★Another Story★ Takuto ★
『あっ…宮原先輩!
あのぉココ、分からないんで教えてもらいたいんですけど。』
『ん?……あぁ、ここはこうしてデザインして
貼り付けておいてくれればいいよ。』
『ありがとうございます!
えっと、、全然関係ないこと聞いてもいいですか?』
『なに?』
『咲坂先輩とお付き合いされてるって本当ですか?…』
『そうだけど?』
『……やっぱりそうなんですか。
意外とあっさり教えてくれるんですね……。』
『聞かれたから答えたまでだし
別に隠してるつもりでいたわけでもないしね。
あっ、あとさこの書類をコピーして広報部の杉下さんのとこまで届けておいてくれるかな?』
『あっはい…!
もちろんですっ!…』
『うん。
ぢゃあよろしくね。』
すみれと付き合い始めてもう少しで2ヶ月が経つけど
何回社内の子達からこの質問をされただろうか。
男の場合は回りくどくないが
女の子の場合は前振りがあっての質問でいい加減
そのパターンの対応に嫌気がさしてきた。
『せんぱーい!
今日昼メシ、一緒にどうっすか?!』
『おっまた飯代たかりに来たか。
ぢゃあ15分後にいつものラーメン屋でな。』
紗江子ちゃんの彼氏である中谷はたまにこうして
俺に声をかけてくる。
人懐っこい性格で裏表がなくいいやつだ。
俺は部所に戻り自分の身の回りの整理をして
待ち合わせ場所へと向かう事にした。
会社の近くにあるラーメン屋が意外とうまく
そこへよく行くようになった。
『もう来てたか。好きなの注文しろよ。』
『お疲れ様です!
ありがとーございまーす!』
『俺、みそで。お前は?』
『俺もみそで、あと餃子2人前で!』
俺らは注文し終え、お互いの最近の話をし始めた。
『紗江子ちゃんとはうまくいってるのか?』
『まぁ、ボチボチですね。
たまにデカイ喧嘩しますけど一応仲直りして…みたいな。
てか俺思うんですけど、女って日頃の苛立ちを溜めて急になんかの拍子に愚痴言い始めてその流れで怒り出すと思いませんか?!』
『あ〜…そうゆう子もいるかもなぁ。』
『だいたいの女がそんな気がしますね。
そんな溜め込むくらいなら日頃から言ってればいいのに
いきなりドカーンと来られても対応に困るし疲れますよ〜…』
『まぁなあ。
…でもそれで仲直りして戻るんならいいんぢゃないかとも思うけど。』
『結構だるいですよ…。
てか先輩は咲坂とどんな喧嘩するんですか?』
『俺ら?
そうだなぁ…この前一度だけ俺らの仲ぢゃデカめの喧嘩したけど割とすぐに和解できたし…ー。
まだそうゆうのないかもだな……。』
『羨ましいですねー。
喧嘩なんて無いに越した事ないですよ、本当に。』
『でも喧嘩して成長していける事もあるだろうから
悪い事ばかりぢゃないと思うけどな。』
『さすが先輩。いう事もイケメンですねーまぢで。
あっそーいえば、この前紗江子が咲坂んちに遊びに行った時に男物のワイシャツがクリーニング出し終わってたらしいぢゃないですかー!
先輩も泊まりに行ったりするんですね!』
『………俺の………ワイシャツ……?』
『紗江子が咲坂に聞いたら、拓人さんが泊まりに来てって言ってたって言ってましたよ?
いやーお兄さんがいるのに大胆っすねー!』
『………………あぁっ…、
この前な……そうなんだよ……。』
俺はまだ一度も泊まりに行ってなんかない。
今はっきり言えることは1つ。
俺と身内以外の男物のワイシャツということだ…
そのあと食事なんて喉が通らなかった。
そして会社へ戻っても疑問だった。
なぜ、俺のだと嘘をついたんだ……?
紗江子ちゃんになら誰のか本当のことを言ったところで
あの子が彼氏である中谷にだって言わないはず。
なにか紗江子ちゃんにも隠していること、もしくは
今更言いにくいことがあってとりあえずそう言ってしまったのか…
誰か…泊まりに来たのか……?
中谷の何気ない情報のおかげで俺は仕事終わりに行くべきところが出来た。
それに最近のすみれは少し様子がおかしかった。
やはりなにかを隠しているような…
気になっていることがあるような雰囲気だった
仕事は定時で切り上げ、足早に向かった先は
〝CLUB カッツェ〝
1人でこんな所に来ると思ってもいなかった所にいる
そして俺が店に入ろうとした時、裏口の方から聞き覚えのある男女の声が少し聞こえて来た。
俺はそっちのほうを軽くのぞいてみた。
『椿くん、今お姉ちゃんのことどう思う?……』
『別に何とも。』
『ぢゃあ…………
わたしのことは………?』
『雪音の妹である、夏菜だ。
それ以外の感情はないよ。』
久利生 椿と
門脇夏菜………
なんなんだあの2人の関係は…
『お姉ちゃんに…
アンタがいくら好きでも椿は振り向かない。
だから諦めろって言われた…………』
『……………そうか……』
『……………………それでも椿くんが好き……』
『…………………俺以外を見ろ…。』
『なんでっ……?
なんでそんなに突き放すの……?!』
『…………いくら言われても俺の気持ちは
何も変わらない。苦しくなるのはお前なんだ。
分かってくれ。』
門脇夏菜は涙ぐみながらこっちの方へ
小走りで向かってきた。
この狭い路地ですれ違うも
俺のことなんて視界にも入らないくらいの勢いで
街へ消えて行った。
『あっ………』
『……聞くつもりぢゃなかったんだ。
店に入ろうとしたら声が聞こえて。』
『いや、むしろすいません。
店の近くでこんなやり取り…
…宮原さんで、良かったっすよ…。』
『モテる男も辛いもんだな。』
『ソレ宮原さんが言いますか。
負けますよ。』
俺たちの間を冷たい風が吹いていた。
『…酒、おごりますよ。』
『いや…、今日は飲みに来たんぢゃないんだ。
久利生くんに話があって。』
『俺にっすか…?』
『単刀直入に聞きたい。
すみれのことどう思ってるのかを。』
『………ずいぶん急な質問ですね。』
『そうだ。
前からキミがすみれのことをどう思ってるの気にはなってた。』
『なんかあったんすか?…
その疑問を加速させた出来事か何かが。』
『………すみれの部屋に男物のワイシャツがあった。
それは俺のぢゃない。
だから俺はキミのなんぢゃないかと思っている。』
『…………。
それ、だいぶ前のですよ。……
宮原さんと付き合う前に俺が風邪引いて家まで看病しに来てくれて、その時……あいつのグロスがワイシャツについたんです。んであいつ持って帰ってそのまんまなんだと思います。
………間違いなく俺のだと思いますよ』
『そうか。…まぁキミのだろうとは確信していたから
もう驚きはしないよ。
それより、…何故グロスなんかがワイシャツにつくんだ…?』
『……そんなこと聞きますか…』
『あえて聞いている。』
『俺が抱き締めたんすよ。』
『だろうな。
………好きなのか?』
『…だとしたら?…』
『キミには身を引いてもらうしかないだろうな。
すみれに関わるな。』
『…そうきますか。』
『今さっき、キミはあの夏菜という子に諦めろと言っていたのと同じ事だ。』
『もちろん、可能性がないなら諦めるのは当然でしょうね。……そうぢゃないならその必要ありますかね…』
『人の幸せをソッとしておけないのかな、キミは。』
『幸せに出来てないのは
宮原さんの方なんぢゃないですか?』
『キミに言っておくけど、
キミに出来て俺に出来ない事はない。
その逆はあってもな。』
俺はそう言いその場を後にした。
あんな年下のガキに熱くなりすぎたな
それにしても
あいつ前と少し変わったな……
すみれへの気持ちをまるで隠す気がない
むしろそれを認めて
俺と敵対しようとしていた
なんなんだ…
あいつをそこまで変えたキッカケが何かあったのか
よく考えてみれば、なにも俺と付き合っている最中にあのワイシャツが関わってきた可能性があるわけでもない。
あいつの言うように、俺と付き合う前の出来事だったのだとすれば
別に仕方がないことなんだ
例え、キスがあったとしても
……それ以上のことがあったとしてもだ。
ただ、すみれの中であいつに対して
少し気にかかるものがあって紗江子ちゃんにも話せない、
その後ろめたさで嘘で隠した…
まぁ俺も気づいていなかったわけぢゃない
最終的には俺を選んでくれたとはいえ
決してそれがゴールではなく
スタート地点に立っただけなんだからな
そんなの分かってるよ……
俺は家へ着き、玄関を開けると
いつもの癖ですみれの靴がないかを見ていた
仕事で忙しいんだからいるわけないよな
ワイン…
久しぶりに飲むか
あのチーズと合うんだよな。
冷蔵庫を開けて探すがチーズが見当たらない…
あぁ…そうか…。
いつもすみれが気を利かせてストックしてくれたんだよな……
ということは氷も……
この前俺が使ったまんまゼロの状態だよな…
ワインを飲む気が無くなり
シャワーに入ろうとした時、ボディソープも残りあと少し
だという事に気付き棚を見たがストックは無い
はぁ…そうだよな…。
これもすみれがいつもやってくれてたよな
俺はいつからこんなにすみれに甘えるようになっていたんだ……
今まで1人で暮らして普通にやってきてたぢゃないか…
たった1週間、まともに2人で過ごせてないだけで
こんなにも心に空白ができるなんて
いや…、
こんな俺は俺ぢゃない。
その日の俺は
今後のことを考えながら深い眠りについた。
つづく。




