冬の訪れ
とある連休が続く前の日、わたしは久しぶりに椿のお店に行く事にした。
紗江子を誘ったら彼氏とプチ旅行とかで断られてしまったので他の友達に連絡するのも面倒くさいしで1人で行く事にした。
『おッ久しぶりぢゃん。』
お店に入ると珍しく椿の姿が受け付けにあった。
『久しぶりだねっ。
今日は受け付けなの?』
『いやっ今日の予約入り具合いチェックしてたとこ。
1人?
ならあそこのカウンターで座ってて。
あとで俺行くから。』
『うん。
わかった。』
椿……
この前キスしてきたのに意外と普通…だよね。
あいつにとったらキスなんて挨拶がわりみたいなものなのか…?
わたしは席に着き、メニュー表を見て
〝SUMIRE〝のカクテルを思い出した。
〔今思うと椿って行動派だよね。
わたしの名前をカクテル名にしちゃうんだもん( ´ ▽ ` )〕
『あの…。』
〔ん?!なに?!いきなり!〕
背後から突然声をかけられびっくりしながら振り向くと
そこにはこの前入ったばかりというスタッフの女の子がいた。
『は…い?…』
『菫さん…ですよね…?』
『はい……そうですけど…』
『そのメニュー表のカクテル名、菫さんの名前と同じですよね…。』
『えっ…あぁ…そうみたいですね。』
『実は菫さんのことを想って……とかかもしれませんよね。』
〔…この子、椿に気があるんだ……。〕
『そんなわけないと思いますけど…。』
『菫さん、この前男の人と今人気の観覧車に乗ってましたよね?
だいぶ男前な方と。』
〔なんなのこの子はΣ(・□・;)
偶然見られてたわけ!?〕
『えっ……あぁまぁ…。』
『あの日偶然見かけたんです。
私は普通に列に並んでたんですけど、優先シートから入っていくカップルが見えてそれが菫さんだったんですよ。』
『そう…。』
『あの人、彼氏さんですか?』
〔質問がガツガツくる……
しかもこれ…なんて言えばいいんだろ…(´-`).。oO
仮カップルしてます、なんて言うのもおかしいし
違うなんて言うのも変な気もするし……〕
『おい、夏菜。
キッチンで呼んでる。今日新メニュー覚える日だろ。』
『…はい。』
〔ふぅっ…(~_~;)椿ナイスタイミング。
助かった……( ´ ▽ ` )。〕
『あいつ悪い奴ぢゃないんだけどさ…』
『うぅん。大丈夫。』
『てか何にする?』
『今日は……
なんか強いお酒飲みたい。』
『また酔うぞ…』
『ちょっとくらい酔うためにココに来たの。
ウォッカベースで椿のオススメのが飲みたい。』
でも結局、私が強めのお酒って言ったけど椿はあんまり強くアルコール入れてくれなかった。
あの子があんな質問ばっかりしてきたせいか
わたしはモヤモヤしていた。
『ねえ、椿。
ちょっと変わった?』
『変わった?ってなにが?』
『うーん……なんかちょっと前よりダークになった感じ?かな。』
『なんだよダークって。』
『だからこう……なんてゆーか…。
なにかで悩んでるような…。』
『……俺そんな負のオーラみたいなの出ちゃってんのかー。客商売なのにまずよな。』
『えっ…ぢゃあやっぱり何かあったの??』
『ないない。
つーか、スミレこそどうなの。』
『わたしはね…実は先輩と進展があったんだよね〜。』
私はお酒がまわってきたのか話そうと思ってなかったことまで話してしまっていた。
『…へぇ……。どんな進展…?』
『付き合った!』
『は?!
付き合った?!』
『〔仮〕で!』
『〔仮〕?!
意味わかんねーよ。』
わたしは〔仮〕の事情を説明した。
『…そんな仮設定なんてしないで普通に付き合えば良かったんぢゃねーの。』
『……それが出来なかったからこうなったの…。』
『なるほどね〜』
『?なにがなるほどなの…?』
『俺の事が頭から離れなかった。
だろ?』
Σ(・□・;)
『はい?!』
『俺のキスが忘れられなかった。
だろ?』
(゜ω゜)o゜;;
『そっ…そんなわけないでしょ!!ばか!』
『なーんだ、つまんねーの。』
嘘をついた。
本当はその通り。
『…んで奴とヤッたの?』
『してないから!!
そうゆう約束だもん!!』
『紳士ぶっちゃってんのね。』
『ぢゃあ椿は即寝ちゃうわけ?!』
『かもな。』
『最低っ!!』
〔あーむかつく!!…
このチャラ男が!!(−_−#)〕
『……わたし帰る。
ご馳走様。…お釣りはいらないから。』
『おいッ…待てよ』
わたしはあんなクズ男のことが邪魔をして
先輩と向き合えなかったのかと思うと急にイライラしていた。
〔椿なんて…大嫌い!!〕
わたしは椿の声に耳を貸すことなく
お店を出て早足でその場を去った。
〔わたしの馬鹿…
最初から行くんぢゃなかった。〕
わたしは歩きながら先輩の電話番号を眺めていた。
〔電話……しちゃおっかな……〕
椿のことを忘れたいが為に先輩の声が聞きたくなった。
更に言うならば…
会いたくなった……。
【……もしもし…
拓人さん?…今何してますか?】
【今、友達と飲んでるけどどうしたの?】
【………………………。】
【菫……?】
【……会いたいんです……
拓人さんに………】
【…今どこ?】
【…落合橋の時計台にいます……】
【わかった。今から行く。
俺酒飲んぢゃったからタクシーでそっち行くから待ってて。多分15分くらいで着くと思う。】
わたしは電話を切り1人でいた。
待っている間、体の中に入っていたアルコールが少しずつ抜けていくのがわかった。
冷静になって考えてみればなんであんな態度を椿にしてしまったのかわけがわからなかった…
特別な関係なわけでもないのに……
それに拓人さんを利用しているような気がしてきて
電話してしまったことも後悔してきた。
『…おいっ…』
すると後ろから声がした。
拓人さんにしては来るのが早すぎるし
この声は……もしかして
『……椿……』
『…こんなとこで女が1人でいたらまずいだろーが』
『……いま仕事の途中ぢゃ……』
『今日は俺がいなくても問題ない日。』
『そっか……。』
『さっきは悪かった…。』
『……いーよ。
わたしも態度悪くなっちゃってごめん……』
『…………さみーし送ってくよ。』
椿がそう言った時だった。
『それは大丈夫だよ。
俺が送ってくから。』
『拓人さん…。』
それは久々に3人が揃ってしまった時であった。
『あっ…そうスか。』
『寒い中ありがとう。
…ぢゃあ。』
先輩はそういうと私の冷たくなった手を握り少し微笑み
歩きだした。
私はソッと椿の方へ振り返ってみると
ポケットに手を入れながらわたしの方を見ていた。
『椿っ…!
ありがとう…!』
本当は私の方なんて見てなければ声かけるつもりぢゃなかった。
とっさに声が出てしまっていたのた。
わたしは先輩が乗ってきたタクシーへと入り
家へと向かった。
『今日はなにかあったの?…
電話でいつもの菫ぢゃない感じがしたからさ。』
『……椿のお店でお酒飲んでて……
ちょっと酔っちゃったみたいで…』
『……そっか。』
『すいませんっ……。
拓人さんの友達にも悪いことをしてしまって……』
『俺の方は全然大丈夫だよ。
それに、菫になにもなくて良かった。』
そのあと先輩はわたしに深く追求することもなく
ただ手を繋いでいてくれた。
家に着くとわたしはベットに勢いよく倒れ込んだ。
〔はぁ……。
わたしなにやってんだか……
椿にも先輩にも悪いことしてるぢゃん………
あ〜……( ; ; )〕
つづく。




