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恋あい気分  作者: ハム子
50/50

空は繋がっている










拓人さんからの着信だった。














【………もしもし……。】


【……俺だけど…具合いは大丈夫?】






数日間ぶりの拓人さんの声。






【あっ……うん。

だいぶよくなった……。】


【そうか…。なら良かった…。】







変わらず優しい声。








【今日…部長に用事あったからすみれいるかなと思ったらいなくてさ…。

そしたら野村さんが風邪ひいて休んでるって言ってたから心配になって】


【…心配してくれてありがとう……

……今は熱も下がったし頭痛も良くなったよ…。】


【………色々ごめんな…。】


【なんで謝るの?

拓人さんは何もしてないよ…】


【……

部長から海外出張の件聞いたと思うんだけど

そうゆう話もちゃんとしないで一方的なことばっか言ったこと、ほんと悪いと思ってる。

ごめん……】


【うぅん……。

確かにその時は突然の事で理解出来なかったけど

今は…拓人さんにも拓人さんの考えがあったことなんだと思うから…。】







拓人さんは何故か黙っていた。








【…………いつニューヨーク行っちゃうの…?】


【……来月…

って言っても2週間後の土曜日。……】


【…そうなんだ………

たった2週間しかないんだ…、ね………】


【2週間なんてあっという間なんだろうな……】


【………うん…………。

何時発の飛行機なの……?】


【11時発だよ。】


【……そっか。………】


【…………………………………】








拓人さんはまた黙っていた。

何か言いたいけど言わない……

言えない…?

ような沈黙だった








【とりあえず…

すみれの具合いが良くなったみたいで安心したよ。】


【うん…。

わたしも拓人さんの声、久しぶりに聞けて良かった…】


【………それは俺も】


【電話ありがとう…。

嬉しかった。】











私達は電話を切った。


きっと


これが最後の電話だよね。



拓人さん………




どうしよう………………





涙が出て来ちゃったよ






もう簡単に会う事出来なくなる………







2度と会えなくなるのかもしれないよ











私はシャワーでその涙を流し続けた。




















それからの1日1日はとても早く過ぎていくように感じた。



わたしは仕事も暇を作らないように

できる限り仕事一色にした


余計なことを考えないようにする為に

頭も体も疲れさせたかった



ただ

忙しくすればするほど

1日が過ぎるのが早かった




1日が早く過ぎて欲しい気持ちと

2週間後が来て欲しくない気持ちが

矛盾していた




拓人さんが会社のカフェで同僚の人達と立ち話をしながら笑ってる姿


時計を見ながらエレベーターに乗る姿


喫煙所でタバコを吸ってる姿


書類のコピーを女性社員に頼んでいる姿








今まで以上に拓人さんの姿を見つけてしまう自分がいた









そんな時わたしはある事に気付いた。












拓人さんの右手薬指に指輪が一瞬光った。








それは

拓人さんがわたしにプレゼントしてくれた

お揃いのペアリングだった……





わたしはそれに気付いた瞬間

動揺した





別れたのになんで…








わたしはアクセサリーを入れているポーチに貰ったリングを入れていつも持ち歩いていた。




わたしには理由はわからなかった…




けど、1つ分かった事がある





































ーーー2週間が経った土曜日ーーーー





























わたしは熟睡出来ずに寝坊してしまった。





急いで支度をしてタクシーを呼び

空港に向かっていた。








10時には機内に入っちゃうよね……


間に合うかな……
















ギリギリ空港に着き

私は11時発のニューヨーク行きの便を探した。








1人息を切らしながら

探した










すると目の前に見つけ、

更にその先に拓人さんの後ろ姿が見えた












『っ……拓人さんっ!!……』





とっさに名前を呼んでいた。




振り向いた拓人さんは

驚きを隠せない様子で足早にわたしの方へと向かってきた。






『すみれっ……

ちょっ…どうしたんだよ……』


『どうしたぢゃないよっ……!

拓人さん…今もその指輪をしてる理由も聞きたいし

なんかっ……会いたくて…

話したくてっ………』







拓人さんは持っていたスーツケースを横に置き

わたしの目を見つめながら言った。







『すみれ…。

俺はこれから最低でも3年は帰って来ない。

……、すみれに待っててもらえる自信もないし

待っててくれって言う勇気も無かった。』


『3年なんて待ってるよ…!

そんなの待てるよ!』


『聞いてくれ。違うんだよ。…

同じ時間を一緒に過ごしながら付き合っていく3年と

全く違う場所で会う事なく過ごしていく3年は違う。』


『好きなら違くないよ!……

わたしは拓人さんが好きっ…やっぱり好きだよ……』


『…………

俺も好きだよ…。きっと、

すみれが俺を好きでいてくれてる気持ちの何十倍も何百倍も好きだよ。

……この指輪を取ったら本当に離れてしまうような気がして外せないんだ…。』


『だったら!…わたしも一緒にあとからっ……』


『でも…

それぢゃ意味がないんだよ。

俺は、俺という男が本当の意味で男になれるように1人で行きたいんだ。

成長したいんだ。…俺自身の為に…』









泣かないと決めたはずなのに

拓人さんの姿を前にしたら

勝手に涙が………









『…実はあの久利生くんこの事話していたんだ。

あいつは、すみれが最近元気ないのは俺の態度に原因があるんぢゃないかってある時会社に尋ねて来たんだ。』


『………えっ……

椿が………?』


『……俺はその時にこいつに負けてたまるかと思った。

でもそれと同時に自分への甘さみたいなものが見えてきた。本当はすみれも誘って海外へ行こうと何度も何度も考えてたんだ。

……けど、それぢゃ駄目なんだと思ったんだよ。』








拓人さんがわたしを抱きしめながら言った。












『もし…3年後、

まだ俺の存在がすみれの心に残っていたら…

その時は結婚してほしい。

離れてる間に誰かと付き合ったり色んなこと楽しんで

吸収して…

それでも俺の事好きでいてくれたら結婚しよう。…』



『……拓人さんっ……』



『本気だよ。』










涙を止めようとする気持ちでいっぱいで

声が出なかった…











『俺はずっとすみれの事好きだよ。

けどすみれにはすみれの人生を歩んでいい。

……これは俺の本当に正直な気持ちだから。』









拓人さんは一度ギュッと強くわたしを抱きしめたあと

頭を優しく撫でて体を離した。









『………じゃあ、そろそろ行くね。』








スーツケースを握り、微笑んだ。


その瞳はいつも以上に優しい瞳をしていた









『……拓人さんっ……!』







拓人さんは歩き始めた。








『わたしもっ…成長するから…!』



『うん。その調子っ』



『………頑張って来てねっ…!!』



『…ありがと!

すみれっ!………元気でな!………』



『………!

拓人さんも元気でねっ……!!』
















拓人さんの姿は一歩一歩進むごとに小さくなっていき

搭乗口へと繋がるエスカレーターに乗り

もうその姿は完全に見えなくなっていった











悲しい別れ方ぢゃないはずなのに


でもやっぱり悲しいよ…




一緒にいるときにもっともっと

拓人さんと向き合ってたら

こんなふうにならなかったのかな…










わたしは拓人さんが乗っている飛行機が

見えなくなるまで見送った






なんとなく拓人さんも

わたしの方を見てくれてるような気がして

その場を離れられなかった







これで本当に3年は帰って来ない…


もしも途中で休みがあって一時帰国したとしても

それは別の話。


お互い直接会うことができるのは3年後…















拓人さん、本当にありがとう……
























『やっぱここに居たのかよ』
















ぼーっとしてると後ろから声が聞こえた


















『…!えっ………

ちょっと……

なんで椿がここにいるの…?!』



『宮原さんから連絡来た。

…つかまぁ、元々すみれが当日来るかもしれないからその時はよろしく頼むって言われててさ…』



『拓人さんがっ…?!

嘘でしょ…』



『そんな嘘ついてどーすんだよ。』



『……本当に最後の最後までわたしのこと気にしてくれてたんだね…』



『ったくどこまでかっこつけてんだっつーの。

俺今回完全に脇役だよなー。』



『うぅん…全然脇役なんかぢゃないよ。

椿も私が元気なかった時、拓人さんに色々話してくれたって言ってた…。

なのにこの前は八つ当たりみたいな感じでひどい態度しちゃってごめんね…』



『いやっあれは俺の方こそどうかしてたよ。

悪かった。…もっと話聞いてやってれば良かったなってあとで思った』



『わたし、あの時自分の気持ちの整理で精一杯で

周りが見えてなかった。

本当はわたしが思ってる以上に周りの人たちが考えて行動してくれてて支えられてたんだなって…今日実感した。』





椿はわたしの顔見てニコッと笑った。





『なに急に笑って??』



『いつものすみれの顔になってきたなー

と思ってさ。』



『わたしそんなにひどい顔してた??』



『ここんとこ結構沈んだ感じだったからな。

まぁ、無理して笑えとは言わないけど

やっぱ笑顔の方がお前に合ってるよ。』



『椿もけっこうサラッと色々言ってくれるよね…。』



『?サラッとって何が??』



『なんでもないよ!』



『………後悔してねーか?』



『………うん。

今はもう後悔なんてない。……拓人さんにも話せたし

ちょっと気持ちが軽くなったんだ。』



『…そっか。

なら良かった。

……んぢゃ、メシでも食いに行くかっ?』



『うんっ

いいね。昨日の夜もあんまりたべれなかったからお腹すいてきた。』



『おし。

美味い店知ってるから行こーぜ。』



























きっと私なんかより辛いのは拓人さんだったんだよね


好きでも今離れる理由が必要なのは


その先に待ってる未来を信じたい強い気持ちがあるから



距離は離れてもいても


この大きな空は繋がってる


同じ空を見てるんだよね











3年後



どうなってるか今はわからないけど


2人の出会いが運命だったとするなら


きっとまた結ばれる





拓人さん。



本当にありがとう。































つづく。



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