出会い
ー日曜日、当日ー
私は白のシフォン素材のワンピースに上にはジャケットを着て出掛けようとした時、兄にどこに行くのかと聞かれたので行き先を告げると同じ方向に行くから車で送って行くと言われた。
『お兄ちゃん…また彼女変わった?…
彼女変わる度に車内の香りが違う気がするんだけど…』
『俺は付き合う子がこの匂いが良いってゆう香りにするから変えざるを得ないんだよ。』
『…いやっ…そうゆうこと言いたいんぢゃなくて
もうちょっと長く付き合ってみたらってことを言いたいんだけど…』
『いろんな相性が合わないのに長いこと一緒にいたって意味ないぢゃん?
てかお前こそ今日は東都プリンスホテルとかいってなにかあるんだろ?』
兄はからかうように聞いてきた。
『…会社の部長が、会って来て欲しい人がいる的な感じで言うから仕方なく引き受けただけだから…』
『ふーん。…まぁお人好しなのは結構だけど、相手の男がどんな奴かちゃんと見極めろよ。
てか俺が見てやるから!』
〔…ε-(´∀`; )〕
『はいはい。ありがとう。
その時はよろしくね〜。』
兄がこう言うにも理由がある。
実は今まで付き合ってきた人は兄にいつも紹介してきた。その度、兄が言う事が的中するので意外にもあてになるのだ。
ー東都プリンスホテル到着ー
『ぢゃあありがとね!
お兄ちゃんも気をつけて。』
『お前もな。
何かあったらすぐ連絡しろよ!』
ホテルに入ると大きなロビーと大理石のフロアが一面に広がった。
まっすぐ歩いていくとフォーマルな服装に身を包んだ人が複数見えたので向かう先はすぐわかった。
ガードマンに招待状を見せ名簿にチェックが入った。ウェルカムドリンクのシャンパンを受け取ると前方から男性がこちらへ向かってきた。
『…咲坂菫さんですか?
初めまして。久利生 一成{くりう かずなり}と申します。』
紳士的な男性は名刺を差し出してきた。
どうやら久利生 椿のお父さんのようだ。
『こちらこそ申し遅れましたが、咲坂菫です。
この度はご招待頂きありがとうございます。』
『いやいやとんでもない。
立ち話もなんだからこちらへどうぞ。』
そう言われ、控え室へと入った。
『高梨部長からはなにか聞いてるかな?』
『あっいえ。特にはなにも…』
『そうか。なら私の方から。
わたしの息子である久利生 椿なんだが…ちょっと困り者でね…。中高生までは普通だったのが大学入った途端、とにかく遊び始めてね…』
『……遊び…といいますと…?』
『賭け事をしだしたり付き合う女の子がいつも違ったり、もちろん遊ぶ仲間も変わってきた。』
〔まぁ…よくある話…な気もするけど…
やっぱり親としては心配かぁ。〕
『それで大学を卒業した今は企業に就職するわけでもなくフラフラと…。
もう23なら特定の女性とお付き合いして今後を見据えても良い年齢だと思わないかい?…まったく…
うちの息子は誰に似たんだかな…』
『確かに特定のお相手が居ても良い頃合いだと思います。…が、…』
『そう思うだろう!!』
〔あの…( ̄◇ ̄;)まだ話には続きが…〕
『高梨部長はわたしの大学の後輩で年齢差は少しあるんだがとても信頼のおける人物だ。
そこで!!誰か息子の相手に良い子はいないかと話してみたら、あなたを紹介してくれたんだ。』
〔部長…なぜ真っ先に私を思い浮かべたんですか…(; ̄O ̄)〕
『そう…だったんですね。お話しして頂いてありがとうございます。』
『親の私が言うのもおかしいかもしれないが根はすごく優しくて頭の機転のきく良い子なんだ。だがどうもここ最近の行動には不安しかない。
男だから放っておくのも一つなんだが、代々この会社を受け継いでいかせるには少し目を配らなくちゃならんと最近思うようになってね…。』
その会話の途中、宴の開始がせまっているというアナウンスが流れた。
『…そろそろ行きましょうか。』
私達は控え室を出て会場へと向かった。
すると司会者が前に出ていて開始のアナウンスをしていた。
お父さんたちと席は違い私は自分の座席表のあるテーブルに座ったが久利生椿という人の姿はまだなかった。
『本日は、Kuryuコンツェルンの親睦会にお集まり頂きまして誠にありがとうございます。』
〔えっ…!?!Kuryuコンツェルンてあのよく雑誌に出てるとこ…Σ(・□・;)
そこのお坊ちゃん的な人物だったのね…〕
私はなんの下調べもせずこの会場に来たまさかの状態だった。
〔…てことはこの会場にいるのは従業員の人達や身内の人達ってことだよね。
わたしだいぶ場違いぢゃん…!(◎_◎;)〕
わたしがそんな事を考えていると1人の声がした。
『…あんた誰?』
『…私は…咲坂菫です。
初めまして…。』
『…あ〜…どうも。
また親父がなんかしたわけか…。』
〔…(−_−#)態度悪いヤツね…!
初対面でしょうが…!〕
『ご家族間のことはよく分かりませんが私は会社から話があってここに来ただけですので。』
『へぇ…。そう。』
〔早く帰りたい!!〕
司会者は社長の話、さっきの専務の話を終えるとフリータイムへと繋いだ。
『ではこれからフリータイムとさせていただきますのでどうぞご自由にお過ごしください。』
『あんただけぢゃない。
俺もこんなとこ来たくなかったんだよ。』
『…え?…』
『正直親睦会って言ったって俺別にここで働いてるわけぢゃないし家族と秘書、運転手くらいしか顔と名前知らないしね、』
『…はあ…そうなんですか…』
彼は退屈そうな口調で独り言のように話していた。
『ちょっと表に出ない?
この会場より中庭の方がよっぽど良いよ。』
『…いいですけど…。』
私は彼の話すことに押され気味でとりあえず会場を出てその中庭へと移動した。
『そういえばいくつなの?』
『23です。』
『タメなんぢゃん!ぢゃあ敬語ナシでいこう!』
〔…一流の家系に生まれながらにしてこうゆうタイプの人っているんだぁ…(゜O゜)なんか不思議だ〕
『ここ!この中庭って落ち着くんだよな〜。
あんま人来ないし気楽な空間』
そこはいうならばオアシスのような綺麗な花と噴水と絵に描いたような場所だった。
『確かに落ち着く雰囲気…。
都会なのに都会ぢゃないような。』
『そうそう。そんな感じ。
…てかあんた面白いね。咲坂…菫だっけ…?
スミレでいいよね!』
〔!!馴れ馴れしい…!(◎_◎;)〕
『まぁ…スミレでもなんでも…』
『スミレはさぁ、なんて言われてここに来たの?』
『…私の会社の部長が、あなたのお父様と知り合いで久利生家の息子さんと会ってみては…みたいな?
感じで…。』
『そっかぁ。
…俺親父嫌いぢゃないけどかといってベタベタもしたくないからさ。ちょっと距離取ってるとこうゆうのやり出しちゃうっつうかね。』
『私もあんまり来たくなかったけど部長の頼みだし中々こうゆう場所に呼ばれる機会も少ないと思って来てみた感じだし…お互いにあんまり考える必要ないよっ!うん。』
ちょっとした間があったような気がしたが彼はまた私を面白がった。
『気に入った!!スミレって見た目はクールビューティみたいな感じで近寄りがたい印象だけど、実は面白いぢゃん!そんなにハッキリ言われると気持ちいいくらい!』
彼はケラケラと笑いながら名刺を渡してきた。
『今度遊びに来いよ!
楽しいかどうかはわからないけど良い暇つぶしにはなるとは思うから!』
『…KATZE〔カッツェ〕…?
バーを経営してるの…??』
『大した店ぢゃないけど一応人気はあったりする。
クラブとかは嫌いだからしっとりした感じのバーにしたんだ。
俺は基本店にいるからさ、いつでも歓迎。』
〔ちゃんとお店もって都会で経営していけるなんて凄いぢゃん!〕
『実は昨日飲み過ぎて今日気持ち悪くてさ…。
俺はもうこれで帰って寝るからなんかあったら連絡してよ!』
彼はそう言うとタバコに火をつけながら中庭から外へと出て行った。
チャラチャラしてそうでしていないのか、しているんだけどそこまでではないのか…
よくわからない人だったけど、悪い人ではない気がした。
つづく。