試し
1人と二匹で、
林の中をしばらく歩いてきたものの
人っ子一人、小動物一匹すら見当たらない。
代わり映えのしない景色の中、
目につくのは、不思議な形をした
雑多なキノコぐらいで、
みんなに避けられているのでは?と
錯覚してしまうぐらいだ。
まあ、狼達が、闊歩していれば、
近づいてくるものは滅多にいないだろうが。
来るとするならば、狩人とか、熊とかだろうか。
もし熊に襲われるくらいなら、
このまま誰とも出くわさない方を迷わず僕は選ぶけど。
でも、できることなら町や都市で
人と関わって暮らしていく生活を
おくりたい。
そのために人を探しているわけだが、
このまま闇雲に歩き続けて、人と遭遇する
ことはあきらめた方がいいだろう。
そうなると、自力で町か民家に
辿り着かないといけない。
まずはこの林を抜けることを考えよう。
いや、それよりも先に自分の現在位置を
確認すべきだ。
日本だと、スマホさえ持っていれば、
現在位置も目的までの道筋も、
手軽にわかるのだが、
ここではどうなのだろう?
ここが地球なら使えるだろうけど、
多分、違う気がする。
さっきから気になっているのだが、
空で輝いている太陽らしきものは、
歩き始めた時から明るさこそは
変化しているものの
常に同じ高度、同じ位置にあるのだ。
おそらくここは、惑星とか
そういう処じゃないのだろう。
スマホは有っても役に立ちそうもないので、出すのをやめ、
代わりにこの周辺を上空から見渡すために
ドローンとモニター付きの操作端末を頭の中で念じる。
食べ物や飲み物は何度か試して、
ある程度、なんでも出ることは分かったが、
機械はどうか?
期待に違わず、イメージ通りのものが目の前に現れる。
出てきたドローンを早速、上空へと飛ばす。
100mぐらいかそこらで、高度を維持。
ドローン付属のカメラを端末で操作し、
この周辺の俯瞰図をモニターで確認する。
僕がいるのは、山の麓のようで、
このまま進めば草原へと抜け、
その先に外壁に囲まれた街がある。
彼処に入る際には、身元証明がないと
難しそうだ。
偽造するか、抜け道を探すか、
それは、街の近くまで着いてから考えるとしよう。
今はとにかく前へと進む。
街が近くと分かってか、気持ちも弾み
足取りは軽かった
脇目も振らず、木々の間を駆け抜ける。
そうして、草原が目前に迫った処で、