始 転ー④
「はあ‥‥‥それで、どうすればいいんだ?」
彼女の考えていることは知りたくない。なぜかそんな気持ちになる。知ると、先ほどの恐怖なんてゴミクズのように思えるような恐怖が待っているような気がした。
そんなことより、今後を考えたほうが賢いだろう。
「売ればいいです」
「売る?」
「はい。買い込んだグッズの、今持っているもの全て。他にも、持ってたってしょうがないものは全部。それが今回の事件の原因だったのですから」
彼女は真顔でそう答えた。
「そうか……」
それですべて終わるのなら。
それで彼女の意識が戻るのなら。
彼はうなずいた。
もともと、買ったはいいが使わずじまいの代物たちだ。売ったところで後悔はないし、物にとっても、使ってくれる人が持っていた方がいいはずだ。
「そろそろお目覚めですね」
「え?」
聞き返したのと彼の目が眩しさで細くなったのはほぼ同時だった。周りを見ると、夜が明ける時のように、白んできた。
彼女は改めて彼を見た。
「ではまた。機会がありましたら、お会いしましょう」
そう言い残し、彼女は消えた。
返事をする間もなく、彼もまた現実に戻されていくのだった。