…なんかね。』
〔…わたし、絶対あの3人組の女たちのこと気にしちゃってるんだ…(; ̄O ̄)
バカぢゃん…(´Д` )
……けど本当にあのカクテルの名前、SUMIREなんかにしてくれるのかな……。
てか!!私には宮原先輩がいるぢゃんか(≧▽≦)o〕
『ぢゃあまた明日ね!私これから涼のとこ寄るからこっちの路線で帰るから!』
『はいはーい。気をつけてね!
また明日〜!』
〔はぁ…(´Д` )彼氏かぁ。
…別にいらないと思ってたけどなんかちょっと欲しくなってきた気がする…(´Д` )〕
私は紗江子と別れてからまだ駅前をブラブラしていた。すぐ帰る気分でもなかったから。
と、ある酒屋の前を通り過ぎた時だった。
『…あれっ?
さっきのお客さんですよね??確か、菫さん!』
??あれは…1番最初のカウンターにいたボーイの子。
『…あっそうです。名前まで覚えてくれてるなんてどうもです。』
『あの、オーナーとはイイ感じの関係なんすか??』
『いやっ全然全然!この前知り合ったばっかで。』
『ぢゃあお店のことはオーナーから聞いたんですか??』
『そうそう。名刺をもらったから。』
『へえ〜。オーナーでもそうゆうことあるんすね!』
ボーイの子はお酒の種類を確認しながら珍しそうに話した。
『基本オーナーは自分から店の事宣伝しないんすヨ。
口コミで広がっていけばいいってゆう事話してるくらいなんで。でもよっぽど菫さんに来てもらいたいって思ったんすかね〜。』
『そうなんだぁ。…いやっ私に来てもらいたいってゆうのはないと思うけどね!』
『オーナーモテるからなぁ。
菫さんのこと気に入っちゃったんだろうなぁ!』
〔この子人の話聞いてるのか…(´Д` )〕
『あっ!!
ぢゃあ俺戻るんでまた店に来てくださいね!!』
ボーイの子は嵐のように過ぎ去って行った。
わたしは寄り道して帰ろうと思ったけど急につかれたのでやっぱり帰る事にした。
〔あっ…お兄ちゃん呼ぼうかな。
もう電車使って帰るのもだるいわ…(´Д` )〕
つづく。