予感
『おはようございます。
私は全然大丈夫なんですけど…。なにかミスとかありましたか…?』
『いやっ実は再来月号のNoaの雑誌掲載についての意見を聞きたいと思って。』
『えっ!!私にですか!?…』
『うん。
咲坂さんて色んな場面でセンスあると思うし、是非意見を聞けたら参考にしたくて。』
〔ちょっと待ってください…!
嬉しいけど私なんかの意見でいいのかな…( ;´Д`)!聞くならもっと良い人がいるはずぢゃあ…〕
『私なんかで本当に参考になるかはわかりませんが…、どのような案件なのでしょうか??…』
どうやら雑誌の企画案を2パターン用意して会議の時に発表しろと言われていたが部長からどっちか1つを選んでこいと言われて悩んでいるみたい。
それも一昨日言われて締め切りが今日の会議までってなって、最終的に女性目線でみたらどちらがいいか意見を欲しいと。
『俺的にはNoaって20代〜30代の読者に向けて発信してるけど、20代前半と後半とぢゃ気にする部分が違ってくるかなと思うからどちらかといえば今回はこっちのA案の方が良いかなと思ってるんだよね。
…どうかな?』
〔確かに先輩の言うことで合ってるかな。〕
『そうですねっ。私も先輩の意見に賛成です。
私の周りで例えるなら20代前半だとまだ未婚の子が多くて後半になるとやっぱり既婚者が多くなってきて読む雑誌も変わってくるって言ってました。
なのでこの冊子をいれるのは良いと思いますっ!』
『よかった!ぢゃあA案で通してみるよ!
朝の忙しいとこごめんね!ありがとう!』
〔せんぱーい( ´ ▽ ` )ノ朝から最高の笑顔ありがとうございます!!〕
『いえ!少しでもお力になれてよかったです。』
『本当助かった!
ってか時間ヤバイね!朝礼いこっか!』
『あ!そうですね!』
私は先輩とのたった10分くらいのこの時間だけで
今日1日分の幸せをあじわった気分。
ジャケットのポケットの中に先輩のメッセージが書かれたポストイットが入ってるか確認した。
〔こうゆうの残しておくってけっこー私気持ち悪いかも!?(/ _ ; )…けど捨てられないよっ(/ _ ; )〕
基本的に今のわたしの仕事内容は先輩と一緒に雑誌の取材に行ったり、それは勉強の一環で。
あとは社内での雑務。
先輩からの雑務をこなすのは大好きだけど課長や部長からの雑務は本当に気分が下がる…。
対応がいちいち面倒だからだ。
無事朝礼にも間に合い、こうして今日の1日が始まった。
『ねぇっスミレっ!
宮原先輩と2人で朝礼に入ってきたけどどうしたの!?』
ニヤニヤしながら紗江子が聞いてきた。
『ちょっと仕事の話をして戻ってきただけだよ!
紗江子が考えてるようなウキドキ話はありませ〜ん!』
『なーんだーつまんないなぁ。
隠し事は絶対ダメだからね!!
てかわたし今から書店周りだからまたあとでね!』
〔隠し事かぁ…。あったらいいなぁ。
先輩との秘密作りたいくらいだし…( ´ ▽ ` )
とりあえず今日の私は午前中に書類整理と先輩から指示のあった取り引き先にファックスとメールに…
雑誌インタビューの内容を考えて…と。
よしっ頑張ろうっ。〕
それから私は午前午後と1日を通していつも以上に仕事に取り組めた気がする。
先輩の事で良い事があったからって仕事に差が出るのは良くないことだけど、それでも何か1つ良いことがあったら頑張れる自分がいてもいいよね。
『あっ咲坂くん!ちょっと来てくれるかな。』
〔えー。なによ…もう帰れるって時に(´Д` )〕
しかも部長の指の差す方をみると、休憩室に来いとのこと…。
『…失礼します。お疲れ様です…。』
『あぁ。お疲れ様。
キミに聞きたいことがあって呼んだんだか、これから話す事はちょっと内密にしてほしいんだが…』
〔げ!……先輩との秘密ぢゃなくて部長との秘密ができちゃうのー。( ̄◇ ̄;)〕
『あっ…はい。
…わかりました。
その…どのようなお話でしょうか?…』
『キミは今付き合ってる相手はいるかね?
今の時代こんな事聞いたらセクハラだのなんだの言われ兼ねないが、私も好きで聞いてるんぢゃない事は理解してくれたまえ。』
『…いえ。今はいませんが…。』
『だったら話は早いな。取り引き先の会社の専務の息子さんの縁談相手に咲坂くんをと思っている。
縁談と言ってもかしこまった感じぢゃなく、東都プリンスホテルの会場でパーティ形式でやるらしいんだ。
』
『えっ…縁談?!…ですか!?』
『だから縁談と言ってもご両親連れてきてとかそうゆうんぢゃなくてだな、専務が言うには息子さんが連れてくる交際相手が毎回あんまり良くないみたいなんだよ…』
〔いやいや…_| ̄|○そんなの知りませんがな…〕
『ですが私は…。
もっと対象になる方がいるのでは…』
『咲坂くんの履歴書を見たら年齢が23歳で息子さんと同い年で、大学も良いとこ出てるし特技ピアノ、バレエ…
まっなによりキミは見た目が良いぢゃないか。
どうやらご子息は綺麗な人が好みみたいだから、良かったぢゃないか。』
『私と同い年なんですかっ…!?』
〔そんな23くらいで交際相手決められちゃうってどうなの今の時代に…(´Д` )
まぁ最終的に決めるのは本人だろうけど…〕
『私たちと同じくらいか上の世代ってゆうのは
結婚して家族を持って一人前という考えだからおそらく専務もそうなんだろうな。』
『っ…結婚て…』
『とりあえず、コレ。
預かってきた招待状だから。中身は開けてないからわからないが相手先は有名企業だし悪い事はないから安心しなさい。』
そう言って部長は休憩室を出て行った。
〔………〕
〔………( ̄_ ̄;)〕
〔………一方的な申し出…(ーー;)〕
私は休憩室を出て招待状をバックの中にしまった。
読むなら帰ってからで十分だと思い簡単にデスクの整理だけして帰る事にした。
『咲坂さん、お疲れ様。
今日も特に問題なかった?』
『先輩…お疲れ様です。』
〔…癒しの存在登場。
見てるだけで癒される〜。〕
『特に問題ありませんでした。
全部処理して相手先からも返信済みです。』
『そっか。なら良かった、ありがとうっ。』
先輩は朝と同じ笑顔で微笑んだ。
〔…こんな素敵な人と付き合ってる彼女ってどんな感じなんだろう。きっと毎日ハッピーなんだろうなぁ…。羨ましいと思いたくないけど羨ましい…。〕
『…はい。ありがとうございますっ。
ぢゃあ先輩…。お疲れ様でした…!』
今日は部長との出来事のせいで早く帰りたかった。
一気に疲れたしなんか…先輩の目に映りたくなかった。
〔今日は1人で一杯飲みたい気分!!…
確か冷蔵庫に梅酒があったような…いやっチューハイか?
まっどっちでもいいや!早くかえろーっと!〕
私の後ろ姿を先輩が見ていたというのに振り返りもせず帰ってしまったことをちょっと後悔した。
つづく。