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夢喰いバクラ  作者: 勝田瑠衣
14/15

始 結ー②

 翌日。

 彼は珍しく有給休暇を使い、会社を休んだ。そして芭玖螺からの指示通りに、使わないものを中古屋に持っていった。車の後部座席にまで乗せないと入りきらないくらい多い荷物で、見せた店員は驚きと迷惑そうな表情を見せた。

 量が量なだけに査定には時間がかなりかかったし、そうはいっても他の中古屋にまで行くのは面倒だったので、彼は近所の中古屋1店舗に全てを売り渡してきた。

 アイドルのライブで買った限定T-シャツ、CD、初回限定のライブDVD、プロ野球の試合で手に入れたホームランボール、読みもしないのに買った小説たちなど、いったいどれだけの不要品を買い集めたんだろうと、査定中の店員を見ながら過去の自分に唖然とした。

 山のように積み上げた限定グッズの数々であったが、売値は総額3万という結果に唖然とした。実際に使ったお金はこんなもんじゃなかったはずだったのは言うまでもない。

 しかし今回は、お金稼ぎが目的ではなく、売ること自体が目的であったため、気にしないようにした。

 お金を受け取り、さあ帰ろうとして店から出た。店員たちが売られてきた品物をせわしなく片付けている様子を気の毒に思いながら車に向かう途中で、電話が鳴った。

 画面を見ると、病院からだった。

 もしかしたら、と彼は希望を持った。心臓の鼓動が早くなる。

「あ、智樹さんですね?」

 看護婦の声が興奮気味だった。

「はい」

 

「起きましたよ!彼女さん!」

 一瞬、思考が止まり、そして一気に嬉しさの波がうち寄せてきた。

「ほ、本当ですか!すぐ向かいます!」 

 電話を切ると、彼は車へ走っていった。

 はやる気持ちを抑えて安全運転を心がけようとするが、心臓が嬉しさで興奮してなかなか落ち着けない。

 そんな時、起きたときに自分が字義っていた紙切れが頭に浮かんだ。


   多趣味時代に買ったもので不要なものは、中古屋さんにでも売ってくださいね。どんな安い値段で   買い取られても、必ず売却してください。それがあなたの不幸を断ち切る方法です。

                                     夜行芭玖螺


 芭玖螺の言った通りであった。不幸の連鎖は、今日ここでこの瞬間に断ち切られたのだ。

 「本当だったんだな、あの占い師は……」

 寝かされた後に自分が何をされたのかは全く分からない。しかし、彼女のメッセージ通りに動いたら事態が好転したのは事実である。これまで続いた大きな不幸も、きっともう頻繁には起きないだろう。

 芭玖騾の占いのおかげでこれから自分たちは幸せな日々に戻れる。そう思うと。頭が冷静さを取り戻し、心臓が穏やかになり始めた。こんな時に自分が交通事故を起こしたら彼女を悲しませてしまう。それはなんとしても避けなければならない。

 「よし、行くか」

 安全運転を心がけ、彼は車を発車させた。

 彼女は病み上がりだというのに、彼の頭の中はさっそく復帰祝いを兼ねたデートの計画を練り始めていた。


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