重なる出来事
『………あの………部長…。
今の話、…本当なんですか?……………』
『……てっきりキミは知っていると思っていたんだが…
………』
『………………。
はい………』
『咲坂くんにも話はすると言っていたしな……
………なんだか悪いことをしたな…』
『いえ、……いいんです。
…実は私達別れたんです。……まだ部長にしか話してません。』
『……そうだったのか……。
…宮原くんは……優秀な人材だ。
こうなってしまったことは仕方なかったんだろうと思う……』
『………そうですね、………。私もそう思います。
…今部長に話していただいたおかげで
なんだか胸につっかえていたものが少し取れたような気がします…』
『そうか…。
なら良かった。』
そのあとも部長はわたしの話を聞いてくれていた。
相手はわたしの上司で部長なのになんで話なんてしてるんだろうと思ったけど
よく考えてみれば部長が拓人さんをわたしの指導係に任命したとこれから始まって、
椿と出会ったのも部長の話があったから。
そう考えたら部長ってわたしにとって幸運を運んできてる人なんだとさえ思ってしまった。
『色々とわたしの話なんか聞いてくだって
本当にありがとうございます。……』
『いやいや構わないよ。
こんなオジサンで良ければいつでも。』
『部長はダンディな方で、ご家族思いですし
奥さんが羨ましいです。部長は素敵ですよ。』
『まさかまさかやめてくれよ。
まぁとにかく、キミは若いんだから色々楽しんだ方が良い未来に繋がるさ。
ぢゃあまた午後も仕事頑張ってくれ。』
そう言い、コーヒー片手に去って行った。
それにしても拓人さん。
どうして話してくれなかっただろう…
わたしが引き止めるとでも考えていたのかな……
改めて拓人さんのことを考えると
きっとわたしが頼りなかったばっかりに1人で悩むことになっちゃったんだよね‥
つくづくわたしってバカだよね
午後になり、仕事もひと段落したので早めに帰ることにした。
紗江子に具合いは良くなったのかメールを送ったら
だいぶ回復したって。
それに明日には仕事来れるって言ってたからわたしはお見舞いに行くのはやめた。
それに
今日は飲みたい気分。
久しぶりにお酒の力をかりてスッキリしたい。
こうゆう時はもちろん椿のお店だよね。
拓人さんとのことも話したいし。
わたしは椿のお店へと向かった。
ーーーーーーーーー
『おーすみれか。』
入るとそこには珍しく椿がいた。
『〝すみれか〝ってひどいなぁ。』
『わりぃわりぃ。』
『珍しいね?
トーマくんぢゃなくて椿が案内なんて。』
『トーマは今日シフト入ってない日だからさ。』
『そかそか。…
ねぇ。あそこのカウンターで飲んでもいいかな?…』
『?おう。』
わたしは一番端のカウンター席に自分から指定して向かった。
『なんにする?』
『うーん………
今日は、梅酒ロック。
できればちょっと濃いめで…』
『ぢゃあ、気持ち濃いめに作るわ』
『ありがとう…。』
『なんかお前こそ珍しくね?』
『なにが?…』
『自分から席を決めることも、酒がロックとか』
『………うん…………。
…………。
まぁ…実はさ、……』
私は拓人さんと別れたこと、部長から海外出張のことを聞かされたことを椿に話した。
『…まぢか……。』
『だから今日は飲みたいの。
飲んで…飲んで酔いたい気分てゆうか……ね。』
『…確かにそうゆう気分にもなるかもなあ』
『でもまだ別れたってゆう実感はそこまでないんだよね……
昨日の今日で職場も今は同じだから完全に目の前からいなくなったわけぢゃないし……』
『まぁなぁ。』
『…驚くかなって思ってたけど
そうでもないんだね。』
『それなりに驚いてはいるけどさ…
でも〝絶対〝 なんて言葉もないっつーか…』
『…椿の言ってることもわかるけど
付き合いの中に〝絶対〝ってゆう信頼や絆があってもいいぢゃん……?
私は椿みたいにクールな考え方は出来ないよ…』
『…俺別にクールでもなんでもねーよ。
ただ、終わった事を考えててもしょーがねーぢゃん。』
なんだか今日の椿はイライラする。
人が落ち込んでるってゆうのに傷口に塩をぬるような言い方。
『終わったことって……
昨日の話なんだからまだ少しくらい気持ちが残ってたって別におかしくないでしょ?』
『俺には考えても仕方ない事を考えることの意味がわからない』
『仕方ない事って…
そんな言い方しなくても良くない…?』
『…お前が話だしたんだろ』
『ぢゃあ椿はあの元カノのこと、すっぱり綺麗に一度も考えないで終われたんだ?!』
『…そうだな。
俺は考えなかったよ』
『そんなの嘘だよ』
『嘘ぢゃねーよ』
『だとしたら椿ってクールを通り越して冷血なんだね』
『…つかお前はさ、今俺に何を求めてんだよ
まだ気持ちがあんなら引き止めろとか言って欲しいわけ?』
『違うよ。
そんなんぢゃないし!
……ただ…慰めて欲しいだけ…………』
『…………もういい。…今日は帰れ。
飲みすぎる前に。
外にタクシー呼んどくから』
椿はカウンターから出ると他のスタッフにタクシーを呼ぶよう指示していた。
『ねぇ椿。……
なんか今日いつもとちょっと違くない………?』
『そうかもな…
けどお前には分からないだろうな。』
『なんで…?なにが私には分からないの?』
『……今日は帰って頭冷やせ。』
椿はわたしを避けるかのように厨房へと入って行ってしまった。
拓人さんにも愛想尽かされて
椿にも避けられて
わたし一体なにしてるんだろ…
わたしはタクシーでマンションまで帰り、ベットへと倒れ込むように眠った。
そしてそこから2日間、風邪をひいてしまい家で寝込んでしまったのだ。
まさか男のことが引き金で体調崩したなんてみっともなさすぎる自分にため息だけが出た。
具合いが悪かった紗江子は逆に良くなってマンションへとお見舞いに来てくれた。
その時紗江子にも今までの事を色々話し、ただ黙って頷いて聞いてくれていた。
最終的には
〝誰も悪くないよ。偶然色々重なってしまっただけ。〝
そう言ってくれた…
わたしは体調も良くなって来たのでおふろに入ろうとした時、
スマホが光った。
ディスプレイに表示されていたのは
〝拓人さん〝
からだった…
続く。




